臨時国会48日 共産党と共闘の力① 改憲シフト 押し返す
国会を愚弄する安倍政権の暴走が今回の臨時国会ほど強まったことはありません。しかし、それは安倍政権の強さの表れではなく弱さの表れです。
その象徴が安倍改憲をめぐる暴走を食い止め、衆参憲法審査会での自民党改憲4項目の提示断念に追い込んだことです。その力はどこにあったのか―。
異常
「(改憲案提示は)総理が明言してきたことだ。臨時国会で頭出しすらできなかったのは痛い」―。安倍改憲への痛撃となった事態に、自民党議員からはこんな声も漏れます。
11月21日に与野党合意を抜きに審査会の幹事懇談会を強行開催した自民党。野党欠席で「打ち合わせ会」に変更したのにテレビ中継させる異常な挙に出ました。野党の強い抗議の中、翌週29日には憲法審査会を会長職権で強行開催し、安倍晋三首相側近の新藤義孝元総務相が筆頭幹事に正式に就任する一方、野党との「協議重視派」とされる中谷元、船田元・両幹事は退任しました。
安倍首相自ら“今国会で自民党改憲案を提示する”と呼号し、下村博文元文科相を党改憲推進本部長につけるなど側近で固めた“万全”の「改憲シフト」でのぞんだ今国会。にもかかわらず世論と野党の結束に阻まれ審査会開催さえできない状況に業を煮やし強行突破を図ろうとしたのでした。
日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社民党、自由党、無所属の会の5野党1会派が慣例を破る与野党合意なしの強行開催に激しく抗議しました。
しかし新藤氏は29日の審査会後の会見で自衛隊の9条明記を含む改憲4項目提示について「最後まで可能性をあきらめずに追求していきたい」と明言。野党側に6日(定例日)の審査会開催を執拗に働きかけてきました。
5日には改憲右翼団体・日本会議系の集会で、日・本会議国会議員懇談会会長の古屋圭司衆院議員が「何とかこの国会のうちに(改憲論議の)扉をこじ開けたい」と気炎を上げました。

衆院憲法審査会の強行開催に抗議し、記者会見する野党国対委員長と憲法審査会野党委員=11月29日、国会内
反撃
こうした動きに対し、日本共産党など野党は5日朝に対応を協議しコ方的な開催、改憲4項目提示を許さない」と確認。同日、山花郁夫筆頭幹事(立民)が新藤氏と会談し、5野党1会派の意思として強行中止を求めました。新藤氏は「野党のみなさんの一致した意思として要請を重く受け止める」と述べざるを得なかったのです。
自民党議員の一人は「野党が出てこない中で公明党が強行開催に乗れなかった」「憲法だけは強行はできない。国民投票で失敗する」と述べました。
どの世論調査でも安倍政権下での改憲に反対の声が多数を占める中、野党の結束と世論の前に改憲案提示断念に追い込まれたのです。
国会内外のたたかいが結合
「先週は力及ばずで、申し訳なかった」
5日の会談で衆院憲法審の新藤義孝筆頭幹事(自民)は山花郁夫野党筆頭幹事(立民)にこう述べました。11月29日の審査会強行開催を「謝罪」する格好です。しかし自ら強行を主導しておいて「申し訳ない」といっても通りません。

安倍政権の改憲発議は許さないと国会に向けてコールする人たち=11月3日、国会正門前
破綻の光景
場所は衆院議員会館の新藤事務所。テレビカメラまで入れて撮影させる中でのことです。詰め掛けたメディア関係者からは「野党と話し合っている姿を見せるための演出だ」とささやきがもれます。強権路線の破綻を示す光景の一つです。
10日、会期末の請願処理などのために開かれた衆院憲法審査会で森英介会長は「円滑なる運営ができなかったことはまことに残念であり遺憾」と異例の表明。新藤筆頭幹事は審査会終了後、記者団に「幹事の選任にあたっては野党の出席がいただけないままで行われたことについては私からもおわび申しあげた」と強権運営に対し「反省」を言わざるを得ませんでした。党の改憲推進本部長に首相の盟友・下村博文元文科相を抜てきするなどの「改憲シフト」は完全に裏目に出て失敗しました。
自民党参院議員の一人が「外国人受け入れの入管法審議が苦しい。6、7日の採決に向かうのに、そのうえ憲法となるともたない」(5日)と語ったように、入管法改定問題での野党の結束した追及で総崩れに追い込んだことも改憲案提示断念の力でした。
