引っ越しで自宅に戻ってから、自宅の部屋の奥で眠っていたカセットデッキを見つけました。
アナログブーム(昭和ブーム)に乗り、カセットテープの音も聴いてみたくなり、引っぱり出して電源を入れてみると、モーターと思われる所から異音を発し、テープは回らない。
何とかカセットテープが聴いてみたい衝動が止まらないので、修理に挑戦することにしました。
ソース系でアナログの修理は、このブログにも修理履歴を載せている2年前のレコードプレーヤー以来です。
今回、修理に挑むカセットデッキは、ティアック(TEAC)製のV-5010です。
「オーディオの足跡」によると、1993年頃の製品らしいです。今から20数年前の製品です。すでにCDが普及している時期ですね。
部品、メカともに、この時代は良い物が沢山使われています。今では、この物量でこの価格では考えられません。
リアパネルには、きちんと「Made in Japan」と書いてあります。
それでは、修理の経緯について書いていきます。
まずは現状調査と言うことで、上蓋ケースを開けます。
シャーシが銅メッキシャーシで綺麗です。高級感があります。
電解コンデンサには、専用のオーディオコンデンサが使われています(中央奥の電解コンデンサ2本)。
ドルビーシステムのICはソニー製です。
フロントパネルを取り外します。
フロントパネルの基板とメイン基板は前方の白いコネクタでBtoBの様な形で接続されています。
左側の基盤:メカのコントロール部分と思われます。マイコンが載ってます。
右側の基盤:録音・再生のアナログ部分と思われます。入力部分にボリューム、バランスボリュームを配置し、軸で前面操作部まで持ってきています。音質、ノイズに対して憎い気遣いですね。
メカを取り外してみます。メカはサンキョーSankyo製です。
この頃は殆どカセットデッキ・プレーヤーがサンキョー製を採用していたと思います。
いきなり、発見しました。
予想通り、キャプスタンのフライホイール用ベルトが経年変化で切れています。 (黒いゴム)
モーターが4個も使われています。凄い!この価格にしては贅沢です。
メカ動作は、かなり複雑そうです。メカには苦手なので、この部分はあまり故障が無い事を期待します。
取り敢えず、イジェクト・メカ部分を取り外します。
以外とすんなりと分離が出来ました。
くれぐれもヘッドには、傷をつけないように注意が必要です。組み立て時にも。
あっ!どの部分にどのビスが使われているか分からなくなりました。。。。使用箇所を記録しておくべきだった。後悔。
メカを正面から見ると、こんな感じです。重厚に見えます。
よく見ると、ここにある筈のバックテンション用ベルトも切れて見当たらない。本来は下の2つのプーリーに掛かっている筈です。
キャプスタン用の大型のフライホイールが2つあります。デュアル・キャプスタンです。(下の写真)
ベルトが切れています。
フライホイールを外してみます。
ゴムベルトは切れてるというよりも、溶けて溶解しています。触ると危険です。手が真っ黒になってなかなか取れません。
注意しても、リード線とかその他の部分にも付着しています。
このベルトは、単なるウレタンではなく、色々な材料、例えばブチルとか、が混ぜられているそうです。
モーターの軸にもこの溶解したゴムが巻き付いています。
このゴムを最初にウエスか綿棒で粗方取り除き、その後、無水エタノールで綺麗に掃除しました。
洗浄後は、この通り綺麗になりました。
モーター軸も綺麗になりました。真鍮かな? ここは綿棒を使ったほうが良いです。
新しいゴムベルトを千石通商に手配しました。
フライホイール用5mm幅の平ベルトとバックテンション用の角ベルト。
何種類か手配しましたが、フライホイール用の平ベルトはサイズを間違えて少し径の小さいものを手配してしまいました。
その中から直径70mmのものを使いました。いずれ伸びるでしょう。
少しきついですが、この様に出来ました。あまりテンションが高いと上手く回ってくれないので少し心配です。
バックテンション用の角ベルトは直径25mmがちょうど良かったです。30mmでは大きいです。
ここまで出来れば、あとは元通りに組み上げていきます。
折角なので、キャプスタンとヘッドも無水アルコールで掃除しておきました。特にキャプスタンは綿棒がかなり黒くなりました。
組み上げは、それぞれのビスの使用箇所がわからなくなって困りましたが、穴径と記憶を辿りながら締め付けて行きました。
あとは、ボリューム軸と前面パネルとの位置合わせも、ちょっと苦労しました。ちょっとしたコツが必要です。
コネクタ類もすべて接続して、取り敢えず電源を入れてみます。
動きました!!!
フライホイールも回っています!!!
音を出してみます。 音の揺れとかもありません。 成功!!!!!
上蓋を取り付けて、全体を少し綺麗にして完成。
約20年ぶりに聴く、カセットデッキの音。
音質はこんなのだったかな?
レコードプレーヤーほどの感動はありませんが、音質よりも昔に録りためたFM放送番組とかは、これでないと聴くことが出来ません。
レコードプレーヤーとは、また違う、復活の価値があります。レコード化やCD化されていない貴重な音源が沢山あります。
テープに録音していたのは、FM放送のエアチェックが殆どで、FMのスタジオでのライブとか貴重な音源もあります。
いきなり見つけたカセットテープが、リー・リトナーの81年のスタジオライブ(NHK-FM?FM東京?)です。
これは、リトナーが絶頂期の超絶速弾きギターです。感動もので貴重と思います。
恐らくこの頃、私はナカミチのデッキを使って録音していたと思います。残念ながら、そのデッキは捨ててしまって有りません。
カセットテープの音を聴いていて驚いたのは、20年前のテープでも、伸びたり、音が酔っ払い(ふらふら、よれよれ)になったり、そんな事は全くありません。
今は、古いテープを探しては再生しながら動作の状態を見ています。20数年ぶりに通電したので元気が出るまで時間が掛かるかも。
動作が落ち着いたら、貴重な音源をAD変換(192kHz/24bit)して、デジタルで保存する事も検討中です。。
回路的にも弄ったり(オペアンプの交換など)の選択肢もありますが、そこまでするかは?です。