引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

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②真昆布漁をたずねて。2015年7月30日~8月4日

2015年08月08日 | 出汁素材の産地をたずねて

 続きです。

 

操業時間はあと3時間。

今度は堤防から、西方面の漁を

見てみようと

歩き始めたら、ほんの数軒で

わっ!!!なんと!!!

小石を敷き詰めた上に昆布が

天日干しされてます。

ざっと数えて30本程度。

海はまだ漁の最中だし

これはおそらく拾い昆布漁。

人の姿が見えないのですが

浜なのかもしれません。

もしかしたら、と番屋の横を

勝手に廻ってみたら

日差しを浴びて光る、帆立貝。

3ヶ月位のきじ猫が船の裏から

顔を出したり引っ込んだり。

思いがけない風景、

こういう幸せというのは、なんて

表現すればいいのだろう

しばし佇みました。

7時半。

ここで、ここから徒歩20分の旅館に戻って朝食。

拾い昆布の方が、どんな方なのか

楽しみにしながらいただきます。

ごはんがすすみ、2膳なり。

 

食後、再び訪れたけど、

主はまだ海のよう。

カラスが猫のカリカリで食事中。

 

お隣の家では男性の姿が見えます。

挨拶したら

「昆布買いにきたのか?」

「いえ、いえ、真昆布漁を見に」

「どっから?大阪か?」

「東京からです」

「東京からというのは見ねな」

 

「これ、昨日採ってきて干した。

干場見るか?」

「どこで干してるんですか」

「場所がねがら向かいの山に

干場つくってる。隣の部屋の

(温風乾燥)の干場と両方で

乾燥だ。見るか」

外は漁の真っ最中。

「お子さんは?」

「3人。次男と三男が継いで

今日も前で採ってる」

「それは幸せですね」

「お父さんは出ないんですか」

「俺はもう引退した」

「まだまだできそうな、

いい身体なのに、引退ですか」

「昆布漁は重労働だ。

もう、捻(ねじ)る力がなくなった。

(昆布の)根元に引っ掛けて捻って、

引き揚げるのには

ものすごい力が必要だ」

立ち上がって、塩化ビニールの

マッカを見せて

「ヒビ見えっか」

「捻ったときに重さで入ったヒビだ」

天然真昆布の長さは幅約30cm、

長さ2m~8m位。

 

昆布漁の船は2~3人乗用の小型船。

足場の悪い(だろう)揺れる船の上で

の作業は、力も余分にかかるだろう

ことが想像できます。

話していたら、

昆布をどっさり抱えた女性が

浜から上がってきました。

年齢は50代~60歳か。

焼けた肌に青いウエットスーツと白が

とても似合う小綺麗でチャーミングな人。

挨拶ののち、

「ちょっと昆布の写真撮らせて

もらっていいですか」

「こんなんでよかったら」

「ご主人、いま、海ですか?」

「そう、わたしは酔うので乗れ

ないから、前で拾ってる」

 

「何してる人?」

小さな日本料理と、だしのとり方の

教室をしてまして、と言うと

返事代わりのように

目の前に昆布を差し出し

「水昆布、知ってる?」

「ええ、どういうものかは

知ってます。

でも売ってるわけじゃないので

見たことはありません」

「これ水昆布。

普通のと見比べるとわかりやすいね」

両方、並べて見せてくれました。

*水昆布というのは1年昆布

とも呼ばれ葉が薄く形も小さめ。

旨味も薄く商品価値は低い。

 

拾い昆布の株です。

この方のお話もすごく勉強に

なりました。

雨が降りそうだからと

広げて干さず、大きさをまとめて

番屋近くに置きます。

 「また採りに行くわ」

ウエットスーツに麻縄を巻き、浜へ。

「さっきは、鹿部漁港の近くまで

行ったの」

「なんか、楽しそうですね」

「そう、海が好きだから」

実家は江差の帆立漁師とのこと。

姿を見送って、

帆立の貝殻の道を登ったとき

ちょっぴりジーーンときました。

 

採取終了時間の10時。

鹿部漁港で、再び姿をみかけました。

ご主人の採取した昆布に埋もれる

ようにして選別し、結束しています。

クレーンがないため、

陸揚げも一苦労です。

 

ご主人の昆布は、葉幅、厚み、長さ

共、その形状は素晴らしいものでした。

組合に集められるので、それは

無理な注文ですが、鹿部浜産の昆布も

白口浜。ご主人の昆布で

だしを引いてみたいと思いました。

 

いただいた根昆布。

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