来年7月に選挙を控える参院でも、「衆院での動きに反発する野党との溝を深めるのを避ける」として自民党は6日の審査会開催を見送りました。
自民党の閣僚経験者は「改憲発議権は国会のもので首相が国会で話すのはおかしい。自分に近い人間を使って国会の現場を動かすやり方は必ず逆噴射する」と、強権主義の危うさを指摘しました。
強権主義破綻の発端は、首相が所信表明で国会への改憲論議促進を呼号したことです。もともと今年中の改憲発議を目指してきた安倍首相。通常国会ではデータ捏造(ねつぞう)・公文書改ざん問題などで紛糾し憲法審査会はまったく開けず終わりました。追い詰められた安倍首相は自ら主導して強権突破を図ろうとし、それがさらに激しい反発を呼び破綻を深めているのです。
日本共産党の志位和夫委員長は、国会冒頭(10月24日)の議員団総会で、自衛隊幹部会同での改憲呼びかけなど常軌を逸した安倍首相の暴走を指摘し、「中身以前に、やり方が憲法違反です。この点を徹底的に追及し、改憲策動をいわば水際で撃退する」と宣言。臨時国会で憲法審査会を動かすことに反対すると述べ、野党共闘と同時に広範な国民運動と連帯してたたかう姿勢を表明しました。自民党による改憲案の国会提示阻止は、国会内外の「9条守れ」のたたかいの結合による大きな成果です。
改憲へ執念
一方、安倍首相は国会閉会に当たっての記者会見(10日)で、改憲案提示ができなかったことへの受けとめを聞かれたことにはまったく答えず、2020年新憲法施行の意思について「今もその気持ちに変わりはない」と明言。飽くなき改憲への執念をむき出しにしました。自民党の下村改憲本部長や萩生田光一党幹事長代行も来年の通常国会での改憲案提示を明言しており、安倍改憲との緊迫したせめぎあいは続きます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年12月12日付掲載
臨時国会でなんとしても自民改憲案を提出するぞとの肝いりの体制で挑んだものの…。
国民世論と野党の共闘で断念に追い込む。引き続き、たたかいは続きます。
国会を愚弄する安倍政権の暴走が今回の臨時国会ほど強まったことはありません。しかし、それは安倍政権の強さの表れではなく弱さの表れです。
その象徴が安倍改憲をめぐる暴走を食い止め、衆参憲法審査会での自民党改憲4項目の提示断念に追い込んだことです。その力はどこにあったのか―。
異常
「(改憲案提示は)総理が明言してきたことだ。臨時国会で頭出しすらできなかったのは痛い」―。安倍改憲への痛撃となった事態に、自民党議員からはこんな声も漏れます。
11月21日に与野党合意を抜きに審査会の幹事懇談会を強行開催した自民党。野党欠席で「打ち合わせ会」に変更したのにテレビ中継させる異常な挙に出ました。野党の強い抗議の中、翌週29日には憲法審査会を会長職権で強行開催し、安倍晋三首相側近の新藤義孝元総務相が筆頭幹事に正式に就任する一方、野党との「協議重視派」とされる中谷元、船田元・両幹事は退任しました。
安倍首相自ら“今国会で自民党改憲案を提示する”と呼号し、下村博文元文科相を党改憲推進本部長につけるなど側近で固めた“万全”の「改憲シフト」でのぞんだ今国会。にもかかわらず世論と野党の結束に阻まれ審査会開催さえできない状況に業を煮やし強行突破を図ろうとしたのでした。
日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社民党、自由党、無所属の会の5野党1会派が慣例を破る与野党合意なしの強行開催に激しく抗議しました。
しかし新藤氏は29日の審査会後の会見で自衛隊の9条明記を含む改憲4項目提示について「最後まで可能性をあきらめずに追求していきたい」と明言。野党側に6日(定例日)の審査会開催を執拗に働きかけてきました。
5日には改憲右翼団体・日本会議系の集会で、日・本会議国会議員懇談会会長の古屋圭司衆院議員が「何とかこの国会のうちに(改憲論議の)扉をこじ開けたい」と気炎を上げました。

衆院憲法審査会の強行開催に抗議し、記者会見する野党国対委員長と憲法審査会野党委員=11月29日、国会内
反撃
