きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿⑤ 所有せず契約で支配する

2017-06-23 15:11:28 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿⑤ 所有せず契約で支配する

ファーストリテイリング(ファ社)の経営方式は多国籍企業の最新の形態です。
「特徴は生産に関わりながら生産手段を所有しないことです」
多国籍企業を研究する明海大学の宮崎礼二准教授は指摘します。
ファ社は自社の経営方式を「SPA(製造小売)」と呼びます。
SPAの起源は1980年代です。米国の衣料品小売大手ギャップが発表した新たな経営モデルの頭文字を並べた造語だといわれます。小売業者が商品の開発・製造に踏み込み、自社ブランドの商品を自社の店舗で販売する方式を意味します。



排水が床一面を覆うユニクロの下請け工場の作業現場(香港のNGO、SACOM提供)

外部に責任転嫁
柳井正ファ社会長兼社長はこの方式を、香港企業ジョルダーノの創業者から学んだと自著に書いています。
ジョルダーノはアジア最大級の国際ブランド。創業者はジミー・ライ氏です。70年代に普段着の生産から出発し、40力国に2400店舗を展開する巨大企業に成長させました。
そのライ氏が80年代後半、柳井氏に教えたのが欧米企業の経営方式でした。
ライ氏は「アメリカの衣料品専門店チェーン『リミテッド』のセーターの生産も請け負っていた」(柳井氏『一勝九敗』)のです。
当時、自国での製造を捨てた欧米企業が「香港や東南アジア一円」の工場を利用し始めていました。「欧米のバイヤー(買い手)がやってきて、商品を企画・発注する。輸出が増えていく。こんな構造になっていた」(同)
主に先進国の消費者に衣料品を売る先進国の小売業者が、アジアの工場に自社商品の製造を委託して買い取る―。これがSPA方式でした。製造まで管理するといっても、肝心の工場を所有するのは海外の他社なのです。
「以前は所有が支配力の源泉でした。現代の多国籍企業は契約で支配します」と宮崎氏は分析します。大量の商品を買い取る契約を結ぶことで、海外の製造業者を自社に依存させるということです。
工場を所有すると、企業にとっては費用とリスクが生じます。巨額の費用を投じて工場を建設しても、流行がすたれて稼働率が下がるかもしれません。同じ工場で製造を続ければ、賃金が上がっていくかもしれません。
「多国籍企業は海外に生産を外注し、こうしたリスクを回避します。労働者を直接雇わないので雇用関係もなくなります。費用とリスクと責任は外部に転嫁しながら、商標やデザインや販売網を支配して、独占的利益を確保するのです」

ねらいは低賃金
現代の多国籍企業にはもう一つ特徴があります。現地生産・現地販売を原則としないことです。「最適地」を拠点にし、他国に輸出します。「70年代後半から80年代にかけて最適地生産が急増した」と宮崎氏は話します。
「きっかけは東アジアで新興国が発展したことです。4匹の竜と呼ばれた韓国、台湾、香港、シンガポールです。その後、中国が一大製造拠点になりました。欧米資本とともに日本資本も入り、これらの国を拠点にして第三国への輸出展開を始めました。新興国の輸出主導型経済と結び付いた生産です」
最大のねらいは低賃金労働力の利用でした。柳井氏はいいます。
「人件費が高い現在の日本では、繊維産業、とくに縫製のような労働集約的な産業はもうやっていけない」
「労働集約的な産業が一番評価される場所・国に行ってやらないと成功しない」(同)
人件費の最も低い場所を選ぶ―。多国籍企業のこの行動原理は雇用と地域社会に深刻な影響を及ぼします。賃金が上がれば、いまの拠点も「一番評価される場所」ではなくなるかもしれないのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月20日付掲載


資本家と言えば生産手段を所有していて、自らの労働力しかもたない労働者を雇用して、剰余価値を稼ぐというものだった。
今は、生産手段すら持たないで、契約で支配とは様変わりです。
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グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿④ “最強”企業でも人権侵害

2017-06-23 13:45:07 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿④ “最強”企業でも人権侵害

