安倍政権 金融緩和の責任 日銀だけに負わせる身勝手
麻生財務相「こだわりすぎるとおかしくなる」
日銀の大規模な金融緩和政策に、政権ナンバー2の麻生太郎副総理兼財務相が「こだわりすぎるとおかしくなる」(15日)と言い出しました。弊害が深刻化していることを受けた発言です。もとをただせば、安倍晋三政権が日銀に押し付けた政策です。政府自身の反省はなく、責めを日銀だけに負わせる身勝手です。(山田俊英)
「異次元」と呼ばれる大規模緩和(量的・質的金融緩和)は「2年で年2%の物価上昇」を実現して「経済の好循環」につなげるという日銀の政策です。アベノミクス(安倍政権の経済政策)の「第1の柱」です。
圧力かけ共同声明
大もとは2013年1月に政府と日銀が結んだ共同声明です。日銀に共同声明を要求したのは就任後間もない安倍首相でした。自民党はそれ以前から日銀法改定すら持ち出して、日銀に大規模な金融緩和を迫っていました。当時の日銀総裁、白川方明氏は「『2年、2%』を要求するすさまじいまでの圧力」を受けたと退任後、自著で明らかにしています。
それから6年。「好循環」どころか、消費の落ち込みで景気は低迷しています。輸出と生産の弱まりで政府も景気判断を引き下げざるをえなくなっています。
景気が回復しないのは、安倍政権が大企業のもうけを優先する一方、消費税増税と社会保障の連続切り捨てで国民の負担を増やし、労働法制の改悪によって低賃金の非正規雇用を増やしてきたからです。

日銀本店=東京都中央区
銀行の本業が悪化
金融業界では異次元緩和の弊害が深刻です。貸し出しの利ざやで稼ぐ銀行の本業は超低金利によって急速に悪化しています。18年4~12月期決算では上場する地方銀行と第二地銀79行中、3行が赤字に転落しました。全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は14日の記者会見で、「物価目標は2%という絶対値にこだわりすぎるべきではない」と日銀を批判しました。
群馬大学名誉教授の山田博文さんは「この6年、預貸金利ざやが半減し、全国銀行の資金利益は約1兆円減っています。政府が自分で掲げた政策に反省なく『こだわりすぎ』と言うのは無責任ですが、銀行業界の状態を政府も無視できなくなっています」と言います。
もうけ口を失った銀行は証券投資に踏み込んでいます。
「保有する債券や株の価格が下落するとかなりの含み損を抱えます。金融庁は3月から新しい規制を施行します。地域銀行については金利リスクが自己資本の20%を超えると指導に入るということです。実際には4割以上の金融機関が30%を上回っているという状況があります」と山田さんは指摘します。
日銀にもリスクが
日銀もかつてないリスクを抱え込んでいます。日銀が保有する国債は478兆円。国の借金を最も多く引き受けているのが中央銀行という異常事態です。
日銀の黒田東彦総裁は、2%の物価目標実現まで異次元緩和を続ける考えを繰り返し表明しますが、日銀が大量の国債を買い占めたため、市場で国債が枯渇しつつあります。
国債購入を減らさざるをえないもとで追加緩和の手段として取り沙汰されているのが、株式で構成する投資信託、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い増しです。しかし、日銀の試算では日経平均株価が1万8000円程度を下回ると日銀が保有するETFの時価が簿価を下回ります。株価の下落でETFが簿価割れし、日銀が損失を出すことは十分ありうる危険です。
日銀、商業銀行をはじめ日本の金融は異次元のリスクに直面しています。政府と日銀は異次元緩和の破綻を認め、「出口」に向けて政策を転換すべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月23日付掲載
金融緩和で、株式や債券にお金が廻るように超低金利。
富裕層はそれで大もうけをしたけど、ちっとも賃金には回ってこず。物価も上がらず。景気は低迷。
銀行も、本業の利ザヤで儲からないので株や債券の比率が高くなり、リスクを抱える。
