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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

2024-07-30 07:23:27 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

この30年間、日本の大企業は国内雇用を減らし、成長の源泉となるイノベーション(新技術開発)でも後退した結果、国内経済をけん引し、維持する能力をますます低下させています。
岸田文雄政権は「成長分野への労働・資本の移動・新陳代謝の促進」(「経済産業政策新機軸部会第2次中間整理」2023年6月27日)による打開を掲げています。これは中小企業などの再編・淘汰(とうた)を進め、技術や知的財産、専門人材、労働力を吸収し、大企業の競争力強化につなげる狙いです。

大企業へと再編
この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進するとしています。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわになっています。
例えば「大企業と中小・小規模企業・スタートアップの間の協力関係の確立」を掲げていますが、日本商工会議所が「知財侵害の抑止強化が不可欠」(「知的財産政策に関する意見」24年4月18日)と訴えるほど中小企業の特許やノウハウなどの知的財産が大企業に奪われる問題が深刻化しており、実行計画も「下請代金法の執行強化」を言わざるを得ません。
M&Aの推進をめぐっても、規制業法が存在しないもとで悪質な仲介業者が跋扈(ばっこ)してトラブルが多発。事態を放置できず、実行計画で対策を示しましたが、場当たり的で部分的な内容にすぎません。
経営難に陥った企業が金融機関などの債権者と調整しながら再建をめざす「私的整理」については、迅速な事業再生のためとして債権者の多数決で進められるようにする法改定を盛り込みました。しかし、芳野友子連合会長ですら新しい資本主義実現会議(24年3月26日)で「手続きの透明性や関係者間の公平性が確保できない」と反対。岸田政権はこうした矛盾を強権的に突破しようとしています。



「新しい資本主義実現会議」で中小企業のM&Aなどについて発言する岸田文雄首相(右から2人目)=3月26日(首相官邸のホームページから)

規制骨抜き恐れ
他方、多くの中小企業が望む価格転嫁対策や賃上げ支援については「労務費等の価格転嫁の推進」に向けて下請代金法の改正検討の記述があるものの、5月28日の自民党政務調査会の提言が「下請け」の定義そのものの撤廃を迫るなど、下請けいじめ根絶の責任を放棄し、規制を骨抜きにする恐れがあります。
また税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
一握りの成長企業への支援政策は既に破たんしています。1999年の中小企業基本法改定で市場原理主義的理念に基づいて中堅企業やベンチャー企業への重点支援に転換した結果、企業数が2021年までに150万社も減少し、社会に貧困と格差をもたらしました。4月24日の衆院経済産業委員会で笠井亮議員にこの認識を問われた斎藤健経産相は「いろいろなケースがあり得る」などと言い放ちました。
「失われた30年」への反省もなく大企業・財界や政権与党の都合で中小企業を利用し、淘汰に誘導するのが岸田政権の「新しい資本主義」です。
(日本共産党国会議員団事務局 中平智之)^(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月28日付掲載


この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進すると。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわに。
税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
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