尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「派閥解消」より、政治資金規正法の改正を!

2024年01月22日 22時07分35秒 | 政治
 岸田首相が突然「岸田派(宏池会)解散」を宣言して、自民党内は派閥解消論議で騒然としている。「派閥解消」は今までにも何回か機運が盛り上がったことがあるが、いつの間にかウヤムヤになった過去がある。僕は全く信用してなくて、今回どう決着しても20年後には似たものが復活しているに違いないと思っている。こういうのを見ると、僕はいつも『仁義なき戦い』シリーズを思い出してしまう。「頂上作戦」で追いつめられた広島の暴力団は「解散」して、代わりに「政治結社」に衣替えした。実質は変わらないまま、表面だけ付け替えるのが保守政治の知恵(または悪巧み)である。
(岸田派が解散)
 それにしても、岸田首相の派閥解散宣言ほどおかしなことはない。何故って、岸田氏は宏池会の会員じゃないからである。岸田派を率いる岸田氏は、総理就任後も岸田派を離脱しなかった。安倍氏は首相在任中は派閥を離脱し、だからこそ清和会(清和政策研究会)は「細田派」と称していた。(細田氏が衆院議長に就任し党籍を離脱したので、首相を辞任した安倍氏が派閥に復帰して会長に就任した。だから「安倍派」と呼ばれた。)岸田氏が総理就任後も派閥を辞めないことはずっと批判されてきたが、頑なに派閥会長を続けていた。ところが、今回の未記載問題が大きくなった後で、2023年12月8日に宏池会から離脱することを表明したのである。会員じゃない人がその組織の解散を決められるのか。要するに「偽装離脱」だったのである。

 「安倍派」の解散というのも、政治の流れ的には当然なんだろうけど、全く意味不明である。そもそも会長がいない組織というのがおかしい。今も故人の名を冠していたこと自体がおかしい。そのためか、安倍派の面々も国民に謝罪する前に、「安倍氏の名前に泥を塗って申し訳ない」とか言っている。もともと国民のための組織という意識じゃないのである。かつて「竹下派」の金丸信会長が議員辞職した後、後任の会長選びが紛糾し、「羽田派」(小沢一郎系)と「小渕派」(橋本龍太郎系)に分裂したことがある。安倍派も「いずれ自分が総理」と思う人が複数いて、後継会長を無理に選ぶと分裂するんだろう。
(安倍派も解散)
 今の自民党で「派閥」と称していたものは、歴史的にはもう役割を終えていたと考えられる。そもそも派閥は「この人を次の総理に」と推す子分が集まるものだ。ボスの方は総裁選で自分に入れてくれる部下が必要だから、折に触れて政治資金を配ってつなぎ止めることになる。その「御恩」(餅代、氷代)と「奉公」(総裁選での票固め)の関係が保守政治のダイナミックスになってきた。その意味では、首相を辞任した安倍氏が会長になること自体がおかしい。それは「麻生派」「二階派」にも言えることで、総裁候補じゃない人が会長をしている派閥というものがおかしいのである。

 一方、菅義偉前首相が盛んに派閥解消を声高に主張しているのも変である。自民党の政治刷新本部で派閥解消を主張している人は、菅氏に近い議員が多い。以前から菅氏を中心にした「勉強会」が企画されていて、そこで声を挙げている人は「事実上の菅派」みたいな人が多い。菅氏もずっと無派閥を通してきたわけではなく、当初は小渕派、その後は宏池会に所属していた。2009年の民主党政権成立後の自民党総裁選で、河野太郎を支持して派閥を脱退したという。2009年衆院選は民主党が大躍進したが、菅義偉は辛くも(548票差)5回目の当選を果たした。そのように自分の政治基盤が確立されたから、「無派閥」を通せたのである。
(政治資金規正法改正の論点)
 そんな自民党内の事情にしか関わらない派閥問題ばかり論じていてはならない。この絶好機に何としても「政治資金規正法改正」を成し遂げなくてはならない。「派閥解消」は単なる党内ルールだから、後でどんどんウヤムヤに出来る。しかし、法律は一度変えたら、また国会で議決しない限り変えられない。そういう「歯止め」がある変更を行わないといけない。では、どう変えるべきか。僕にもすぐ全部は言えないけれど、今の「パーティー券」は買っても行かない人がいて成り立っている。つまり、「事実上の寄付」である。それが20万円まで記載しなくてよいとは全く理解不能。「記載限度額の引き下げ」は必須だ。

 また「秘書」は立件されるのに、政治家が無傷なのは納得出来ない人が多いだろう。これが選挙だったら、選挙運動に関わった有力運動員の有罪が確定したら議員も失職する規定がある。いわゆる「連座制」である。別に議員本人が法的に有罪となるわけじゃない。だけど「失職」して「公民権停止」となる。そういう決まりがあれば、こんなふざけた裏金問題は無かったに違いない。また報告方法を「デジタル化」することも必須。そうすれば当然デジタル情報で公開されるから、マスコミ等の追跡が容易になる。会計ソフトを作っている会社が幾つもあるから、「政治資金報告用ソフト」もすぐに出来るだろう。

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