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正月から、「今年、起こりそうな社会的変化」をいろんな人と話し合ったけど、そこで話題になることのひとつに、「シェールガス革命」がある。これは、以前から識者には知られていたけど、去年あたりから、急に認知度がアップした。世の中のアチコチで話題になっている。
シェールガスとは、従来の天然ガス層よりも深くて固い、岩盤の層に含まれるメタンガスのこと。
以前なら、岩盤が固くて採掘する技術がなかったけど、今では取り出すことが可能になった。どう採掘しているのかについては、
動画(英語)を見ると分かりやすい。要は、シェールガスの層に水平な井戸を掘り、たくさん穴の開いた特殊なパイプ(パイプガン)を入れて火薬を爆発させ、岩盤にヒビを入れる。それから、水圧をかけて、ヒビを広げて・・・という感じ。
メタンガスは、化学の教科書ではオナジミの気体で、1コの炭素原子の回りを4コの水素原子が囲んだだけという、最もシンプルな炭化水素の分子でできている。通常、「天然ガス」とか、「都市ガス」と呼ばれているのが、これ。
メタンガスは、空気より軽くて、よく燃える。密度が低い気体のままだと、かさばって持ち運びに不便。でも、工場で冷やして、ものすごい低温(マイナス162度)にすれば、「液化天然ガス」(LNG)と呼ばれる液体になる。そうすると、ぐっとコンパクトな体積におさまり、持ち運びがラクになる。
持ち運べると言ったって、冷やすのが大変だ。専用のタンカーで海を越え、地上でも専用のタンクで運ばなければいけない。ひとつ間違えば、たちまち気化してバクハツする。
その点、「プロパンガス」のボンベなら、一般家庭でもよく見かける。成分は同じ炭化水素(・・・炭素と水素がくっついてデキた分子のこと。よく燃えるのが特徴)だけど、こちらはメタンより重い気体で、それほど極端な低温じゃなくても液化するから、特別な設備がなくてもOK。プロパンより重い「ブタンガス」になると、さらに液化しやすく、冬の北海道などの寒いところでは、放っておいても液体になってしまう。こちらは、携帯用のカセットコンロとして、野外でも重宝されている。
メタンだと、そういうわけにいかない。世界では、液化天然ガス(LNG)にして専用タンカーで運ぶより、パイプラインで輸送するほうが主流になっている。ロシアからパイプラインを引いているヨーロッパ諸国、南米からパイプラインを引いているアメリカに比べて、日本の取り組みは遅れている。
そんなガスの採掘の可能性が、大きく広がろうとしている。
世界中に埋蔵資源はあるけど、商用生産が行われているのは、今のところアメリカだけ。その理由は、資源が多いからというより、ベンチャー企業がせっせと開発してきたからだという。
シェールガス革命は、大手のエネルギー企業よりも、小規模なベンチャー企業が主役になっている。というのも、シェールガスは、掘り始めてしばらくの間はガスが噴き出すけど、ガスが出なくなるのも意外と早い。だから、次々にパイプを打ち込んで、掘り続けなければいけないらしい。「小回りの利くスピード感あふれる企業に向いている」と言われるのは、そのためだとか。大丈夫かいな?
掘っている人たちのインタビューを見ても、「今までに、会社を2回つくって、2回とも潰しちまった。今度は知り合いから借金してシェールガス会社を作った、今度こそは失敗しないぞ」といったような、きわめてアメリカ的な「起業家」たちだった。
インターネット革命も、こういう人たちによって成し遂げられたのを思い出す。ほとんどのネット企業は、時代のアダ花となって消えていった・・・。それでも、結果的に、インターネットは世界中で大きく発展した。アメリカの起業家たちが、それを大幅に早めたのは間違いない。
日本の場合、シェールガスはあんまりないみたい。でも、日本近海には、メタンハイドレートの膨大な資源が眠っている。これまた、この話をすると、「そうそう、日本近海にはすごい資源があるらしいな!」といって誰もがうなずくほど、認知度が上がっている。もっとも、メタンハイドレートの場合は、海底資源だけに、採掘コストが大きいのが難点だ。将来性はともかく・・・。
世界のエネルギー需給構造を、革命的に変えそうなシェールガス。アメリカが、エネルギーの産出国としても、世界一の大国になりつつある。影響を受けそうなのは、中東諸国やロシアといった、石油・天然ガスの輸出国だろう。
現に、下記の
記事によると、ロシアのプーチン大統領は、かなり気にしているらしい。
>プーチン大統領は、当時首相だった昨年末に「欧州のシェールガス開発がロシアの国営ガス石油会社・ガスプロムにどれほど脅威になり得るか」という質問を受けたところ、急に不機嫌になったという。そして、ノートを乱暴にたぐり寄せて、「水圧破砕法」の手法を図に描いて示し、その図をペンでつつきながら、「欧州各国の人々が、地下水汚染の可能性というその環境リスクを理解すれば、破砕法の使用は禁止されるだろう」と警告したという(Financial Times 10 July 2012)。
注目の分野だけに、いろんな情報が飛び交っている。この先、まだまだ、この話題で盛り上がれそうだ・・・(笑)。