中部経典 第一二〇経 「希望による転生」〈意行経>からの抜粋
世尊「比丘(ビク・・・修行僧)たちよ、『希望による転生』について説いてあげよう。では聞きなさい。よく耳を傾けなさい。よいか」
(人間界への転生)
世尊は次のようにいわれた。
「比丘たちよ、いま比丘が信心(信)をそなえ、戒行(戒)をそなえ、学識(学)をそなえ、気前のよさ(捨)をそなえ、智慧(慧)をそなえているとする。
かれが『ああ、わたしの身体が壊れたあと、裕福なカッテイヤの仲間に生まれかわりたいものだ』と思う。『・・・裕福なバラモンの仲間に・・・裕福な平民の仲間に・・・生まれかわりたいものだ』と思う。
彼は、そう思い立ち、その思いを確かにし、その思いをふくらませる。かれが、その希望と生き方をこのように進め、このように強めると、そこに生まれかわるのに効果がある。
(六欲天への転生)
「比丘たちよ、いま比丘が信心(信)をそなえ、・・・智慧(慧)をそなえているとする。
かれが『ああ、わたしの身体が壊れたあと、四天王の仲間に生まれかわりたいものだ』と思う。『・・・三十三天の仲間に・・・夜摩天(やまてんの仲間に・・・兜率天(とそつてん)の仲間に・・・楽変化天(らくへんげてん)の仲間に・・・他化自在天(たけじざいてん)の仲間に・・・生まれかわりたいものだ』と思う。
彼は、そう思い立ち、その思いを確かにし、その思いをふくらませる。かれが、その希望と生き方をこのように進め、このように強めると、そこに生まれかわるのに効果がある。
(以下、「色界初禅天への転生」、「色界第二禅天への転生」、「色界第三禅天への転生」、「色界第四禅天への転生」、「無色界への転生」と、同じように延々と続き、最後に)
(解脱の完成)
「さらにまた、比丘たちよ、いま比丘が信心(信)をそなえ、・・・智慧(慧)をそなえているとする。
かれは『ああ、わたしは煩悩を(滅し)尽くして、煩悩のない心の解脱と、智慧による解脱を、現世でみずからはっきりと知り、じかに見、そこに達してとどまる。比丘たちよ、この比丘はどこにも生まれかわりはせず、いずこにも生まれかわりはしない。」
世尊はこう言われた。比丘たちは、感激して世尊の言葉を讃えた。
(仏典からの抜粋、終わり)
この世で、良い身分に生まれ変わる。あの世で、天界に生まれ変わる。あの世で、神様・仏様が住む、高い天界に生まれ変わる・・・。
まことに、結構なことだ。
でも、上には上がある。最高の天界に生まれ変わるよりも、さらにその上が。
それは、「どこにも生まれ変わらず、いずこにも生まれ変わらない」ということ。
輪廻転生の終焉。それは、これほどまでの喜び。
ありがたや。合掌・・・・・。