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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「新しい資本主義」を考える④ 「金融の災い」で国衰退

2022-09-15 06:48:54 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」を考える④ 「金融の災い」で国衰退
政治経済研究所理事 合田寛さん

岸田文雄首相が英国ロンドンの金融街シティーに学び、実現しようと考えているのは、金融市場を活性化し、日本を国際金融センターとして復活させることです。
しかし、世界の金融センターを目指してきた英国の政策は、金融産業を肥大化させた半面、製造業を衰退に追い込み、英国経済に負の効果と深刻なゆがみをもたらしました。大きすぎる金融は国を貧しくするという逆説、「金融の災い」とも言われる現象です。それは次のような形をとって表れます。
①過大な金融部門を持つ国では、金融部門が高給で人材を集め、他産業から優秀な人材や資源を奪う結果、製造業など他産業を枯渇させる。
②過剰な金融部門を持つ国では、実体経済を上回る余剰資金は投機活動や企業買収などのマネーゲームに費やされ、長期的な視野に立った経済活動が行われなくなる。
③過大な金融資産の蓄積は、所得と富の不平等を増幅し、格差をますます拡大する。
④過剰な金融資産が蓄積する経済は、金融の膨張とその破裂を繰り返し、グローバルな金融危機と経済破綻の原因となる。
⑤過大な金融部門を持つ政府は、市民を犠牲にして金融資本を優遇する政策をとる。資本は移動しやすく、優遇措置を与えなければ、他の金融センターに逃避するからである。
要するに、金融の発展は実体経済を支える限り経済に好ましい影響を与えますが、ある限度を超えると甚大な社会コストをもたらし、成長を阻害するということです。



テムズ川越しに見える英国ロンドンの金融街シティー(ロイター)

GDP1年分
どの程度の社会的コストが発生したかの研究もあります。マサチューセッツ大学のジェラルド・エプスタイン教授らは、①金融セクターが得た独占利潤②資源の誤った配分によるビジネスや家計からの収奪③金融機関救済など金融危機がもたらしたコスト―の三つをあげ、過剰な金融によるコストを試算しています。
それによると、米国の金融システムは1990~2023年の間に、米経済に13兆~23兆ドルもの余分なコストを課しています。これは米国の国内総生産(GDP)のほぼ1年分に相当します。
また英国の社会的コストを同様の手法で推計すると、1995~2015年に過大な金融がもたらしたコストは4・5兆ポンドで、これは英国の平均GDPの約2・5年分に相当する大きさです。

底辺への競争
岸田首相は、金融市場の活性化を通じて、シティーと並ぶ国際金融センターの地位に日本を押し上げることを目指しています。日本政府が念頭に置くのは、シンガポールや香港に代わってアジアにおける国際金融のハブになることです。
しかしシンガポールや香港は低税率と緩い金融規制で知られるタックスヘイブン(租税・規制回避地)です。これらの国と競って日本が世界の資金を呼び込むためには、日本も類似の税制・金融措置をとることが求められます。現に金融庁は財務省主税局に対して、法人税・所得税・相続税の軽減措置を求め、海外の資産管理会社や金融の専門家に対する優遇措置を強めようとしています。
こうした施策は日本をオフショア(無規制・非課税の金融地域)化の道に導き、ダーティーマネー(違法な活動で得た汚い資金)の流入や腐敗を招く原因ともなります。
国際金融センターをめぐる競争は、オフショア性を競う競争です。規制と税の国際的な切り下げ競争、「底辺への競争」を招きます。犠牲となるのは、公共支出に必要な税収を失い、「金融の災い」を被る一般市民です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月9日付掲載


要するに、金融の発展は実体経済を支える限り経済に好ましい影響を与えますが、ある限度を超えると甚大な社会コストをもたらし、成長を阻害する。
国際金融センターをめぐる競争は、オフショア性を競う競争です。規制と税の国際的な切り下げ競争、「底辺への競争」を招きます。犠牲となるのは、公共支出に必要な税収を失い、「金融の災い」を被る一般市民。
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