池袋のサンシャイン・シティには、「古代オリエント博物館」というのがある。上野の国立博物館などとは比べようもないほど小さく、訪れる人も多くない。だから、じっくり見ることができる。来客も皆、マッタリとした雰囲気で楽しそうだ。
ここで、「メソポタミア文明展」というのをやっていた。博物館の所蔵品に加えて、なかなか見ることができない「平山郁夫のシルクロード美術館」(どこかのリゾート地にあるらしい・・・)から借りた貴重な展示物が加わり、古代文明マニアには壮観だ。
粘土版に刻みこまれた、クサビ型文字には誰もが目を奪われる。古代には、紙がなかったのだ。紙は、2000年ほど前に中国で発明されるまでなかった。といっても、紙の製法が中東まで伝わるのに、何百年もかかった。それまでは、紙がなくて不便だった。
といっても、「人類文明の揺りカゴ」と言われるシュメールの地には、別のものがあった。それは、粘土版。チグリス・ユーフラテスの両大河が流れ込み、広大な湿原を形成していたシュメールでは、粘土と葦(アシ)がたくさんあった。人々は、粘土を固めて葦で補強した家に住み、粘土を固めた粘土版に、葦のペンで書き付けていた。
イラクでは、膨大な量の粘土版が掘り出されてきた。専門学校でウデを磨いた書記たちが、せっせと刻み付けた粘土版。クサビ型文字は虫メガネで見たくなるほどキメ細かく、パッと見には模様にしか見えない。重要な法律文書や契約文書は、改ざんできないよう、カマドで焼成されていた。これほど大量の古文書を残した古代文明は、他にない。「中世ヨーロッパよりも、比べ物にならないほど当時の記録が残っている時代」と、専門家は口をそろえる。古代のサルゴン大王やウルナンム王といった、4000年以上も昔の帝王たちの名が、中世ヨーロッパのリチャード獅子心王やフィリップ尊厳王たちのように現代人にも知られているのは、このためだ。
粘土で築いた建物は、何千年もたった今、すっかり風化している。大河が流れを変えて置き去りにされた古代都市は、砂漠に埋もれ、単なる泥の山にしか見えなくなってしまった。このため、巨石を積み上げた壮大な遺跡が多いエジプトの古代都市に比べ、いまひとつ人気がパッとしない。その上、近年のイラクは極端に治安が悪く、入国不能な国になってしまっている。ますます人気が低下するのは仕方ない。
でも、精神世界ファンにとっては、シュメールの地が持つ意味は特別だ(笑)。なんたって、ここには、宇宙人アヌンナキがもたらしたという、地球人類最古の文明があるのだから・・・。