北朝鮮をめぐる状況が緊迫し、注目を集めている。あの国がヤバイのは、いつものことでしょ・・・という見方もあるだろうが、今回は特別と見る識者が多い。
なんといっても、3月に、韓国の軍艦に魚雷を打ち込んで沈没させてしまった。この魚雷攻撃で、なんと、韓国軍の兵隊46名が戦死した。これだけの戦死者まで出した以上、いつもの脅しでは済まされない。情勢は一気に緊迫した。マジで、半世紀前に朝鮮戦争が休戦になって以来の緊張感だ。
かと思うと、5月には、金正日が中国を訪問した。地続きの中国に、いつものとおり列車で訪問。「50両編成」だかなんだかの、超ダラダラ列車だ。以前の中国訪問時に、線路のワキから列車を銃撃されて懲りたため、金正日がどの車両に乗っているか分からないようにしたらしい。筆者の知人の香港人によると、「以前、金正日が手術のため、極秘で香港の病院に来たことがあった。あのときは3本の列車を編成して、バラバラに広東省を通らせて撹乱してたよ」ということだ。
週刊現代で、北朝鮮ウォッチャーの鈴木琢磨氏が語っているところでは、北の政府が刊行したオフィシャルな歴史書・「朝鮮人民の正義の祖国解放戦争史」という本に、「朝鮮戦争のとき、わが軍は、わずか4隻の魚雷艇をもって敵の重巡洋艦1隻を撃沈し、軽巡洋艦1隻を撃破した。世界の海戦史上、たぐいまれなる勲功が上がったのだ」うんぬんと書いてある下りがあるという。
つまり、かの国では、「魚雷で、敵の軍艦を沈めた」というのが、建国の父・金日成から受け継がれた「わが軍の栄光の歴史」とされているらしい。今回の魚雷攻撃は、そのイメージと重ねて、軍の栄光を発揚するのが目的だというのだ。
恐ろしいことに、この栄光の朝鮮戦争史では、「魚雷で、敵の軍艦を沈めた」という下りのあとに、「戦車部隊でソウルに攻め込み、ソウル市庁舎の大極旗を引きずり下ろして、代わりに北朝鮮の旗を立てた」という記述があるという。このため、「魚雷の次は、戦車部隊を『大活躍』させるつもりなのではないか?」という憶測を呼んでいる。
いくらなんでも、まさか、いきなり戦車部隊がソウルに突入するとは思えないが (さすがに、そんな暴挙をすれば全面戦争が避けられない・・・)、なんらかの形で戦車部隊を「大活躍」させる可能性は、十分に高いと言えるだろう。
それにしても、「なんで、ここまでやらなきゃいかんの?」というのが、素朴な疑問なのだが、それは例によって、「経済危機によって追い詰められたからだ」という。
経済危機といえば、90年代後半には、「ほんの数年で、北朝鮮国民の10人に1人が餓死した」とされる地獄の時期があった。北朝鮮では、「苦難の行軍」と呼ばれているという。かつての共産中国で起きた、「大躍進政策」(数千万人の中国人が餓死したと言われる、1950年代の事件)をホウフツさせる悲劇だ。
この「苦難の行軍」すら乗り切った北朝鮮も、最近のハイパーインフレには参っているらしい。先日は、「デノミ政策が失敗して、責任者が公開銃殺刑になった」という報道がなされた。皮肉にも、デノミをキッカケに北朝鮮経済はパニックに陥り、市民が物資の買いだめに走った結果、ハイパーインフレが起きてしまったという (北朝鮮が実施したデノミ政策については、下記をご参照)。
>2009年11月30日、北朝鮮は同国通貨ウォンの100分の1のデノミを行った。北朝鮮では1992年にも「貨幣改革」と称して新旧通貨の交換が行われたことがあるが、当時の比率は1対1だった。今回のデノミには一世帯あたり10万ウォン(非公式レートで約3000円)の上限額が設けられ、それを超える現金は事実上北朝鮮政府に没収される。市民の間では不満と混乱が生じており、政府は対策として銀行預金者に10分の1の「優遇」レートを、また、1世帯あたりの交換額が旧10万ウォンに満たない世帯には「配慮金」として一人当たり新500ウォンを支給する。しかし、混乱が続出し、2010年3月18日には朴南基(パク・ナムギ)労働党計画財政部長がデノミに伴う経済混乱の責任を問われ処刑されていたことが明らかとなった。(出典 : ウィキペディア 『デノミネーション』)
このデノミ政策失敗で、軍人の生活が大混乱になった結果、クーデターが起こりかねない情勢となった。再来年にも三男の金正銀に権力を継承させるつもりの、金正日の立場は確実にヤバくなっている。
どうやら、北朝鮮政府が、韓国を相手に危険な火遊びを始めたのは、軍人の不満を静めるのが目的だったようだ。もはや、それ以外に打つ手がないのだろう。経済改革派のデノミ担当者が処刑された今、強硬派の台頭は、誰にも止められない。
まったく、隣国のこととはいえ、背筋がゾッするような地獄絵図だ。経済発展がいちじるしい東アジアで、なんでこんな問題が、いつまでも続いているのでしょうか・・・!?
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>韓国を相手に危険な火遊びを始めたのは、軍人の不満を静めるのが目的のようだ。
憐れな人民が貧するのは毎度の北朝鮮ですが、確かに軍人まで不満が蔓延し出したのなら、かなりヤバイ水準になっているかもしれませんね。
両政府、本音の本音では全面戦争など望んでいないと思いますが、軍事境界線での偶発的衝突から、変な方向に行かなければいいのですが。
万が一に備えて日本国首相は、危機管理のできる政治家に交代してもらいたいものです。
でも、現在の状況は本当にヤバイ。近々、歴史が動くでしょう。