葉室 麟 著 「銀漢の賦」を読みました。
少年の日を共に同じ道場ですごした家老と郡方役。
地方の小藩の政争を背景に、老境をむかえた二人の武士の運命がふたたび絡みはじめた―。
昨年よんだ直木賞受賞作『蜩ノ記』ですっかり著者のファンになりました。
本作は江戸時代の老中が松平定信であった頃の架空の月ヶ瀬藩が舞台です。
主人公の一人は文武両道で両親の仇をとるために家老まで登り詰めた松浦将監
もう一人は武術に優れているが郷回りのままであまり評判のよくない平侍の日下部源五。
今はほとんど付き合いもなく身分も違ってしまったこの二人だが実はかつては親友同士であった。
老境に差し掛かった二人ではあったが、将監の命を懸けた思いを知った源五が再び手助けをする・・・。
何十年をへても変らぬ男の友情が骨太に描かれています。
友情を示す「天の川」=「銀漢」
二人の友情に胸が熱くなる読み応えのある一冊でした。
第14回松本清張賞受賞作。
この小説の満足度:☆☆☆☆
SRO―警視庁広域捜査専任特別調査室〈1〉」
警視庁に新設された広域捜査専任特別調査室、通称「SRO」。
総勢7名の小所帯にもかかわらず5人がキャリアという、管轄の枠を越えた花形部署のはずが、その内実は訳ありだった。
山梨で発見された白骨死体をきっかけに、史上最凶の連続殺人犯「ドクター」を追う調査員たち・・・。
キャリアエリート5人+事務官2人だけで構成される新設部署。
「ドクター」と呼ばれる、シリアル・キラーを追い詰めます。
それぞれに訳有りで最初はばらばらに思えたメンバーが徐々に一致団結してゆく過程もなかなか面白い。
さらに「ドクター」が予想外の人物でびっくり!
非常にスピーディーに読み進めることが出来ました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
香納諒一 著 「孤独なき地―K・S・P」 を読みました。
新署長赴任の朝。
署の正面玄関前で、容疑者を連行中の刑事が雑居ビルから狙撃された。
目の前で事件に遭遇した歌舞伎町特別分署の沖幹次郎刑事は射殺犯を追う。
銃撃戦の末、犯人のひとりを仕留めるが、残るひとりは逃亡した。
金を生む街、新宿歌舞伎町で暴力組織が抗争を開始したのだ・・・。
新宿歌舞伎町を舞台に、警察・暴力団・中国マフィア・汚職企業が絡む連続殺人事件を描く。
この作家の作品を読むのは今回が初めてです。
ストーリがかなり入り組んでいましたが、疾走感がありなかなか面白く読めました。
事件自体は複雑で、状況が2転3転!
最後の最後まで真相が見えてこない・・・。
さらに、ラストのオチは切ないです。
納得のハードボイルド作品でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
64(ロクヨン) 」を読みました。
昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、刑事部と警務部が全面戦争に突入。
広報・三上は己の真を問われる・・・。
主人公はD県県警本部の刑事出身の広報官。
時効間近に迫った未解決の女児誘拐殺人事件をめぐって、警察庁長官がD県の訪問を予定するところからストーリーが動き出す。
長官訪問のタイミングに合わせたように誘拐事件が発生し、その事件が未解決となっていた誘拐殺害事件”ロクヨン”と微妙にからみあいながら怒涛のストーリーが展開される。
キャリアとノンキャリア、中央(東京)と地方(D県)、警務部と刑事部、記者と広報、家出により娘を失った夫と妻のぎこちない夫婦関係、誘拐殺人の被害者家族と警察の関係など、これでもかというくらいに描きこまれてゆく。
警察小説であり、ミステリーでもありますが、なにより”人間ドラマ”としてハラハラしながら読んでしまいました。
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
Hさん、今年一年間で読んだ本(小説)を振り返ってみました。
高野 和明 /ジェノサイド
熊谷 達也 /いつかX橋で
貫井 徳郎/乱反射
船戸与一/龍神町龍神十三番地
宮部 みゆき /名もなき毒
佐々木 譲 /暴雪圏
