2023年度 概算要求の焦点⑥ 社会保障 「自然増」も病床も削減へ
社会保障厚生労働省の2023年度概算要求は22年度当初比1・9%(6340億円)増の33兆2644億円で、23年4月創設の「こども家庭庁」に移す関連予算を含めると実質的に過去最大です。ただ、新型コロナウイルス禍で医療体制などの逼迫(ひっぱく)を繰り返すなか、コロナ対策の大半は額を明示していません。逆に、高齢化などで当然増える社会保障費の「自然増」分の削減議論を加速させています。
コロナ対策として、引き続き医療機関の病床確保の支援やワクチン接種の体制確保、治療薬確保、介護事業所のサービス継続支援などを並べていますが、大半は金額を示さない「事項要求」です。感染拡大の状況を踏まえて年末の予算編成までに決める見通しです。
抜本的支援こそ
発熱外来や救急、入院治療をはじめ、回復期の患者を受け入れる後方支援医療や在宅医療、一般医療の維持など、地域医療全体の強化・連携を進める抜本的支援が求められています。21年度中に次々廃止した、医療機関に支払われる診療報酬の感染防止対策向けの各種加算の復活や、支給対象・要件が厳しい新加算の緩和を求める声も相次いでいます。
深刻な人手不足の問題では、保健師の派遣・研修や女性医師の「人材バンク」、医療従事者の働き方の改善、介護ロポットの開発加速など各事業を増額しましたが、抜本的増員は示さないままです。
医療・社会保障を立て直そうと訴える集会参加者=2021年10月、東京都内
現場に分断混乱
コロナ禍を受けて21年2月から始めた看護・介護職などの「賃上げ」分を引き続き計上していますが、看護職は月1万2000円程度、介護職などは月9000円程度と、不十分すぎます。しかも、看護職の対象者は大病院に限定しているうえ、同じ職場の看護補助者や理学療法士など多くの他職種を対象に加えるかどうかは病院任せです。現場に分断と混乱を持ち込んでいると批判が殺到しています。
コロナ禍のなかでも、消費税を財源にして病床削減や医療機関の統廃合へと誘導する「病床機能再編支援事業」に固執。計12道県18区域を選定している統廃合などの「重点支援区域」のサポート事業を増額しています。
国民負担増・給付削減で安倍・菅政権から2兆円を削り込んできた、社会保障費の「自然増削減路線」にも無反省です。22年度の自然増は5600億円と見込んで、介護保険の利用者負担増などの議論を進めています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月20日付掲載
コロナ禍を受けて21年2月から始めた看護・介護職などの「賃上げ」分を引き続き計上していますが、看護職は月1万2000円程度、介護職などは月9000円程度と、不十分。
コロナ禍のなかでも、消費税を財源にして病床削減や医療機関の統廃合へと誘導する「病床機能再編支援事業」に固執。計12道県18区域を選定している統廃合などの「重点支援区域」のサポート事業を増額。
社会保障厚生労働省の2023年度概算要求は22年度当初比1・9%(6340億円)増の33兆2644億円で、23年4月創設の「こども家庭庁」に移す関連予算を含めると実質的に過去最大です。ただ、新型コロナウイルス禍で医療体制などの逼迫(ひっぱく)を繰り返すなか、コロナ対策の大半は額を明示していません。逆に、高齢化などで当然増える社会保障費の「自然増」分の削減議論を加速させています。
コロナ対策として、引き続き医療機関の病床確保の支援やワクチン接種の体制確保、治療薬確保、介護事業所のサービス継続支援などを並べていますが、大半は金額を示さない「事項要求」です。感染拡大の状況を踏まえて年末の予算編成までに決める見通しです。
抜本的支援こそ
発熱外来や救急、入院治療をはじめ、回復期の患者を受け入れる後方支援医療や在宅医療、一般医療の維持など、地域医療全体の強化・連携を進める抜本的支援が求められています。21年度中に次々廃止した、医療機関に支払われる診療報酬の感染防止対策向けの各種加算の復活や、支給対象・要件が厳しい新加算の緩和を求める声も相次いでいます。
深刻な人手不足の問題では、保健師の派遣・研修や女性医師の「人材バンク」、医療従事者の働き方の改善、介護ロポットの開発加速など各事業を増額しましたが、抜本的増員は示さないままです。
医療・社会保障を立て直そうと訴える集会参加者=2021年10月、東京都内
現場に分断混乱
コロナ禍を受けて21年2月から始めた看護・介護職などの「賃上げ」分を引き続き計上していますが、看護職は月1万2000円程度、介護職などは月9000円程度と、不十分すぎます。しかも、看護職の対象者は大病院に限定しているうえ、同じ職場の看護補助者や理学療法士など多くの他職種を対象に加えるかどうかは病院任せです。現場に分断と混乱を持ち込んでいると批判が殺到しています。
コロナ禍のなかでも、消費税を財源にして病床削減や医療機関の統廃合へと誘導する「病床機能再編支援事業」に固執。計12道県18区域を選定している統廃合などの「重点支援区域」のサポート事業を増額しています。
国民負担増・給付削減で安倍・菅政権から2兆円を削り込んできた、社会保障費の「自然増削減路線」にも無反省です。22年度の自然増は5600億円と見込んで、介護保険の利用者負担増などの議論を進めています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月20日付掲載
コロナ禍を受けて21年2月から始めた看護・介護職などの「賃上げ」分を引き続き計上していますが、看護職は月1万2000円程度、介護職などは月9000円程度と、不十分。
コロナ禍のなかでも、消費税を財源にして病床削減や医療機関の統廃合へと誘導する「病床機能再編支援事業」に固執。計12道県18区域を選定している統廃合などの「重点支援区域」のサポート事業を増額。