きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

気候危機の科学① 計算機の中に「仮想地球」

2022-03-21 07:09:50 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
気候危機の科学① 計算機の中に「仮想地球」
豪雨、台風、熱波、干ばつ、海面上昇など世界が直面する「気候危機」。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の第6次報告書は、人間活動による地球温暖化は「疑う余地がない」と断定しました。
そこに至るまでには、半世紀以上に及ぶ科学者たちの研究の積み重ねがありました。
なかでも計算機(コンピューター)の中に「仮想地球」をつくって、物理の基本法則をもとに大気の状態を計算し、気候変動や気象現象を調べる数値モデル研究が大きく発展。
日々の天気予報から将来の気候予測までが可能になり、現代社会に不可欠なものとなっています。

最初は1次元
その土台を築いたのが、昨年のノーベル物理学賞に輝いた真鍋淑郎(しゅくろう)米プ一リンストン大学上席研究員でした。
1958年に渡米した真鍋さんは、地球を1本の柱に見立てた鉛直1次元の単純なモデルから出発して、温室効果ガスの影響を定量的に示すことに初めて成功しました。「仮想地球」の大気中の二酸化炭素濃度を、300ppm(100万分の1)から150ppmに減らしたり、600ppmに増やしたりしたときに、地面付近の気温がどう変化するかを求めたのです。



計算機内の「仮想地球」のイメージ(気象庁ホームページから)

「仮想地球」を、大気と海洋を結合した、より現実的な3次元のモデルに発展させた真鍋さん。90年に発表されたIPCC第1次報告書の執筆者を務めるなど、地球温暖化予測に貢献しました。
計算機の能力向上とともに、気候や気象の数値モデルは精緻化され、詳細な現象を高精度でとらえられるようになりつつあります。
気象庁の数値予報では現在、地球全体を約20キロメートルの格子で区切って高・低気圧や台風、梅雨前線などを予測する全球モデルや、日本周辺を2キロメートル四方の格子で計算して数時間先の大雨などを予想する局地モデルなどが運用されています。
ただ気候や気象にかかわる現象は、基本的な物理法則が分かっていても、多くの要素が複雑にからみあっています。「仮想地球」を現実に近づけようとして多くの要素を数値モデルに取り入れようとすればするほど、計算量が膨大になるというジレンマがあります。
そうした困難を、真鍋さんら科学者は一つひとつ克服し、現在も格闘を続けています。



真鍋さんから贈られた著書を手にする増田善信さん

今に満足せず
真鍋さんが渡米したころ、気象庁は初の大型計算機を導入し、数値予報を開始する準備を進めていました。その計画にかかわった増田善信(よしのぶ)元気象研究所研究室長(98)は「目標だった10日先の予報がほぼできるようになったことは長足(ちょうそく)の進歩です」と感慨深げです。「だからといって、誰も今の予報に満足していません。科学には『これで終わり』はありません。どんどん発展するものです」

気候や気象という複雑な現象に立ち向かう科学者たちの過去・現在・未来の挑戦を追いました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月19日付掲載


「仮想地球」を、大気と海洋を結合した、より現実的な3次元のモデルに発展させた真鍋さん。90年に発表されたIPCC第1次報告書の執筆者を務めるなど、地球温暖化予測に貢献。
真鍋さんが渡米したころ、気象庁は初の大型計算機を導入し、数値予報を開始する準備を進めていました。その計画にかかわった増田善信(よしのぶ)元気象研究所研究室長(98)は「目標だった10日先の予報がほぼできるようになったことは長足(ちょうそく)の進歩です」と感慨深げ。
気象予報が地球温暖化予測へ発展。

