GDP大幅減 日本経済の現局面③ 停滞から再生の道は
東京工学科大学教授 工藤昌宏さん
政府・日銀は、7~9月期以降、日本経済は消費税増税の影響から抜け出して拡大すると主張しています。その論拠は、輸出が世界市場の拡大とともに回復する、それに伴って国内設備投資、雇用は拡大し、賃金も上昇し、消費も改善するというものです。
しかし、政府の主張は予測というよりは期待にすぎません。というのも、生産現場の海外移転が止まらない中で輸出が急激に回復する見込みはないからです。当然ながら、設備投資や雇用、賃金の急激な回復は期待できません。また、今後は、企業収益とプラス成長を支えてきた円安効果、駆け込み消費などの条件が消滅します。したがって、このままでは日本経済は来期以降も停滞し続けることが予想されます。

買い物をする人たち=東京都内の商店街
循環構造を安定に
このような状況から脱して日本経済を再生するには、生産、投資、雇用、消費の循環構造の安定を図る必要があることはいうまでもありません。そしてそのためには、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費、雇用の7割を占める中小企業経営の安定が不可欠です。これが破壊されてきたことが、日本経済の停滞の原因だと言っても言い過ぎではありません。
しかし、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指す政府は、利益を上げ続ける大企業に対しては法人税率を引き下げ、窮地にある国民生活と中小企業に対しては救済するどころか、さらに重しをかける政策をとり続けています。残業代ゼロや派遣労働の促進を画策し、年金支給額削減、増税、社会保険料負担の引き上げを強行するなど数えきれません。完全な的外れです。
さらに、4~6月期GDP成長率の大幅な落ち込みに、政府・日銀は平静を装っていますが、動揺の色は隠せません。政府は、景気対策に全力を尽くすと言っていますが、どのような対策をとろうとしているのか、全く見えてきません。
政府自ら株価操作
政府は一方で、景気は来期以降、確実に回復すると主張しながら、他方で必死になって株価つり上げを図っています。年金積立金など公的資金の株式運用の増大、個人の証券投資に対する優遇制度である少額投資非課税制度(NISA)の拡充、日銀による上場投資信託の積極的購入などがそれを示しています。
しかし、景気が回復するなら株価つり上げ策など不要なはずです。また、株価操作は市場を欺き経済活動を妨害する行為であって、まして政府自らが株価操作に手を染めることなど言語道断です。そもそも、株価が操作されてもそれは一部の投資家を喜ばせるだけで、経済実態がよくなるわけではありません。
いずれにしても、政府の株価操作まがいの行動は、経済実態が悪い証しで、経済実態をよく見せかける行為は、政府が打つ手を見失っている証しにほかなりません。そして、このような行為が繰り返される限り、日本経済は漂流を余儀なくされることになります。目指すべきは株価つり上げなどではなく、「世界で一番国民が生活しやすい国」であって、それ以外に日本経済の再生はありえません。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月30日付掲載
「世界で一番企業が活動しやすい国」でなくって「世界で一番国民が生活しやすい国」にすることが求められます。
正規雇用を増やし、企業の内部留保を労働者の賃金や下請け企業への代金をアップさせることだ大事。
東京工学科大学教授 工藤昌宏さん
政府・日銀は、7~9月期以降、日本経済は消費税増税の影響から抜け出して拡大すると主張しています。その論拠は、輸出が世界市場の拡大とともに回復する、それに伴って国内設備投資、雇用は拡大し、賃金も上昇し、消費も改善するというものです。
しかし、政府の主張は予測というよりは期待にすぎません。というのも、生産現場の海外移転が止まらない中で輸出が急激に回復する見込みはないからです。当然ながら、設備投資や雇用、賃金の急激な回復は期待できません。また、今後は、企業収益とプラス成長を支えてきた円安効果、駆け込み消費などの条件が消滅します。したがって、このままでは日本経済は来期以降も停滞し続けることが予想されます。

買い物をする人たち=東京都内の商店街
循環構造を安定に
このような状況から脱して日本経済を再生するには、生産、投資、雇用、消費の循環構造の安定を図る必要があることはいうまでもありません。そしてそのためには、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費、雇用の7割を占める中小企業経営の安定が不可欠です。これが破壊されてきたことが、日本経済の停滞の原因だと言っても言い過ぎではありません。
しかし、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指す政府は、利益を上げ続ける大企業に対しては法人税率を引き下げ、窮地にある国民生活と中小企業に対しては救済するどころか、さらに重しをかける政策をとり続けています。残業代ゼロや派遣労働の促進を画策し、年金支給額削減、増税、社会保険料負担の引き上げを強行するなど数えきれません。完全な的外れです。
さらに、4~6月期GDP成長率の大幅な落ち込みに、政府・日銀は平静を装っていますが、動揺の色は隠せません。政府は、景気対策に全力を尽くすと言っていますが、どのような対策をとろうとしているのか、全く見えてきません。
政府自ら株価操作
政府は一方で、景気は来期以降、確実に回復すると主張しながら、他方で必死になって株価つり上げを図っています。年金積立金など公的資金の株式運用の増大、個人の証券投資に対する優遇制度である少額投資非課税制度(NISA)の拡充、日銀による上場投資信託の積極的購入などがそれを示しています。
しかし、景気が回復するなら株価つり上げ策など不要なはずです。また、株価操作は市場を欺き経済活動を妨害する行為であって、まして政府自らが株価操作に手を染めることなど言語道断です。そもそも、株価が操作されてもそれは一部の投資家を喜ばせるだけで、経済実態がよくなるわけではありません。
いずれにしても、政府の株価操作まがいの行動は、経済実態が悪い証しで、経済実態をよく見せかける行為は、政府が打つ手を見失っている証しにほかなりません。そして、このような行為が繰り返される限り、日本経済は漂流を余儀なくされることになります。目指すべきは株価つり上げなどではなく、「世界で一番国民が生活しやすい国」であって、それ以外に日本経済の再生はありえません。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月30日付掲載
「世界で一番企業が活動しやすい国」でなくって「世界で一番国民が生活しやすい国」にすることが求められます。
正規雇用を増やし、企業の内部留保を労働者の賃金や下請け企業への代金をアップさせることだ大事。