異次元の金融緩和からの出口を早く。
麻生財務相「こだわりすぎるとおかしくなる」
日銀の大規模な金融緩和政策に、政権ナンバー2の麻生太郎副総理兼財務相が「こだわりすぎるとおかしくなる」(15日)と言い出しました。弊害が深刻化していることを受けた発言です。もとをただせば、安倍晋三政権が日銀に押し付けた政策です。政府自身の反省はなく、責めを日銀だけに負わせる身勝手です。(山田俊英)
「異次元」と呼ばれる大規模緩和(量的・質的金融緩和)は「2年で年2%の物価上昇」を実現して「経済の好循環」につなげるという日銀の政策です。アベノミクス(安倍政権の経済政策)の「第1の柱」です。
圧力かけ共同声明
大もとは2013年1月に政府と日銀が結んだ共同声明です。日銀に共同声明を要求したのは就任後間もない安倍首相でした。自民党はそれ以前から日銀法改定すら持ち出して、日銀に大規模な金融緩和を迫っていました。当時の日銀総裁、白川方明氏は「『2年、2%』を要求するすさまじいまでの圧力」を受けたと退任後、自著で明らかにしています。
それから6年。「好循環」どころか、消費の落ち込みで景気は低迷しています。輸出と生産の弱まりで政府も景気判断を引き下げざるをえなくなっています。
景気が回復しないのは、安倍政権が大企業のもうけを優先する一方、消費税増税と社会保障の連続切り捨てで国民の負担を増やし、労働法制の改悪によって低賃金の非正規雇用を増やしてきたからです。

日銀本店=東京都中央区
銀行の本業が悪化
金融業界では異次元緩和の弊害が深刻です。貸し出しの利ざやで稼ぐ銀行の本業は超低金利によって急速に悪化しています。18年4~12月期決算では上場する地方銀行と第二地銀79行中、3行が赤字に転落しました。全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は14日の記者会見で、「物価目標は2%という絶対値にこだわりすぎるべきではない」と日銀を批判しました。
群馬大学名誉教授の山田博文さんは「この6年、預貸金利ざやが半減し、全国銀行の資金利益は約1兆円減っています。政府が自分で掲げた政策に反省なく『こだわりすぎ』と言うのは無責任ですが、銀行業界の状態を政府も無視できなくなっています」と言います。
もうけ口を失った銀行は証券投資に踏み込んでいます。
「保有する債券や株の価格が下落するとかなりの含み損を抱えます。金融庁は3月から新しい規制を施行します。地域銀行については金利リスクが自己資本の20%を超えると指導に入るということです。実際には4割以上の金融機関が30%を上回っているという状況があります」と山田さんは指摘します。
日銀にもリスクが
日銀もかつてないリスクを抱え込んでいます。日銀が保有する国債は478兆円。国の借金を最も多く引き受けているのが中央銀行という異常事態です。
日銀の黒田東彦総裁は、2%の物価目標実現まで異次元緩和を続ける考えを繰り返し表明しますが、日銀が大量の国債を買い占めたため、市場で国債が枯渇しつつあります。
国債購入を減らさざるをえないもとで追加緩和の手段として取り沙汰されているのが、株式で構成する投資信託、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い増しです。しかし、日銀の試算では日経平均株価が1万8000円程度を下回ると日銀が保有するETFの時価が簿価を下回ります。株価の下落でETFが簿価割れし、日銀が損失を出すことは十分ありうる危険です。
日銀、商業銀行をはじめ日本の金融は異次元のリスクに直面しています。政府と日銀は異次元緩和の破綻を認め、「出口」に向けて政策を転換すべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月23日付掲載
金融緩和で、株式や債券にお金が廻るように超低金利。
富裕層はそれで大もうけをしたけど、ちっとも賃金には回ってこず。物価も上がらず。景気は低迷。
銀行も、本業の利ザヤで儲からないので株や債券の比率が高くなり、リスクを抱える。
異次元の金融緩和からの出口を早く。