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コロナ禍と資本主義 宅配の闇⑤ ネット通販膨張の代償

2022-03-20 07:11:07 | 働く権利・賃金・雇用問題について
コロナ禍と資本主義 宅配の闇⑤ ネット通販膨張の代償

店舗へ行かずに欲しい商品を素早く届けてもらえるインターネット通販は、急速に社会に浸透してきました。
東京都内に住む下川麻衣さん(48)は楽天とアマゾンの専用クレジットカードを作成するほど頻繁にネット通販を利用しています。
「買わなければいけないものが出るとすぐにネットで検索します。共働きで子どももいるので買い物に行く手間をできるだけ省きたいんです」
新型コロナウイルスの感染拡大で外で買い物をする機会が激減。代わりに通販の利用が増えています。
宅配便の取扱個数は2020年度に過去最多の約48億個を記録しました。前年度からの増加率は11・9%に達し、過去20年で最大です。
国内のネット通販市場は大手の楽天とアマゾンで約4~5割のシェアを占めます。商品に違いが生じにくい通販市場において企業が競争に生き残るための条件は、商品を大量に、早く、安く配送することです。ネット通販企業は物流現場を自らの競争に巻き込む形でシェアを拡大させてきました。
その筆頭がアマゾンです。




楽天を猛追
2000年に日本でサイトを立ち上げ、顧客が集中する首都圏を中心に大型物流センターを相次いで設立してきました。注文から出荷までの時間を短縮し、当日配送や翌日配送を拡充。ライバルの楽天に先駆けて無料配送にも着手しました。
アマゾンの日本サイトには直販商品のほか、約16万社もの中小業者が商品を出品しています。20年の1年間で外部の出品業者は5億点以上の商品を販売。平均で毎分900個以上の商品が売られました。
日本に進出して以降着々とシェアを拡大したアマゾンは、首位の楽天を猛追します。焦った楽天はアマゾンに追随する形で物流網の構築に乗り出しました。12年、通販サイト「楽天市場」の出品業者向けに商品の保管・配送を代行するサービス「楽天スーパーロジスティクス」を導入。翌日配達や365日の出荷に対応することでアマゾンと出品者の囲い込みを競っています。
宅配市場は、大手のヤマト運輸を筆頭に佐川急便、日本郵便の3社で9割のシェアを占めてきました。各社はネット通販企業などの大口顧客から大量の配送を受注しています。しかし、大口顧客には割引料金が適用されることが通例です。
この商慣行は宅配事業者の利益を押し下げ、利益なき繁忙がもたらされてきました。



軽バンの荷台に積み込まれたアマゾンの荷物

過重労働に
ネット通販膨張の代償は労働現場に及び、膨大な荷量をさばくために長時間・過重労働が常態化しました。その実態が表面化したのが17年の「宅配クライシス(危機)」です。ヤマト運輸でドライバーの長時間労働や不払い残業が発覚。ヤマトに次いで物流各社も相次いで配送料の値上げや荷量の抑制に踏み切りました。
とりわけ大きな衝撃を受けたのがヤマトの最大顧客だったアマゾンです。当日配送などのサービス縮小を余儀なくされたほか、約4割の運賃値上げを迫られました。
ドライバーの窮状を改善する契機となるはずだった宅配クライシス。しかし、ネット通販企業は宅配業者に依存しない「脱宅配便」にかじを切ります。より低コストの労働力を求めて個人事業主への外部委託化を加速させていきました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月19日付掲載


新型コロナウイルスの感染拡大で外で買い物をする機会が激減。代わりに通販の利用が増えています。
宅配便の取扱個数は2020年度に過去最多の約48億個を記録しました。前年度からの増加率は11・9%に達し、過去20年で最大。
ドライバーの窮状を改善する契機となるはずだった宅配クライシス。しかし、ネット通販企業は宅配業者に依存しない「脱宅配便」にかじを切ります。より低コストの労働力を求めて個人事業主への外部委託化を加速させていきました。
僕も、数あるネットショップで安くて品質の良いところを探します。決済の際、アマゾンや楽天はワンクリックでできるので簡単。選ぶことが多いのは確実。
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コロナ禍と資本主義 宅配の闇④ 僕は楽天とたたかう

