く~にゃん雑記帳

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<JNO> 室内楽の好演に万雷の拍手

2022年06月04日 | 音楽

【ゲストにベルリン・フィルのオーボエ奏者ら】

 奈良県文化会館国際ホールで6月3日「Japan National Orchestra & Friends~JNOメンバーと海外トップアーティストによる極上の室内楽」と銘打った演奏会が開かれた。ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)はピアニストの反田恭平が創設し、コンサートをプロジュースする実力派の若手演奏家集団。この日は所属メンバーのうち10人が参加し、ピアニストの務川慧悟やベルリン・フィルのオーボエ奏者クリストフ・ハルトマンら4人がゲストとして加わって5曲を披露した。室内楽の醍醐味を堪能させてくれる息の合った演奏に、満席の会場からは万雷の拍手が鳴り止まなかった。

 反田恭平は昨年秋のショパン国際ピアノコンクールで、日本人としては内田光子以来51年ぶりの2位に入賞し一躍世界の注目を集めた。JNOの前身「MLMダブル・カルテット」を立ち上げたのは4年前の2018年。昨年、JNOに改名するとともに会社組織化して奈良市に本社を設立した。奈良との縁は4年前、奈良を創業地とする工作機械メーカーDMG森精機がドイツで主催したコンサートに、反田が急遽日本から駆け付けて出演したのを機につながった。こうしたことから地元奈良でのJNOへの熱い思いは高まっており、この日のチケットも発売まもなく全席完売だった。

 コンサートは誰にでも馴染みのあるシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」から始まった。ピアノの務川慧悟は昨年、世界3大コンクールの一つ、エリザベート王妃国際音楽コンクールで3位入賞を果たしたばかり。切れがあると同時にまろやかで豊かな響きが印象的だった。この後、ヴィヴァルディの「室内協奏曲」、サン=サーンスの「七重奏曲」と続いた。七重奏曲は弦とピアノにトランペットが加わる室内楽曲としてはユニークな構成で、トランペットは日本フィルのソロトランペッター、オッタビアーノ・クリストーフォリが演奏した。ピアノが独特なリズムを刻む中、チェロ・ビオラ・バイオリン・トランペットと順々に音をつないでいく第3楽章の間奏曲は耳に心地良く聴き応えがあった。

 後半の1曲目はモーツァルトの「ピアノと管弦のための五重奏曲」。オーボエのクリストフ・ハルトマンは1992年からベルリン・フィルのオーボエ奏者を務める傍ら、「アンサンブル・ベルリン」「フィルハーモニー・オーボエ・カルテット」の創設メンバーとしても活躍中。クラリネットは名古屋フィル首席奏者のロバート・ボルショスが担当した。ピアノを挟んで両者が向かい合う形になったが、ハルトマンがほぼ直立したままで動きが少ないのに対し、ボルショスは膝を折り曲げたり上半身を前後に揺らしたり。2人の対照的な動きも見ていて愉快だった。

 続くルイ・シュポア作曲「九重奏」は4楽章の構成で演奏時間が30分を超える大作。弦楽4人・木管5人で、JNOのメンバー8人にクラリネットのボルショスが加わった。指揮者のいない室内楽の魅力は演奏者同士の呼吸や会話といわれるが、この演奏はまさにその魅力を堪能させてくれるものだった。例えば第3楽章のアダージョ。弦側が演奏するとき向かいの管側はじっと聴き入り、その後、管側がそれに応えて音を奏でる。それはまるで万葉集の相聞歌の世界だった。額田王が「あかねさす紫野行き標野(しめの)行き…」と歌えば、大海人皇子が「紫草(むらさき)のにほへる妹を憎くあれば…」と返したように。室内楽の深い味わいを再確認できた至福の2時間だった。


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