消費税に頼らない共産党の財源案② 証券課税強化で1.2兆円
所得1億円を境に高額所得者ほど所得税の負担率は低くなっています。本来、所得税は累進課税のため高額所得者ほど負担率は高くなるはずなのに、そうならないのは高額所得者の所得の多くを株式譲渡益や配当が占めているからです(グラフ)。
欧米より低税率
会社勤めなどをして得られる給与所得にかかる所得税は、所得額に応じ5~45%です。住民税は10%が標準税率です。しかし、上場株式の譲渡益や大口株主でない場合の株式配当からの所得については、他の所得とは分離して課税されます。税率は所得税が15%、住民税が5%にすぎません。
財務省のホームページでは株式配当課税と譲渡所得の国際比較をしています。配当については総合課税方式で他の所得と合わせて計算する場合がほとんどです。高額の配当に対しては30~40%程度の税率が適用されることになっています。
株式譲渡所得についてはイギリス以外は配当と同じです。アメリカやフランスでは株式の保有期間によって課税に差をつけ、短期の売買でもうけた場合には重い税が課せられるようにしています。
欧米に比べ日本の富裕層に対する証券税制の税率は低くなっています。ここにメスを入れる必要があります。
日本共産党は配当については原則として総合課税にすることを提案しています。ただし、配当自体が少額である場合や非課税口座にある株式の配当は申告不要です。配当自体が多額の場合や配当以外に高額の所得がある場合には、大口株主でなくても配当の申告を義務付けます。この措置で国と地方を合わせて少なくとも1兆円以上の財源になります。
株式譲渡所得については当面は分離課税のまま高額部分には欧米並みに30%の税率を適用することを提案しています。0・2兆円程度の増収が見込まれます。
富裕層への証券課税については、経済同友会も2016年に「株式譲渡所得および配当所得課税の税率を5%程度引き上げる」と提言しています。また、OECD(経済協力開発機構)も17年の対日経済審査報告書で「キャピタルゲイン(株などの売却益)、配当、利子所得の税率を25%に引き上げることで、税収を増加させる」と提案しています。
東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区
増税せず5兆円
前回紹介した大企業優遇税制の縮小・廃止による4兆円と、今回の証券課税の強化による1・2兆円を優先的に行うことが重要です。二つの措置による税収増は5・2兆円で、安倍晋三政権が10月に強行を狙う10%への消費税率引き上げによる税収増に見合う金額になります。消費税増税は不要です。しかも、現行の所得税や法人税の枠組みの中で、優遇措置を廃止・縮小するだけで可能です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月6日付掲載
株式譲渡益や配当でいくら儲けても、分離課税で税率は20%。庶民のささやかな投資はのぞいて、総合課税にすることで1兆円の財源確保。消費税増税せずとも大丈夫。
所得1億円を境に高額所得者ほど所得税の負担率は低くなっています。本来、所得税は累進課税のため高額所得者ほど負担率は高くなるはずなのに、そうならないのは高額所得者の所得の多くを株式譲渡益や配当が占めているからです(グラフ)。
欧米より低税率
会社勤めなどをして得られる給与所得にかかる所得税は、所得額に応じ5~45%です。住民税は10%が標準税率です。しかし、上場株式の譲渡益や大口株主でない場合の株式配当からの所得については、他の所得とは分離して課税されます。税率は所得税が15%、住民税が5%にすぎません。
財務省のホームページでは株式配当課税と譲渡所得の国際比較をしています。配当については総合課税方式で他の所得と合わせて計算する場合がほとんどです。高額の配当に対しては30~40%程度の税率が適用されることになっています。
株式譲渡所得についてはイギリス以外は配当と同じです。アメリカやフランスでは株式の保有期間によって課税に差をつけ、短期の売買でもうけた場合には重い税が課せられるようにしています。
欧米に比べ日本の富裕層に対する証券税制の税率は低くなっています。ここにメスを入れる必要があります。
日本共産党は配当については原則として総合課税にすることを提案しています。ただし、配当自体が少額である場合や非課税口座にある株式の配当は申告不要です。配当自体が多額の場合や配当以外に高額の所得がある場合には、大口株主でなくても配当の申告を義務付けます。この措置で国と地方を合わせて少なくとも1兆円以上の財源になります。
株式譲渡所得については当面は分離課税のまま高額部分には欧米並みに30%の税率を適用することを提案しています。0・2兆円程度の増収が見込まれます。
富裕層への証券課税については、経済同友会も2016年に「株式譲渡所得および配当所得課税の税率を5%程度引き上げる」と提言しています。また、OECD(経済協力開発機構)も17年の対日経済審査報告書で「キャピタルゲイン(株などの売却益)、配当、利子所得の税率を25%に引き上げることで、税収を増加させる」と提案しています。
東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区
増税せず5兆円
前回紹介した大企業優遇税制の縮小・廃止による4兆円と、今回の証券課税の強化による1・2兆円を優先的に行うことが重要です。二つの措置による税収増は5・2兆円で、安倍晋三政権が10月に強行を狙う10%への消費税率引き上げによる税収増に見合う金額になります。消費税増税は不要です。しかも、現行の所得税や法人税の枠組みの中で、優遇措置を廃止・縮小するだけで可能です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月6日付掲載
株式譲渡益や配当でいくら儲けても、分離課税で税率は20%。庶民のささやかな投資はのぞいて、総合課税にすることで1兆円の財源確保。消費税増税せずとも大丈夫。