2022-03-19 07:08:08 | 働く権利・賃金・雇用問題について
コロナ禍と資本主義 宅配の闇④ 僕は楽天とたたかう

楽天に切り捨てられた運送会社「トランプ」の矢作和徳社長は2021年10月、反撃ののろしをあげました。楽天幹部による不正の巻き添えで被った損害などをめぐり、楽天に賠償要求を突き付けました。
「お金のためだけではありません。物流業界を変えたい。だから僕は楽天とたたかいます」
トランプ社が楽天と業務委託契約を結んだのは18年11月のことです。埼玉県川口市に構えた営業所を中心に計7拠点を運営。楽天の「自社配送」網「楽天エクスプレス」を最前線で支え続けました。
「僕たちは直接契約を結んだ個人事業主のドライバーを抱えて営業してきました。他社は2次下請け、3次下請けと間に何社もはさむので多重階層になります。その分、委託料は中抜きされてドライバーの収入が減ってしまう。ドライバーに安定した収入を保障することが高い配達品質につながると考えています」



記者会見で楽天に損害賠償を求める方針を発表する矢作和徳社長=2021年10月21日、東京都内

無理難題を
ただ、ドライバーの働き方を改善しようにも、発注元である楽天からの無理難題に何度も振り回されました。楽天が独自に実施するセールに合わせて荷物が激増。楽天の予測値をはるかに上回る荷物が営業所に届くこともあり、現場は常に綱渡りの状態でした。
当時、川口営業所の管理者をしていた副社長の鈴木将太さん(33)は楽天の担当者の冷たい態度を今でも覚えています。
「明日、姫路の荷物多いよ。残荷(ざんか)出せないけどどうするんですか?ドライバーも足りてないですよねえ?」
ドライバーを増やす余裕もなく、鈴木さんは業務を終えたその足で、深夜の高速道路を兵庫県姫路市に向かって走りました。契約上、楽天からの報酬は1日の配達に対してのみ支払われます。夜中の移動時間分は含まれません。物流を守るという使命感に駆られて、自分にむちを打ち続けました。

買いたたき
さらに楽天はトランプ社に対し、実際に稼働した配達車両の台数よりも、少ない台数で報酬を請求するよう強要してきました。いわゆる買いたたきです。トランプ社の損害額は272台分、800万円以上に上りました。
楽天の横暴に耐えながら配送を支えたトランプ社に対し、楽天は21年5月、突如、契約解除を通告します。告知は解除のわずか「2週間前」でした。楽天との契約上「3カ月前」までの告知がなければ、契約は自動的に6カ月更新されることになっていました。明らかな契約違反です。
数々の理不尽を目の当たりにしてきた矢作社長は今、物流業界の改革を目指して楽天とたたかっています。現場で奮闘するドライバーの権利を守りたいとの思いに突き動かされているからです。
「個人事業主の軽貨物ドライバーをちゃんと『労働者』として守る必要があります。そうしなければ楽天エクスプレスと同じように補償もなく切り捨てられるドライバーをなくすことはできません」
矢作社長は契約違反の損害分など、計8億円超を楽天に請求しました。
これに対して、楽天は、契約解除が直前になった点については契約違反を認めつつ、稼働台数の買いたたきや、2拠点奪取に関する損失への賠償を拒否しています。
矢作社長は提訴も視野に今後も交渉を続ける方針です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月18日付掲載


楽天幹部による不正の巻き添えで被った損害などをめぐり、楽天に賠償要求を突き付けました。
「お金のためだけではありません。物流業界を変えたい。だから僕は楽天とたたかいます」
「僕たちは直接契約を結んだ個人事業主のドライバーを抱えて営業。他社は2次下請け、3次下請けと間に何社もはさむので多重階層。その分、委託料は中抜きされてドライバーの収入が減る。ドライバーに安定した収入を保障することが高い配達品質につながると考える」
楽天はトランプ社に対し、実際に稼働した配達車両の台数よりも、少ない台数で報酬を請求するよう強要。いわゆる買いたたき。トランプ社の損害額は272台分、800万円以上に。
トランプ社の矢作社長。宅配業者の心意気を感じます。

