チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

袖を重ねる

2014年02月11日 12時17分58秒 | 日記
「袖を重ねる」これは男と女の秘事言葉と心得ている
昔の寝具はお袖のある形をしていたので
男と女が同衾すると袖をあわせることになる

しかし昨日文楽を診ていて
「袖を合わせる」というのも男と女の秘め事なのだと知った
たった一度の逢瀬でお互いが心を許しあい
そのまま別れるのが忍びなくて
男は自分の下着の袖を片方をわたす

女は其の袖を自分の小袖{下着)に縫い付けて
17年ももの長きに亘って男を慕う
たった一度の逢瀬で子供を授かり
美しく育った娘は御殿女中となる

「父親は名も知らぬ顔も分からぬ」
しかしこの袖が相手を探す手がかりだ

浄瑠璃に良くある話だが
其の後日の娘とは知らず姫君の身代わりとして父親が自分の娘を殺害してしまう
ああ、ああ、ああーー

なのだが
「袖を合わせる」とはそういうことかと
ひとり感心しているチャコちゃん先生

現代の衣服では絶対にあり得ない話だ
お袖があるからそう言う色事に使える
しかも男も紅絹を使う時代
その上母御が縫った振り袖の下着という

男の子が母に向ける情も着物ならではと思う

男友達のお母さんの結城紬を譲り受けたとき
「小学生のとき学校に行くのがいやでね、オフクロのこの袖にいつも顔を隠して
学校まで連れて行ってもらっていた」

其れを私が着るわけーーー何か複雑


コメント
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