きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿③ 罰金で消える1日の給料

2017-06-22 17:49:45 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿③ 罰金で消える1日の給料

「ユニクロの下請け工場で確認した問題点は四つありました」
ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子事務局長は指摘します。
中心は、①低い基本給と長時間労働②危険な労働環境―です。それを支えるのが、③懲罰的な労務管理④労働者を代表する労働組合の不在―という構造です。
パシフィック・テキスタイル社の素材工場(中国広東省)には58もの罰則規定がありました。商品に欠陥があると50~100元(800~1000円)の罰金を科されていました。1日分の給料がまるまる罰金で消えた例もありました。
労働組合はレジャーや福利厚生のための組織にすぎませんでした。職場の総管理責任者が代表を務めており、労働者の意見を反映していませんでした。



ユニクロの下請け工場の織物工程で汗まみれになって働く上半身裸の労働者(SACOM提供)

人権侵害は事実
トンカン・トンウェル・ガーメント社の縫製工場(ト社、同)にも罰金がありました。8分の遅刻で2時間分の給料を引かれると労働者は話しました。工場レベルの労働組合はありませんでした。
伊藤さんはいいます。「二つの工場では、労働者を支配する手段として、罰金を経営側が勝手に定めていました。中国の労働契約法に違反する疑いが濃厚です。労働者が声をあげる制度はなく、労働条件を交渉できる状況にありませんでした」
ユニクロ秘密工場の人権侵害は国境を越えて非難の的になりました。香港のNGO「SACOM」がまとめた報告書(2015年1月)は海外にも知れ渡りました。香港と日本の報道機関のほか、米紙なども報じました。
ファーストリテイリング社(ファ社)の対応は機敏でした。SACOMが報告書を出したその日に独自調査の結果を公表しました。
「誠に遺憾ながら、指摘された長時間労働などいくつかの間題点について事実であることが確認されました」
ファ社の異論は、残業代の割増率の合法性など部分的な事柄にとどまっていました。SACOM報告書の内容を、ファ社はほぼ全面的に事実と認めざるをえなかったのです。4日後には改善計画を示しました。
6カ月後の15年7月、ファ社は労働環境改善の進行状況を公表しました。①労働時間をファ社の規定内におさめた②防塵(ぼうじん)マスクを配った③罰金制度を廃止した④従業員代表を選んだ―と表明しました。
これを受けて、SACOMは追跡調査に踏み切りました。改善は本当か、実地で確かめるためです。15年8月のことでした。さらにSACOMは15年3月に別の二つの工場も潜入調査しました。

問題解決見えず
調査結果は、問題の根深さを印象付ける内容でした。SACOMは16年2月の報告書で結論付けています。
「私たちは四つの工場でいまだに労働者の人権侵害が起きていることを確認した」
1度目の潜入調査で問題点を指摘された2工場では、残業が多少減り、休日が週1日に増えていました。しかし基本給は最低賃金に張り付いたままでした。労働者は月80~100時間も残業し、賃金の不足を補っていました。依然として中国の労働法違反でした。
エアコンの設置や排水溝の増設などは進んでいました。しかし染色部門の作業場は相変わらず刺激臭で満ちており、労働者は健康への不安を口にしました。綿ぼこり対策の防塵マスクは監査が入るときにだけ配られる、との証言がありました。
労働組合代表の選出は名ばかりでした。ト社の労働者は打ち明けました。
「経営者が自分で候補者を選び、選挙では全員、彼に投票するようにといいました。他の労働者は立候補を許されませんでした」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月15日付掲載


この汗まみれの写真は他でも見たことがあります。製品に欠陥があると罰金とは…。日本でもお皿を割ったら罰金というのがありますが…
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グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿② 潜入調査 学生が見た地獄

2017-06-22 14:49:02 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿② 潜入調査 学生が見た地獄

ユニクロは長い間、海外工場のありかを隠し、労働者の境遇を隠してきました。固く閉ざされた秘密の扉をこじ開けたのは、学生たちでした。中国の工場に労働者として雇われ、潜入調査したのです。
調査を組織したのは、香港に本拠を置くNGO「SACOM」でした。香港の学生たちが2005年に結成した団体です。多くの学者が支援しています。SACOMは「企業の不正行為に反対する学生・研究者グループ」の頭文字です。
現在、SACOMで衣料品産業を担当する香港在住のキキ・ユェンさん(32)は言います。
「私がSACOMに入った理由は、もっと公正な世界をつくるのに貢献したいから。巨大ブランドの陰に隠された現実を多くの人に知らせたいからです」
調査には日本と中国の団体も加わりました。日本のNGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、調査員を派遣し、工場の外で聞き取り調査を行いました。中国で労働者の権利の確保に取り組む「中国労働透視」(LAC)も協力しました。
国境を超えた市民団体の共同で初めて、ユニクロの下請け工場の内幕が体系的に明らかにされたのです。



SACOMの常駐スタッフで衣料品産業キャンペーンを担当するキキ・ユェンさん

低賃金で重労働
潜入調査は3回行われています。最初の調査は14年。対象は、パシフィック・テキスタイル社の素材工場(パ社、中国広東省)とトンカン・トンウェル・ガーメント社の縫製工場(ト社、同)でした。15年1月にSACOMとHRNが発表すると、報告書はすぐさま国際的な注目を浴びました。HRNの伊藤和子事務局長は話します。
「概要をインターネットで紹介したところ、一晩で膨大なアクセス数がありました。会見には報道各社が詰めかけ、驚きました」
波紋を広げたのは次のような惨状でした。
両社の基本給は、所在地である広州市と東莞(とうかん)市の平均月給の3分の1でした。パ社は月1550元(2万4800円)。ト社は1310元(2万960円)。両市の最低賃金でした。
労働者は基本給では暮らせず、長い残業を強いられます。それでも、賃金は低水準でした。
「多くの教育費用を支払わなくてはいけないため、この給料では不十分だ」(染色部門の男性労働者)時間外労働は月112~134時間に及びました。
月36時間を上限とする中国の労働法に違反し、日本の過労死ライン月80時間を大幅に超えていたのです。パ社では、1日に平均11時間働き、休日は月に1~2日でした。
「早朝から夜10時まで働いています。夜11時まで働くこともあります」「ときに日曜日も働くんですよ」(ト社のアイロンがけ労働者)
09年には、パ社で労働者がストライキを行いました。雇用側は暴力団を雇い、暴行を加えて鎮圧を図ったと、労働者は証言しました。

「夢・希望」の裏側
「まるで地獄だ」
パ社の織物工場にはエアコンがなく、夏の気温は38度に達しました。労働者は話しました。「あまりの暑さに失神するものもいる」
染色部門の床には排水があふれ、作業場は化学物質の刺激臭で満たされていました。
ト社の縫製部門には大量の綿ぼこりが舞い、鼻がほこりまみれになる状況でした。
ユニクロを傘下に持つファーストリテイリング社は毎年、「CSR(企業の社会的責任)リポート」を公表しています。13年リポートでは、柳井正会長兼社長が「労働環境改善」の努力を誇っていました。「夢や・希望が実現する社会をつくるためにグローバル企業として責任を果たす」と。
ふたを開けてみれば、ユニクロ工場の労働者が置かれているのは、夢や希望からかけ離れた労働環境だったのです。労働者は活動時間の大半を、過酷で危険な低賃金労働に費やしていました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月14日付掲載


残業しないと、休日出勤しないと暮らしていけないユニクロの低賃金。日本の派遣労働者も同じこと。他人事ではありませんね。
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