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コロナ禍と資本主義 宅配の闇③ 巻き添え被害も隠ぺい

2022-03-18 07:11:35 | 働く権利・賃金・雇用問題について
コロナ禍と資本主義 宅配の闇③ 巻き添え被害も隠ぺい

突然の訪問でした。
2020年5月。埼玉県川口市の運送会社「トランプ」が運営する営業所に、楽天の「自社配送」事業「楽天エクスプレス」を統括していた幹部A氏が姿を現しました。

2拠点奪う
A氏が川口営業所の責任者に伝えたのは、川口を含む2拠点を楽天の直営にするという意向でした。すなわち「自社化」です。3カ月後の8月末をもって2拠点との業務委託契約を解除する旨が一方的に通告されます。
しかし、実際に行われたのは自社化などではなく、2拠点の業務を別会社へ委託することでした。
楽天が委託先へ支払う委託料をA氏ほか2人の幹部が過大に見積もり、その一部を自分の個人口座などへ送金させていたとの情報を、本紙は得ています。いわゆるキックバックです。
2拠点を奪取したA氏ら幹部の狙いについて、トランプ社の矢作和徳社長は「新しい委託先をキックバックの専用会社にすることだった」と指摘します。



トランプカー(トランプ社提供)

新たな委託先に選ばれたのは、東京都内に本社を構える株式会社スマートデリバリー(スマデリ社)でした。設立は20年3月末。トランプ社が契約解除を告げられるわずか1カ月ほど前です。
関係者によると、設立されたばかりのスマデリ社には事業者登録に必要な車両が1台あるのみでした。
楽天エクスプレスの関係者はトランプ社に対し、川口営業所で管理していた配達車両をスマデリ社へ有償貸与するよう要求。車に貼られたトランプ社のステッカーもはがすよう注文を付けました。
トランプ柄のステッカーは矢作社長が「親しみをもってほしい」との思いで自らデザインしたものです。
引き渡し日を翌日に控えた深夜、矢作社長はそのステッカーをスタッフと一緒に夜通しはがし続けました。作業にかかった費用は自社で負担しました。

還流認める
トランプ社は配達業務品質で楽天からトップクラスの評価を得てきたと言います。楽天が家電量販店のビックカメラと共同で配送事業を始める際にも手本とされたのがトランプ社の川口営業所でした。
品質を認めてきた拠点を切り捨ててまでスマデリ社を選んだ理由は何か―。
矢作社長に対し、楽天はその理由をいまだ説明していません。
一方、スマデリ社は本紙の取材に対し、金銭をA氏へ還流していた事実を認めました。「第三者を通して双方で解決済みです」としたうえで、「相手側には返還要求しております」などと回答。楽天から過大な委託料を支払われていたか否かについては答えませんでした。
楽天は、楽天エクスプレス事業をめぐりA氏ら幹部に大きな権限を与えていました。監理監督を怠った楽天の責任は重大です。しかし楽天は「元従業員の個人情報となりますため」などとして不正を公表していません。
関係者によると、キックバックに関与した委託先は楽天との間で不正を公表しないよう合意書を交わしているといいます。
楽天は事実をひた隠しにすることで、その巻き添えに遭ったトランプ社の被害も闇に葬ろうとしているのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月17日付掲載


トランプ社は配達業務品質で楽天からトップクラスの評価を得てきたと。楽天が家電量販店のビックカメラと共同で配送事業を始める際にも手本とされたのがトランプ社の川口営業所。
品質を認めてきた拠点を切り捨ててまでスマデリ社を選んだ理由は何か―。
本来の配達業務品質よりも、キックバックに応じてくれるか、楽天幹部との癒着を優先したとしたら由々しきこと。
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コロナ禍と資本主義 宅配の闇② 楽天が隠す幹部の不正

2022-03-17 06:57:21 | 働く権利・賃金・雇用問題について
コロナ禍と資本主義 宅配の闇② 楽天が隠す幹部の不正

楽天の「自社配送」網「楽天エクスプレス」が始まったのは2016年11月でした。
当初、東京都内などに限定していた試験運用を本格的に拡大するきっかけとなったのが17年に起きた「宅配クライシス(危機)」です。宅配最大手のヤマト運輸で長時間労働や残業代の不払いが発覚。人手不足で荷物が運べなくなるという危機に直面した物流各社は、労働条件を改善する目的で総量規制や運賃値上げに踏み切りました。

