経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑦ 資産運用立国 高リスク投資に誘導
岸田文雄政権の成長戦略は、家計の預貯金を株式や投資信託に誘導する「貯蓄から投資」を推し進めるため、「NISA(少額投資非課税制度)の活用」を打ち出しています。
大幅に拡充された新NISAが今年1月から始まり、口座数が3月までで187万増え、総口座数は2300万を超えました。2027年末までに3400万口座まで引き上げるのが目標です。長期・積立・分散投資の重要性を普及・啓発する方針を掲げ、「金融経済教育推進機構(J―FLEC)」を8月に本格稼働させるとしています。
これらは岸田政権が22年11月に公表した「資産所得倍増プラン」に沿ったものですが、その内容は22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映しています。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。これを受けて23年秋、臨時国会での金融関連法改定で設立されたのがJ―FLECです。所管するのは、金融業の振興を掲げる金融庁です。
東京証券取引所=東京都中央区
多様化を掲げる
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明しました。改定法には、日本共産党、立憲民主党などが反対しています。
成長戦略は、投資家への「多様な投資商品の提供」を強調し、23年12月公表の「『資産運用立国実現プラン』に盛り込まれた施策等を実施する」としています。「実現プラン」は「オルタナティブ投資」を含めた「運用対象の多様化」を掲げています。成長戦略は特に公的年金について、「運用対象資産の多様化」、オルタナティブ投資の「運用目標の検討」を進める方針を示しています。
オルタナティブ投資は、債券や上場株式といった伝統的な投資以外の取引を指します。未公開株、不動産、ヘッジファンドなどがあり、総じてリスクが高いのが特徴です。これも日証協の「提言」に沿った施策で、金融業界のビジネスチャンス拡大につながります。
投機規制が急務
成長戦略には「実現プラン」で掲げた「非上場株式(未公開株)の流通促進」をさらに進める方針も盛り込まれています。取引所に上場されていない未公開株は価値評価が難しく、証券会社は一般の投資家への勧誘を禁じられています。しかし、投資信託協会は23年12月に業界ルールを変更し、一定の要件を課した上で、未公開株を一般の投資家でも購入できる投資信託に組み込めるようにしました(実施は2月から)。未公開株が組み込まれた投資信託をNISAの対象とすることも可能です。
岸田政権の下で、一般投資家への勧誘が禁止されるリスクの高い金融商品が一気に誰でも購入できる身近な投資先となりました。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめりです。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務です。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められています。(日本共産党国会議員団事務局 丸井龍平)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月26日付掲載
22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめり。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められます。
岸田文雄政権の成長戦略は、家計の預貯金を株式や投資信託に誘導する「貯蓄から投資」を推し進めるため、「NISA(少額投資非課税制度)の活用」を打ち出しています。
大幅に拡充された新NISAが今年1月から始まり、口座数が3月までで187万増え、総口座数は2300万を超えました。2027年末までに3400万口座まで引き上げるのが目標です。長期・積立・分散投資の重要性を普及・啓発する方針を掲げ、「金融経済教育推進機構(J―FLEC)」を8月に本格稼働させるとしています。
これらは岸田政権が22年11月に公表した「資産所得倍増プラン」に沿ったものですが、その内容は22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映しています。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。これを受けて23年秋、臨時国会での金融関連法改定で設立されたのがJ―FLECです。所管するのは、金融業の振興を掲げる金融庁です。
東京証券取引所=東京都中央区
多様化を掲げる
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明しました。改定法には、日本共産党、立憲民主党などが反対しています。
成長戦略は、投資家への「多様な投資商品の提供」を強調し、23年12月公表の「『資産運用立国実現プラン』に盛り込まれた施策等を実施する」としています。「実現プラン」は「オルタナティブ投資」を含めた「運用対象の多様化」を掲げています。成長戦略は特に公的年金について、「運用対象資産の多様化」、オルタナティブ投資の「運用目標の検討」を進める方針を示しています。
オルタナティブ投資は、債券や上場株式といった伝統的な投資以外の取引を指します。未公開株、不動産、ヘッジファンドなどがあり、総じてリスクが高いのが特徴です。これも日証協の「提言」に沿った施策で、金融業界のビジネスチャンス拡大につながります。
投機規制が急務
成長戦略には「実現プラン」で掲げた「非上場株式(未公開株)の流通促進」をさらに進める方針も盛り込まれています。取引所に上場されていない未公開株は価値評価が難しく、証券会社は一般の投資家への勧誘を禁じられています。しかし、投資信託協会は23年12月に業界ルールを変更し、一定の要件を課した上で、未公開株を一般の投資家でも購入できる投資信託に組み込めるようにしました(実施は2月から)。未公開株が組み込まれた投資信託をNISAの対象とすることも可能です。
岸田政権の下で、一般投資家への勧誘が禁止されるリスクの高い金融商品が一気に誰でも購入できる身近な投資先となりました。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめりです。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務です。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められています。(日本共産党国会議員団事務局 丸井龍平)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月26日付掲載
22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめり。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められます。