今野敏/特殊防諜班 標的反撃
真保 裕一/覇王の番人
薬丸 岳/虚夢
池井戸 潤/果つる底なき
田中慎也/共喰い
白石一文/この胸に深々と突き刺さる矢を抜け
佐々木 譲 /廃墟に乞う
葉室 麟/蜩ノ記
重松 清 /その日のまえに
万城目学/偉大なる、しゅららぼん
湊 かなえ /少女
沢木 冬吾 /愛こそすべて、と愚か者は言った
荻原浩/愛しの座敷わらじ
西澤 保彦 /スナッチ
熊谷 達也 /氷結の森
佐々木譲/警官の血
長岡弘樹/傍聞き
曽根 圭介/沈底魚
百田 尚樹 /モンスター
乾緑郎/完全なる首長竜の日
笹本稜平/還るべき場所
三浦しをん/舟を編む
有川 浩 /三匹のおっさん
秋月 達郎/海の翼ートルコ軍艦エルトゥールル号救難秘録
北沢 秋 /奔る合戦屋
誉田 哲也/ヒトリシズカ
伊園 旬/ブレイクスルー・トライアル
大沢在昌/パンドラ・アイランド
夏樹静子/Wの悲劇
戸梶 圭太 /誘拐の誤差
スティーグ・ラーソン/ミレニアム2 火と戯れる女
スティーグ・ラーソン /ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
伊野上 裕伸/火の壁
道尾 秀介/光
今野敏/武士猿(ブサーザールー)
有川 浩/三匹のおっさん ふたたび
道尾秀介/ラットマン
今野 敏/義珍の拳
佐々木譲/ネプチューンの迷宮
重松清/カシオペアの丘で
道尾秀介/カラスの親指
辻村 深月/ツナグ
貴志 祐介/悪の教典
百田 尚樹/影法師
矢月 秀作/もぐら
大沢 在昌/涙はふくな、凍るまで
横山 秀夫/影踏み
道尾 秀介 /水の柩
矢月 秀作/もぐら 乱
加藤 廣/信長の棺
大沢 在昌/罪深き海辺
東野 圭吾 /ナミヤ雑貨店の奇蹟
岡嶋 二人/チョコレートゲーム
窪 美澄 /晴天の迷いクジラ
誉田 哲也/ハング
矢月秀作/もぐら 醒
全部で62作品ありました。
1か月平均で5作品を読んだ事になります。
大体1週間で1作品ですが、作品の中には上下巻で1作品のものもありますので、冊数にするともっと多くなります。
Hさんが本を読むのは通勤電車の中か就寝前の時間です。
しかし、最近は就寝前に本を読んでいるとすぐに睡魔に襲われて断念するパターンが多くなりました。
また、会社へ向かう朝の通勤時間は一般に電車が混み始める通勤時間帯の前なので座れる事が多いのですが、朝刊をざっと読んでその後はこれまた、すぐに寝てしまうパターンが殆どです。
勢い、小説を読むのは帰りの通勤時間の約45分のみ。
そう考えると、たった45分でも「塵も積もれば山となる」で一年間の積み重ねは結構大きな~と改めて思います。
家人からは、”通勤時間に小説なんか読んでいないで、毎年受けては落ちている資格試験の勉強をしなさい!”と言われていますが・・・
資格試験の勉強を始めた途端に何故か眠くなってしまうから不思議です!!
さて、余談が長くなりましたが、今年印象に残っている小説は・・・
なんと言っても、面白さでは、スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」シリーズです。
映画「ドラゴン・タトゥーの女」を観てから、そのシリーズの続きを小説で読んでみましたが、これは面白かった!
Hさん、海外の小説は登場人物の名前を覚えるのが面倒くさいので余り読まないのですが、この作品にはハマリました。
日本の小説では矢月秀作の「もぐら」シリーズも好きです。
ハードボイルト小説で、まさに今年の流行語大賞の”ワイルドだろ~”を地で行く小説でした。
ジャンルは違いますが、万城目学の「偉大なる、しゅららぼん」、有川浩の「三匹のおっさん」シリーズには 心が和みました。
一方、感動した作品を上げると、葉室麟の「蜩ノ記」です。
時代小説ですが心に沁みる一冊でした。
北沢秋の「奔る合戦屋」、百田 尚樹の「影法師」、東野圭吾 の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」も良かったです。
三浦しをんの「舟を編む」は辞書作りと云うHさんにはまったく知らない業界の話で勉強になりました。
さて、来年はどんな作品に巡り合えるのか、また楽しみです!
