誉田 哲也 著 「主よ、永遠の休息を」を読みました。
通信社の東京支社社会部に勤務、池袋警察署の記者クラブに詰める鶴田吉郎。
コンビニ強盗現場に居合わせて犯人逮捕をスクープし、店員の芳賀桐江と知り合う。
逮捕に協力して立ち去った現場で遭遇した男から、暴力団事務所の襲撃事件について訊ねられた吉郎は、
調査の過程で、14年前に起きた女児誘拐殺人事件の“実録映像"がネット配信されていたことを知る。
犯人は精神鑑定で無罪とされていた……。
代表作「ストロベリーナイト」のプロローグとも言える内容です。
出だしは誉田作品には珍しくフリーター娘と若い新聞記者の二人が織りなすラブストーリー的な感じで
ちょっと読むのがかったるかったのですが、娘の過去が明らかになるにつれて
徐々に様相が変わり、「ストロベリーナイト」なみのダークな展開になってゆきます。
実際にあった事件をモチーフにしたミステリー小説の良作でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
将来が見えないことに苛立ちを感じていた亮。
ひょんなことから末端組織のやくざと知り合い、任侠の世界に生きる男たちに少しずつ心ひかれていくが―。
舞台は北九州。
主人公である大学生の亮たちがほんの出来心でした大麻の盗み
その事が引き金になって、やがて組同士の抗争へと発展していく。
昔ながらに任侠を重んじながらやっている組
今風にハイテクを駆使した事業展開でのさばっている組
地方のなんともいえない場末的な雰囲気の中で互いに熱い熱いシノギを削っていく・・・。
その狭間に立たされヤバイと思いながらもどんどん深みにはまってゆく亮たち・・・。
これは、まさにVシネマだ!!
第10回(2008年) 大藪春彦賞受賞。
この小説の満足度:☆☆☆☆
六機の特殊―警視庁特殊部隊」を読みました。
「相手は銃器で武装。 現場には多数の人質がいる模様。 これより特殊治安出動装備にて臨場する!」
警視庁警備部第六機動隊、通称六機。
対テロ対策を主とする特殊部隊だが、出動要請は様々だ。
厚いベールに包まれた特殊部隊を描く。
主人公はキャリアで、特殊部隊小隊長の土岐悟警視28歳。
政策的理由から実践部隊の先頭に立たされ数々の難事件に当たってゆく・・・。
「銀行への立て篭もり事件」、「火災現場での機動救助」、「幼女誘拐犯の秘匿監視」、そして「ハイジャック」。
それぞれの事件が起こる合間には「GSG-9の中佐による制圧訓練実戦訓練」や「特科中隊特殊銃手選抜試験」も描かれていてなかなか盛りだくさんの内容です。
特殊部隊を描いた小説と云うよりも一人のキャリア警察官の生き方を描いた作品でなかなか面白い短編集でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
ヤッさん 」を読みました。
誰が呼んだか“銀座のヤス”。
親しみ込めて“ヤッさん”。
築地市場と一流料理店を走って回り、頼られる謎の男。
自分がなぜ宿無しかは語らないが、驚きの舌と食の知識を持つ。
新米ホームレスのタカオは、ひょんなことからヤッさんに弟子入りして、「驚愕のグルメ生活」を味わうことに。
市場も銀座も、最高に旨くて、人情はあったかくて、さっぱりと気持ちがいい。
だが、誇りを持って働く現場には事件も起こる。
ヤッさん&タカオの名コンビが、今日も走る。
ヤっさんはホームレスだけどとても清潔で清く正しく生きている。
築地の問屋と一流の料亭やレストランの間を繋ぐ情報屋になって食べてる。
そんなヤっさんの弟子となった新入りのホームレスのたかお。
ヤっさんは外食産業にまつわる色々なトラブルドラマを次々と解決する。
ヤッさんと一緒にいるたかおは、次第に肉体的にも精神的にも成長してゆく。
なぜ、ヤっさんはホームレスなのか?
そして、なぜそれにこだわるのか?
ヤっさんの過去がだんだんとわかってくる・・・・。
心温まる物語です。
日曜劇場「とんび」の次はこれだな!
