きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿① ユニクロなぜ機密公開

2017-06-21 11:45:12 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿① ユニクロなぜ機密公開

他国に拠点をやすやすと移す多国籍企業には、秘密が多い。賃金や労働条件の切り下げも国境の陰に隠れて行われてきました。その暗部に、人権という角度から光を当てる運動が実を結び始めています。企業行動の変化をもたらしています。
2月28日、ある日本企業が従来の態度を突如ひるがえす不思議な行動に出ました。隠し続けた「機密」を公開したのです。機密とは海外工場の情報。7力国146施設の名称と所在地です。公開したのはファーストリテイリング社(ファ社、柳井正会長兼社長)です。
ファ社傘下の主力企業はユニクロです。普段着を低価格で売り、1990年代に急成長をとげた会社です。安売り戦略の要が商品製造の外部委託でした。自社で企画した衣服を途上国の工場につくらせてきました。
もともと柳井氏の出発点は製造業ではありません。山口県宇部市で父親から継いだ小売業です。成功の要因を自著で分析しています。小売業主導で「自主企画商品をメーカーへ製造委託する方式」(『一勝九敗』)を採り、製造業主導の商慣行に逆らったことだと。自社工場をもたない小売業者だったから、安上がりの海外工場への委託が容易だったのです。



上はユニクロのシャツ(ベトナム製)とジーンズ(中国製)
左下「ベトナム製」と書かれたユニクロのシャツのタグ
右下「中国製」と書かれたユニクロのジーンズのタグ


低コストに固執
ユニクロは日本で売り上げを伸ばした後、アジア諸国や欧州、米国へと販売網を広げました。しかし日本や欧米の市場が大きくても、先進国で現地生産する考えはありません。
その理由を最近、柳井氏が語っています。きっかけは米国のトランプ政権の誕生でした。輸入を冷遇、輸出を優遇し、米国内に製造業を呼び込むー。トランプ氏が掲げた政策に、柳井氏は冷ややかな目を向けました。
「米国での生産はありえない。本当に良い商品を顧客にメリットのあるコストでつくれない」「(米国での工場建設を)直接言われたら撤退したい。米国で商売する意味がなくなる」(3月29日)
低コストこそが、絶対に手放せない海外工場のメリットだというわけです。その工場の名称や所在地をフア社はひた隠しにしてきました。「重要な機密情報に該当する」(16年1月6日)。こう断言し、公開を求める人権NGOの要請もすげなくはねつけてきました。
なぜいま、前言をひるがえして公開したのか。「人権問題に一層の責任を果たす」ため、というファ社の説明だけでは謎が残ります。

国際評価失墜も
2カ月後に、謎解きの鍵となる文書が世界を駆け巡りました。4月20日、ヒューマン・ライツ・ウオッチなどの国際人権NGOと労働組合9団体が報告書を発表したのです。内容は有名衣料ブランド72社の方針を聞き取り、人権を守る姿勢を点検したもの。ファ社も調査対象でした。
点検の基準は工場の情報をどの程度公開するかでした。すべての情報を隠したままでは落第点を与えられる―。ライバル他社との比較で国際的な評価が失墜する危機に、ファ社は直面したのでした。
報告書によれば、海外工場の名称と住所、親会社、製造品、従業員数の公開を約束したのはナイキなど17社でした。ファ社など30社は限定的な公開に踏み出しました。運動の圧力が巨大企業の行動を変えたのです。
人権団体が情報公開を迫るのは、海外工場の闇に乗じて「奴隷賃金」がはびこってきたからです。労働災害も頻発してきました。中国にあるユニクロの下請け工場を突き止め、潜入調査した香港のNGO「SACOM」が報告しています。
「私たちは四つの工場で労働者の人権侵害を確認した」(16年2月)(つづく)(9回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月13日付掲載


低価格で普段着を売るユニクロ。お世話になっている方も多いと思うが、その背景には安い労働力が。
その裏を隠していては国際的評価が落ちるから公開すると…。どこまでも利益がらみ。
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