と云うか・・・
来年こそ通勤時間に資格試験の勉強をやらなくちゃ~!?(と、毎年思ってはいますが・・・)
矢月秀作 著 「もぐら 醒 」を読みました。
強姦や殺人を繰り返し、その動画を公開して狂喜する者が集うネットゲーム“フレンジーフェロウズ”。
影野竜司はゲーム主宰者を突き止めるべく動き出すが、高度な戦闘技術を持った元自衛官らが襲いかかる。
ゲーム内で竜司に賞金が懸けられたのだ。
姿なき主宰者の目的は、復讐か、快楽か、それとも…。
常軌を逸した凶人の群れに竜司が挑む。
もぐらシリーズの4作目。
今回はネット犯罪に挑む!
ネットの情報に苦戦しながら、犯人を追う影野に思わぬ協力者が現われて・・・。
しかし、影野が真相に近づくにつれて、又してもたくさんの犠牲者が出てしまう・・・。
ラストではヒロインの沙由美までもが・・・。
和製「24」的展開で今回も一気読みでした。
まだまだ続きそうなシリーズなので、今後の展開が楽しみです。
誉田 哲也 著 「ハング」を読みました。
かつて赤坂で宝石店経営者が殺された事件は一度は迷宮入りしたものの、その後警視庁に新チームが再捜査に投入され、彼らは犯人を割り出した。
が、直後に新チームのメンバー全員が異動命令。
公判で犯人は、新チームの一人に自供を強要されたと全面否認をする・・・。
誉田作品には珍しく序章がいかにも青春物といった感じで始まりました。
なんだ普通の刑事物かと思いきや…
次から次に人が殺されて、えっ!この人まで?とまったく先の読めない展開に・・・
緊張感のあるテンポとグロテスクさを感じられる事件はやっぱり誉田作品です!
事件の謎にぐいぐい引き込まれて、最後は予想だにしない結末に!
ダークだけど面白い作品でした。
窪 美澄 著 「晴天の迷いクジラ 」を読みました。
仕事の忙しさから、彼女に振られ、勤めているデザイン会社も潰れそうで、鬱になってしまった青年。
つらい過去を持ちながらも、懸命にデザイン会社の社長を務める中年女性。
母親の過度な愛情に振り回され、普通の女の子として生活ができず、唯一の友達も失い、引きこもりになってしまったリスカ少女。
壊れかけた三人が転がるように行きついた、その果てとは?
死んでしまいたいと思っているの3人が、最後に湾に迷い込んだクジラを見に行くと云うストーリー。
それぞれの世代(10代、20代、40代)で、それぞれに問題を抱えています。
いろんな事がある人生ですが・・・
それでも、やっぱり頑張って生き抜く事が人生だ!
岡嶋 二人 著 「チョコレートゲーム」を読みました。
学校という名の荒野をゆく、怖るべき中学生群像。
名門秋川学園大付属中学3年A組の生徒が次々に惨殺された。
連続殺人の原因として、百万単位の金がからんだチョコレートゲームが浮かび上がる。
息子を失った一人の父親の孤独な闘いをたどる、愛と死のショッキング・サスペンス。
買ってから何故か手を付けずにずっと本棚においてあった本をようやく読みました。
中学校が舞台の殺人事件を描いた小説です。
最近映画化され話題になっているサイコ教師が生徒たちを無差別に殺してゆく胸糞悪い某小説とは全然中身が違います。
父親が自殺した息子の無罪を信じて孤立無援で真相を辿っていく・・・。
心の底から息子のことを愛しく思っている主人公の想いは読んでいて心を震わせます。
1985年の作品ですが、今読んでもまったく古さが感じられません。
テンポがよく、ストーリー展開もよくて、サクサク読めます。
日本推理作家協会賞受賞作。