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
警視庁心理捜査官 KEEP OUT 」を読みました。
警視庁の「心理応用特別捜査官」だった吉村爽子。
世を震撼させた連続猟奇殺人事件を見事に解決したが、現場主義の組織と幾多の軋轢を生んだ。
結果、爽子は強行犯係主任として所轄署に異動となった。
さらにアクの強い刑事たちとの地道な捜査活動の日々。
だが、爽子の心理捜査官としての眼は、平凡に見える事件の思わぬ真相を決して見逃さなかった・・・。
「警視庁心理捜査官」の続編です。
前作は文庫上下2巻の長編でしたが、今回は1冊9編で構成される短編集となっています。
所轄署が変わっても、警察内部は女性軽視の男性社会でまわりの同僚も食えない人間だらけ・・・。
そんな中、主人公の爽子が肩肘を張りながらも、徐々に新しい環境になじんで成長していく姿が描かれてゆきます。
それぞれに短編ながら最後に向かうに従ってどんどんおもしろくなっていきました。
続編も期待します。
この小説の満足度:☆☆☆☆
第四の壁―アナザーフェイス〈3〉」を読みました
警視庁・刑事総務課に勤める大友鉄は、かつて所属した劇団の記念公演に招待される。
だが、主宰の笹倉が舞台上で絶命。
それは、まさに上演されていたシナリオ通りの展開だった。
大友は、過去と向き合いつつ、昔の仲間たちを容疑者として取り調べることになる…。
題名からしてハードボイルド物を期待して読み始めたら、まるで大人しめの探偵物でした。
ハードボイルド小説好きのHさんにとっては少し物足りない。
それに、話の展開が暗いな~!!
ストーリー全体にめりはりがなく、いまひとつの内容でした。
この小説の満足度:☆☆☆
黒崎視音著 「警視庁心理捜査官」を読みました。
蔵前署管内で異様な姿勢をとらされた女性の死体が発見された。
警視庁心理捜査官の吉村爽子巡査部長は、その女性死体から冷静かつ凶悪な犯人の人格を見る。
捜査の中での同僚の嫌がらせを次々と受ける中、爽子は次第に犯人へと近づいていく。
この作家の作品は今回初めて読みます。
2000年デビュー作との事ですが、主人公の設定が現在映画が公開されている誉田哲也著「ストロベリーナイト」に良く似ています。
「ストロベリーナイト」が2006年の作品ですから、こちらの方が随分前に書かれていたという事になりますね。
主人公の吉村爽子はプロファイリングの専門家として男社会の警察組織の中では浮いた存在です。
しかも、まだ警察組織内にはプロファイリングを専門とする部隊がなく、その存在は多くの捜査員から煙たい存在でもある。
そんな環境の中で、事実のすき間を埋め犯人像を具体的にイメージしながら徐々に真相に迫ってゆく・・・。
スリルとサスペンスを存分に味わえる作品です。
この作品の満足度:☆☆☆☆
佐々木 譲 著 「鷲と虎」を読みました。
1937年7月、北京郊外で軍事衝突が発生。
戦火はたちまち広がり、日中両国は全面的な戦争に突入した。
帝国海軍航空隊の麻生哲郎は勇んで中国へと向かい、アメリカ人飛行士デニス・ワイルドは中国義勇航空隊の一員として出撃する。
上海、南京、漢口、重慶。
長江上空に展開する戦闘機乗りたちの熱き戦い。
やがてふたりはお互いを、名前を持った敵として意識するようになった…。
久々に読む佐々木譲作品です。
エトロフ発緊急電、ベルリン飛行指令、ストックホルムの密使などこれまで読んだ佐々木作品にはどれも一気読みさせられました。
果たして本作は・・・。
昭和十二年の盧溝橋事件から昭和十五年頃までの中国を舞台に実際の歴史的背景を踏まえながら、
日本海軍96式艦上戦闘機搭乗員と、アメリカ傭兵パイロットや中国空軍兵との闘いを描いていきます。
その後の第二次大戦中に活躍した零戦やカーチスP-40に代表されるメジャーな戦闘機は出て来ません。
それらの性能に優れた戦闘機が登場する以前の空中戦が個人の身体能力と頭脳による戦いであった頃の
「戦闘機乗り」としての意地と誇りをかけた男たちの物語です。
しかし、物語の終盤、ついに”鷲と虎”が対決する事になるまでの過程がちょっと長すぎて”一気読み”とまではいかなかった・・・。
この小説の満足度:☆☆☆