【雌雄異株、英名「ソレル」サラダなど食用に】
アジアやヨーロッパなどの温帯地域に広く分布するタデ科ギシギシ属(スイバ属とも)の多年草。。国内でも日当たりのいい野原や土手、畦道など至る所でよく見かける。春から初夏にかけ直立した茎(高さ50~80cm)を立ち上げ、穂状の円錐花序に小花をたくさん咲かせる。雌雄異株で、雌花をつける雌株の花色は朱紅色を帯び遠目にもよく目立つ。雄花は緑色から紅色まで幅が広い。
葉や茎はホウレンソウやタケノコと同じくシュウ酸を多く含むため、口でかむと酸味がする。スイバの名前も文字通り「酸い葉」から。根生葉は先が尖った矢じり形の長楕円形で、上部の葉は基部で茎を抱くのが特徴。学名の「Rumex acetosa(ルメックス・アセトサ)」もラテン語で「槍(やり)」と「酸っぱい」を意味し、スイバの葉形や酸味などの特徴を表している。
全国各地で様々な方言で呼ばれてきた。スカンポ、スイスイ、スグサ、スイドー、ギシギシ、ギシン……。中でも「スカンポ」はスイバの俗称として広く親しまれてきた。既に江戸中期の百科事典『和漢三才図会』(1713年)には「俗にスカンポと呼ぶ」との記述もある。「土手のすかんぽジャワ更紗 昼は蛍がねんねする……」。これは北原白秋作詞、山田耕筰作曲の童謡「酸模(すかんぽ)の咲く頃」の歌い出し。この「すかんぽ」については同じタデ科のイタドリ(虎杖)を指すのではとの説も。ただ、九州の方言(白秋は福岡県柳川市出身)や白秋の文章に「虎杖とすかんぽばかりだな」と両者を明確に区別する表現が見られることなどからやはりスイバに違いない。紅色に染まって風に揺れるスイバの花穂を、ろうけつ染めのジャワ更紗(バティック)の模様にたとえたのだろう。
古くから食用や薬用植物として利用されてきた。若い葉は和え物やおひたしにされ、根茎や葉は便秘や皮膚病などに効く民間薬として用いられた。生薬名は白秋の童謡の題名と同じ「酸模」と書いて「さんも」と読む。スイバの英名は「ソレル(sorrel)」。ヨーロッパでも若葉がサラダやスープなどに使われ、とりわけブランスでは栽培されて煮込み料理やソースなどにも欠かせない食材の一つになっているそうだ。「すかんぽをかんでまぶしき雲とあり」(吉岡禅寺洞)
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