韓国大統領選 新たな選択① 文政権への評価と不満
5年ぶりに政権交代となった韓国大統領選(9日投票)。最大野党で保守「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検事総長は、政権交代を訴え続け勝利しました。2017年に朴橦恵(パク・クネ)前大統領を弾劾・罷免に追い込み、「ろうそく革命」で文在寅(ムン・ジェイン)政権を誕生させた市民たちの新たな選択を追いました。
(ソウル=栗原千鶴)
「自由と民主主義を取り戻そう」「政権交代で審判を下そう」―。選挙運動最終日の8日夜、尹氏の声がソウル市庁舎前の広場に響き渡りました。
3月8日、ソウル市庁前の広場に尹氏の演説を聞きに集まった支持者(ロイター)
政権交代望む声
政権交代を望む声は選挙直前の世論調査で50%を超えました。一方で、文大統領の支持率も45%と退任を前にした大統領として最高値を記録。尹氏を支持する有権者からも、一定の評価を得ています。
ソウル在住の大学院生(27)は、前回の大統領選で文氏に投票しました。新型コロナウイルスが広がった初期に、検査と追跡を徹底したコロナ対策を評価しています。「住宅が高騰したり物価も上がったり、経済政策は失敗だったと思うが、大統領だけの問題ではない。今回は迷ったが政権を代えることで、よりいい社会になると思い尹氏に入れた」
大邸市で飲食店を営む女性(63)は「保守に入れたことしかない」と語る岩盤支持層です。それでも「文政権の北朝鮮との対話は評価できる」と語り、新政権にも外交による安全保障を期待しています。
内政軽視の指摘
しかし、ろうそく革命を支えた市民団体からは、不満も聞こえてきます。市民団体で働く女性(31)は、小政党の候補に投票しました。18年の地方選挙と20年の総選挙で、与党「共に民主党」は大きく議席を伸ばしました。女性は「国民が文政権と与党に力を与えたのに、大きな政策転換もなくチャンスを逃した」と批判します。「(14年に高校生ら304人が犠牲になった)セウォル号事件の真相究明が進まなかったことが本当に悔しい」と語りました。
慶南大極東問題研究所の趙真九(チョ・ジング)教授は、北朝鮮との対話の進展を評価しつつ「南北間題ばかりに集中し、内政とのバランスを欠いた」と分析。「住宅価格の高騰や雇用の創出ができなかったことなど経済政策への不満や、変化を求める人々の思いが政権交代につながった」と語りました。
さらに「尹氏を、(保守の)朴政権や李明博(イ・ミョンバク)政権の延長だと思ったら間違う」と指摘します。
尹氏は、朴前大統領の捜査を指揮し、文氏が抜擢(ばってき)し検事総長になりました。検察改革で反文政権に転じた人物です。
趙氏は、今後、尹氏が検察官出身者を重用する人事を進めれば、党内外で反発がおきると指摘。軍事独裁政権時代に大きな権力を持っていた検察を警戒する市民も多いとし、「今後も国民による監視が必要だ」と語りました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月12日付掲載
政権交代を望む声は選挙直前の世論調査で50%を超え。一方で、文大統領の支持率も45%と退任を前にした大統領として最高値を記録。尹氏を支持する有権者からも、一定の評価。
「国民が文政権と与党に力を与えたのに、大きな政策転換もなくチャンスを逃した」と批判。
尹氏が検察官出身者を重用する人事を進めれば、党内外で反発がおきると指摘。軍事独裁政権時代に大きな権力を持っていた検察を警戒する市民も多いとし、「今後も国民による監視が必要だ」。
保守派が政権をとっても、かつての軍事独裁はダメが世論。世代交代で民主化が根付きている韓国ですね。
5年ぶりに政権交代となった韓国大統領選(9日投票)。最大野党で保守「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検事総長は、政権交代を訴え続け勝利しました。2017年に朴橦恵(パク・クネ)前大統領を弾劾・罷免に追い込み、「ろうそく革命」で文在寅(ムン・ジェイン)政権を誕生させた市民たちの新たな選択を追いました。
(ソウル=栗原千鶴)
「自由と民主主義を取り戻そう」「政権交代で審判を下そう」―。選挙運動最終日の8日夜、尹氏の声がソウル市庁舎前の広場に響き渡りました。
3月8日、ソウル市庁前の広場に尹氏の演説を聞きに集まった支持者(ロイター)
政権交代望む声
政権交代を望む声は選挙直前の世論調査で50%を超えました。一方で、文大統領の支持率も45%と退任を前にした大統領として最高値を記録。尹氏を支持する有権者からも、一定の評価を得ています。
ソウル在住の大学院生(27)は、前回の大統領選で文氏に投票しました。新型コロナウイルスが広がった初期に、検査と追跡を徹底したコロナ対策を評価しています。「住宅が高騰したり物価も上がったり、経済政策は失敗だったと思うが、大統領だけの問題ではない。今回は迷ったが政権を代えることで、よりいい社会になると思い尹氏に入れた」
大邸市で飲食店を営む女性(63)は「保守に入れたことしかない」と語る岩盤支持層です。それでも「文政権の北朝鮮との対話は評価できる」と語り、新政権にも外交による安全保障を期待しています。
内政軽視の指摘
しかし、ろうそく革命を支えた市民団体からは、不満も聞こえてきます。市民団体で働く女性(31)は、小政党の候補に投票しました。18年の地方選挙と20年の総選挙で、与党「共に民主党」は大きく議席を伸ばしました。女性は「国民が文政権と与党に力を与えたのに、大きな政策転換もなくチャンスを逃した」と批判します。「(14年に高校生ら304人が犠牲になった)セウォル号事件の真相究明が進まなかったことが本当に悔しい」と語りました。
慶南大極東問題研究所の趙真九(チョ・ジング)教授は、北朝鮮との対話の進展を評価しつつ「南北間題ばかりに集中し、内政とのバランスを欠いた」と分析。「住宅価格の高騰や雇用の創出ができなかったことなど経済政策への不満や、変化を求める人々の思いが政権交代につながった」と語りました。
さらに「尹氏を、(保守の)朴政権や李明博(イ・ミョンバク)政権の延長だと思ったら間違う」と指摘します。
尹氏は、朴前大統領の捜査を指揮し、文氏が抜擢(ばってき)し検事総長になりました。検察改革で反文政権に転じた人物です。
趙氏は、今後、尹氏が検察官出身者を重用する人事を進めれば、党内外で反発がおきると指摘。軍事独裁政権時代に大きな権力を持っていた検察を警戒する市民も多いとし、「今後も国民による監視が必要だ」と語りました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月12日付掲載
政権交代を望む声は選挙直前の世論調査で50%を超え。一方で、文大統領の支持率も45%と退任を前にした大統領として最高値を記録。尹氏を支持する有権者からも、一定の評価。
「国民が文政権と与党に力を与えたのに、大きな政策転換もなくチャンスを逃した」と批判。
尹氏が検察官出身者を重用する人事を進めれば、党内外で反発がおきると指摘。軍事独裁政権時代に大きな権力を持っていた検察を警戒する市民も多いとし、「今後も国民による監視が必要だ」。
保守派が政権をとっても、かつての軍事独裁はダメが世論。世代交代で民主化が根付きている韓国ですね。