JPと提携
配送サービスの縮小を危惧した楽天は18年、物流拠点と楽天エクスプレスを拡大するため約2千億円を投資すると発表。楽天エクスプレスの人ロカバー率を17年の2%から20年の63・5%へ急拡大させました。
しかし、楽天はその目玉事業を21年5月に突然打ち切ります。
事業を引き継いだのは日本郵便(JP)です。楽天は同年3月に親会社の日本郵政と資本業務提携を結び、7月には物流の合弁会社「JP楽天ロジスティクス」を設立。楽天の荷物を宅配シェア3番手の日本郵便に丸投げする形で「自社配送」網から撤退しました。
提携発表が連日大きく報じられる中、楽天の荷物を配送していた個人事業主ドライバーのたくみさん(28)=仮名=は不安な日々を過ごしていました。車内を埋め尽くしていた荷物が日を追うごとに減少。稼働台数も減車され、出番表には休日が増えていきました。
「これじゃあ食っていけない」。そう言って去っていく仲間を、ただ見送ることしかできませんでした。
月に1度は倉庫を訪れていた楽天の関係者はぱったりと姿を見せなくなりました。楽天側からの正式な通達もないまま、わずか半月前に楽天エクスプレスの終了を知りました。
この頃楽天は、事業の終了を隠しながら、日本郵便への配送業務の移行を着々と進めていたとみられます。
なぜ目玉事業を丸ごとつぶす必要があったのか。なぜ告知が直前になったのか。楽天は理由を説明していません。
実はこの時、ある汚職事件が楽天の内部で渦巻いていました。






内密に調査
本紙は、楽天エクスプレスのトップを務めていた執行役員幹部のA氏が複数の運送会社から不正な金銭を得ていたとの情報を入手。A氏とともに事業を統括していた2人の幹部も不正に関与していました。事業が終わる数カ月前に3人は相次いで楽天を去っています。
取材によると、A氏は楽天から業務委託先に支払われる委託料を過大に見積もり、その一部を妻や自らの個人口座へ送金させていました。いわゆるキックバックです。少なくとも6社の委託先が関与し、数億円規模の金が幹部らの懐に入ったとみられています。
不正に関する内部告発を受けた楽天は21年1月、ひそかに委託先へ聞き取り調査を実施しました。それはちょうど日本郵政との提携発表を2カ月後に控えた時期でした。
「JPとの提携に水を差さないよう、楽天は内部で起きた不正を隠すために幹部ともども楽天エクスプレスをつぶしたとしか思えません」
楽天に切られた委託先の一つ、運送会社「トランプ」の矢作和徳社長(39)はこう指摘します。
本紙の取材に対して楽天はA氏を調査したことを認めました。一方、不正と楽天エクスプレス終了との因果関係については否定。「事業を取り巻く市場環境の変化等を総合的に判断し、楽天エクスプレスのサービス終了および日本郵便様との業務提携を決定しております」などとしています。
しかし、本紙の取材で幹部らの不正に巻き込まれる形で被害が広がっている実態が明らかとなってきました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月16日付掲載


配送サービスの縮小を危惧した楽天は18年、物流拠点と楽天エクスプレスを拡大するため約2千億円を投資すると発表。楽天エクスプレスの人ロカバー率を17年の2%から20年の63・5%へ急拡大。
しかし、楽天はその目玉事業を21年5月に突然打ち切り。
取材によると、A氏は楽天から業務委託先に支払われる委託料を過大に見積もり、その一部を妻や自らの個人口座へ送金。いわゆるキックバック。少なくとも6社の委託先が関与し、数億円規模の金が幹部らの懐に入ったとみられる。
不正は許されることではない。でも、それが実際に配達業務にあたっている個人事業主に被害が及ぶことは、さらに許されない。
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