尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

原発はプルトニウムの工場

2011年07月12日 21時29分49秒 |  〃 (原発)
 原子力発電所とは何か? 
 ウラン238を核分裂反応を起こせるようにウラン235に濃縮し、そこに連続反応がおきるように中性子をぶつけ、巨大な核分裂エネルギーを発生させる。2800度にも達する熱エネルギーの3分の2は海に温排水として捨て、残りの3分の1で水を温め蒸気を発生させタービンを回して発電を行う。一方、核分裂が起きると、ウランは放射能を持つ様々な物質に変化して、プルトニウムなどの放射性廃棄物ができる。

 というような判ったような判らないような解説がいろんな本に出てる。電気を生み出す仕組み自体は火力発電と同じだが、そのことを今まで知らなかったという人がいたのには驚いた。原子力で得る熱は大きすぎて調整が難しく、せっかく得たエネルギーの大部分は海に捨てるので、原発を「海あたため装置」と呼んだのは水戸巌さんである。
 原発は放射性廃棄物の処理費用まで考えれば、事故が起きないとしてもコスト的に民間企業が行うにはリスクが大きすぎる。そこで、国は廃棄物処理の方を引き受けるとともに、事故がおきた時のための「原賠法」を作った。そして、最終処分場の建設は国が責任を持つと言ってきたが、まだどこも引き受けていないし、今後も引き受けるところが出るとは思えない。そのまま危険な廃棄物が各原発にたまっている状態である。

 では、国はそこまでしてなぜ原発を推進したいのだろうという疑問になる。
 一つは、アメリカから買う超巨大技術だということだろう。戦後日本では自衛隊や民間航空会社がアメリカの会社から買う飛行機をめぐって、何度も疑獄事件が起こっている。原発はさらに土地買収、漁業権の放棄などが必要で、そこは怪しい人々が暗躍する利権の巣になったはずで、地域の保守勢力の力の見せ所だろう。そういう「利権としての原発」が大きいのは間違いない。しかし、それだけでは原発はとらえられない。なぜなら核兵器の原料となるプルトニウムができるから、アメリカの世界戦略に関わる問題で、アメリカにとっても儲けになるからどこにも売りまくるという問題ではない。

 そこで原発の意義をこう逆転して考えてみる原発はプルトニウム製造工場で、その過程で熱エネルギーが発生しその3分の1を生かして発電するが、どうしても使い切れないので残りの熱は海に捨てる装置である、と。

 日本はむろん非核3原則で核兵器を持たないと表明している。だから原発でプルトニウムが大量にできると問題で、できるわけない「核燃料サイクル」とか無理やりウランと混ぜて燃やしてしまう「プルサーマル」などを無理やり推進してきた。しかし、日本以外の原発大国は核兵器保有国だから、プルトニウムができても問題にならない。
 日本には自国ではいらないことになってるプルトニウムが大量にある。だからそんな危険な原発を何故いつまで持ってるのかというのが反対派の言い分だった。もう全く正当なその疑問に答えるには、実はプルトニウムはゴミ(核廃棄物)ではないという見方をするしかないのではないか。つまり、核兵器原料を大量に保管すること、それが原発を維持し続けてきた真の目的なのではないか

 考えてみれば、大量の核廃棄物(特にプルトニウム)をどうするんだという問いへの一番簡単な答えは、「日本も核兵器を開発すればいい」というものではないか。となれば、核開発を(心の奥底で)めざす超国家主義者にとって原発は経済コストの問題などではないのだ。日本は、憲法上の解釈の問題はあるが、いざという気になれば核兵器を開発する経済力と技術力がある「潜在的核保有国」であることは国際的に認められている。従って、その気になれば数年で開発できるプルトニウム型原爆の原料が大量にあるということは、それ自体が「一定の抑止力」であるという考え方ができなくもない。中国や北朝鮮の動向を見ていれば、この「一定の抑止力」を放棄するなどという政策は考えられない、そう考える政治家がいた、ということが原発を保持してきた最大の理由なのではないだろうか。(なお、日本はIAEAの査察はちゃんと受けて管理されていることが確認されているので、実は秘密裏に核兵器を開発してたとか、裏でテロ支援国家に流れてたりすることはない。)

 もちろん、日本が核兵器開発をするということは現実的には考えられない。国民感情とアメリカの反発で、その政権は崩壊することだろう。だが、選択肢として核開発を残しておくというのが、日本が原発大国である選択をした意味なのではないか。今そう思い始めているところである。

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