こうした動きに対し、日本共産党など野党は5日朝に対応を協議しコ方的な開催、改憲4項目提示を許さない」と確認。同日、山花郁夫筆頭幹事(立民)が新藤氏と会談し、5野党1会派の意思として強行中止を求めました。新藤氏は「野党のみなさんの一致した意思として要請を重く受け止める」と述べざるを得なかったのです。
自民党議員の一人は「野党が出てこない中で公明党が強行開催に乗れなかった」「憲法だけは強行はできない。国民投票で失敗する」と述べました。
どの世論調査でも安倍政権下での改憲に反対の声が多数を占める中、野党の結束と世論の前に改憲案提示断念に追い込まれたのです。
国会内外のたたかいが結合
「先週は力及ばずで、申し訳なかった」
5日の会談で衆院憲法審の新藤義孝筆頭幹事(自民)は山花郁夫野党筆頭幹事(立民)にこう述べました。11月29日の審査会強行開催を「謝罪」する格好です。しかし自ら強行を主導しておいて「申し訳ない」といっても通りません。

安倍政権の改憲発議は許さないと国会に向けてコールする人たち=11月3日、国会正門前
破綻の光景
場所は衆院議員会館の新藤事務所。テレビカメラまで入れて撮影させる中でのことです。詰め掛けたメディア関係者からは「野党と話し合っている姿を見せるための演出だ」とささやきがもれます。強権路線の破綻を示す光景の一つです。
10日、会期末の請願処理などのために開かれた衆院憲法審査会で森英介会長は「円滑なる運営ができなかったことはまことに残念であり遺憾」と異例の表明。新藤筆頭幹事は審査会終了後、記者団に「幹事の選任にあたっては野党の出席がいただけないままで行われたことについては私からもおわび申しあげた」と強権運営に対し「反省」を言わざるを得ませんでした。党の改憲推進本部長に首相の盟友・下村博文元文科相を抜てきするなどの「改憲シフト」は完全に裏目に出て失敗しました。
自民党参院議員の一人が「外国人受け入れの入管法審議が苦しい。6、7日の採決に向かうのに、そのうえ憲法となるともたない」(5日)と語ったように、入管法改定問題での野党の結束した追及で総崩れに追い込んだことも改憲案提示断念の力でした。
来年7月に選挙を控える参院でも、「衆院での動きに反発する野党との溝を深めるのを避ける」として自民党は6日の審査会開催を見送りました。
自民党の閣僚経験者は「改憲発議権は国会のもので首相が国会で話すのはおかしい。自分に近い人間を使って国会の現場を動かすやり方は必ず逆噴射する」と、強権主義の危うさを指摘しました。
強権主義破綻の発端は、首相が所信表明で国会への改憲論議促進を呼号したことです。もともと今年中の改憲発議を目指してきた安倍首相。通常国会ではデータ捏造(ねつぞう)・公文書改ざん問題などで紛糾し憲法審査会はまったく開けず終わりました。追い詰められた安倍首相は自ら主導して強権突破を図ろうとし、それがさらに激しい反発を呼び破綻を深めているのです。
日本共産党の志位和夫委員長は、国会冒頭(10月24日)の議員団総会で、自衛隊幹部会同での改憲呼びかけなど常軌を逸した安倍首相の暴走を指摘し、「中身以前に、やり方が憲法違反です。この点を徹底的に追及し、改憲策動をいわば水際で撃退する」と宣言。臨時国会で憲法審査会を動かすことに反対すると述べ、野党共闘と同時に広範な国民運動と連帯してたたかう姿勢を表明しました。自民党による改憲案の国会提示阻止は、国会内外の「9条守れ」のたたかいの結合による大きな成果です。
改憲へ執念
一方、安倍首相は国会閉会に当たっての記者会見(10日)で、改憲案提示ができなかったことへの受けとめを聞かれたことにはまったく答えず、2020年新憲法施行の意思について「今もその気持ちに変わりはない」と明言。飽くなき改憲への執念をむき出しにしました。自民党の下村改憲本部長や萩生田光一党幹事長代行も来年の通常国会での改憲案提示を明言しており、安倍改憲との緊迫したせめぎあいは続きます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年12月12日付掲載
臨時国会でなんとしても自民改憲案を提出するぞとの肝いりの体制で挑んだものの…。
国民世論と野党の共闘で断念に追い込む。引き続き、たたかいは続きます。