「ファーストリテイリングが誇る最強のパートナーシップ」
ユニクロの親会社ファーストリテイリング(ファ社)がこう評価する海外工場があります(2013年「CSRリポート」)。
「中国を代表するアパレル生産企業、チェンフェングループ」(チェ社、同リポート)です。八つの工場に従業員8000人を抱え、年4000万着を生産する巨大企業だといいます。チェ社の労働環境をファ社は絶賛しています。
「チェンフェングループは、従業員の労働環境にも最大限の配慮をしています」(同)



ユニクロの下請け工場で事故防止装置もつけず高温のタンクに染料を入れる労働者(SACOM提供)

偽りの給与明細
香港のNGO「SACOM」が15年3月に行った潜入調査の対象の一つが、チェ社の工場でした。そこでもやはり、人権侵害は起きていました。
基本給が極めて低いため、労働者は長時間の残業をしなければ生活できない状況でした。時間外労働は過労死ラインの月80時間に達し、中国の労働法に違反していました。
賃金は出来高払いで、残業をしても割増賃金は支払われませんでした。ところが、労働者は時間払いで計算された偽りの給与明細に署名させられていました。「給与明細は顧客(国際ブランド)の要求を満たすためだけに作成されている」と労働者は証言しました。
法律に基づいた社会保険料の支払いも行われていませんでした。
ファ社自身が称賛する工場のこうした実態は、劣悪な労働条件がファ社の下請け工場全体にまん延していることを示すものです。SACOMは報告書で強調しています。
「ファーストリテイリングの下請け工場の労働基準には失望させられた。それは国際労働基準に反するだけでなく、地域の労働法にすら違反している」
SACOMで衣料品産業を担当するキキ・ユェンさんは労働者の健康を心配します。
「長時間労働は労働者を孤立させ、病気がちにします。衣料品産業で働く人の多くは女性です。彼女たちは子どもと家族の世話もしなければなりません。しかし長時間労働のせいで家族と過ごす時間を十分にとれません。このことが多大なストレスになっています」
社会保険料の不払いは深刻な不安を呼び起こすといいます。
「ユニクロの下請け工場は社会保険料を全く払わないか、不十分にしか払いません。労働者は年金受給の要件を満たすことができません。このため法律上の退職年齢を過ぎても働き続けなければ生活できません」

業界全体の課題
ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は15年11月、ファ社に対して質問と要請を行いました。とりわけ生活に見合う賃金(生活賃金)の保障を求めました。ファ社は16年1月、生活賃金の定義は「複雑な課題」なので社内プロジェクトで精査している、と答えました。
HRNの伊藤和子事務局長はいいます。
「ファーストリテイリング社が事実関係を認め、抜き打ち監査などの対策を打ち出したことは評価できます。しかし残業時間だけ減らし、賃金が低いままでは労働者は暮らせません。低賃金の根本原因は国際ブランドの低い発注額(商品買い取り価格)です。下請け工場が賃金を改善するためには、発注額の見直しが不可欠です」
本紙はファ社に対し、人権NGOの提起をどのように受けとめるか尋ねました。ファ社は公正労働協会(FLA)の基準に即して労働環境の改善に取り組んでいると回答しました。F.LAは企業の委託を受けて工場の人権状況や労働環境を監査する国際NGOです。
賃金についてもFLAの「公正な給与戦略」に基づいて取り組んでいると説明しました。「業界全体の複雑な課題」だと改めて強調しました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月17日付掲載


かつてのイギリスの劣悪な労働条件と工場法制定の闘い。今、ユニクロなどの海外工場でも同様の闘いが求められている。
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兵庫県知事選挙の街頭演説 こくた恵二衆議院議員が来神

2017-06-23 11:47:07 | 県知事選(2017年)
兵庫県知事選挙の街頭演説 こくた恵二衆議院議員が来神

こくた街頭演説告知
こくた街頭演説告知 posted by (C)きんちゃん
と き:6月24日(土)午後2時~
ところ:神戸元町・大丸百貨店前

こくた恵二衆議院議員がお話します。
もちろん、津川ともひさ候補も訴えます。


まもろう憲法9条ポスター
まもろう憲法9条ポスター posted by (C)きんちゃん

ぜひ、聞きに来てください。
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