各紙の報道より
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>中国、「邪教」の37人拘束 共産党支配に挑戦
>【北京共同】中国青海省の公安当局は17日までに、中国共産党の支配に挑戦し、政府が「邪教」と認定する宗教組織「全能神」の中核メンバー37人を拘束した。うち7人は教団の幹部クラスという。容疑など詳細は不明。中国メディアが伝えた。
>キリスト教系とされる全能神は中国各地で「2012年12月21日に世界が滅びる」と終末論を流布。信者に共産党との「決戦」も呼び掛けた。
>中国当局は21日が近づくにつれ、社会不安が拡大していることに危機感を強め、取り締まりを強化。今月8~13日には福建省などで終末論を知人に触れ回った57人を拘束した。
続報によると、全能神のメンバーはさらに当局に拘束されており、「101人」、「400人」と、ドンドン増えている。
以前から、中国で「終末論」が流布していることが話題になっていた。今年の春には、政府の元・高官が、「今、中国の民衆に充満しているのは、まさに『2012年気分』ともいうべき世紀末の気分である。草の根の民たちは社会的不公正を変えられない無力感の中で、この世の破滅と一緒に滅んでしまおうと『集団的焦燥感』に駆り立てられているのだ」と論じた。
本ブログでも、その話を取り上げたことがある。
運命の日・「2012年12月21日」を目前にして、ドス黒い社会不安は、うねりを増している。中国政府当局も取締りを強化しているというから、笑って済ませられる状況ではなさそうだ。
先日は、「2012年12月21日、世界が暗闇に包まれる」というウワサが広がり、ロウソクを買い求める人が店頭に殺到する騒ぎにもなった。
今回、幹部が逮捕されたのは「全能神」とかいう邪教らしい。まあ、日本にもよくある新興宗教みたいなものだろう。「われは、全能の神であるぞ」なんて、いかにもドコかの教祖が使いそうなフレーズだし(笑)。
ひとことで「中国各地で終末論を流布」といっても、地理的なスケールがなんともデカい。今回の37人が逮捕された青海省といえば、古来からチベット族が多く住んでいるところ。「君見ずや 青海のほとり、古来 白骨 人の収むる無く」という杜甫の詩を連想させる、西の果ての辺境だ。一方、「今月8~13日に57人が拘束された」という福建省は、台湾のすぐ近くにある南方の地で、青海省とは何千キロも離れている。こんなに広がっているとは、大陸は「終末論」のスケールも半端ではない。インターネットが不自由な中国だけに、携帯電話で情報が飛び交っているのだろう。
壮大で精緻なカレンダーを石に刻みつけた古代マヤ人たちも、数千年後に地球の裏側でこんな騒ぎが起きるとは、さすがに予測できなかったに違いない。
古来から中国では、社会に大変動が起きるときは、たいてい終末論が広がり、新興宗教がはびこるものだ。
三国志ファンなら、2千年近く前の太平道の教祖・張角が、「蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし」と叫びながら、民衆を扇動して大反乱を起こすシーンがオナジミだろう。このとき、張角が起こした黄巾の乱は、大陸全土を混乱の渦に巻き込み、三国志の大乱世をもたらした。この大混乱のおかげで、全国的に食糧生産がストップし、当時の記録に「人煙まれなり」と書かれるほど、中国の人口は激減してしまった。
近代にも、同じようなことが起きた。ヨーロッパ諸国の中国進出に伴い、清朝の体制が動揺する19世紀の中国で、またしても新興教祖の洪秀全が立ち上がり、太平天国の乱を引き起こした。天王・洪秀全は、キリスト教の「上帝ヤハウェ」から啓示を受け、南京を首都として独立国を樹立し、一時は中国全土を征服しそうなほどの勢いだった。この大戦乱により、中国の人口はまたもや激減した。一国の内戦とはいえ、多くの人間が死んだことにかけては、人類史上にも屈指の大規模な戦乱と言えるだろう。
このような歴史を振り返ると、中国で体制が崩壊するときには、終末論や新興宗教がつきものだということがよく分かる。法輪功を必死で弾圧してきた中国政府当局だけど、ひとつやふたつの団体を抑えたくらいで、広がる社会不安を鎮めるのは無理みたい。
いよいよ末期の様相を呈してきた中国。これから、ドコに向かうのか・・・。