く~にゃん雑記帳

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<大和文華館> 「朝鮮美術の精華―絵画と工芸」

2022年06月02日 | 美術

【関わりの深い日本、中国の作品を含め50点】

 大和文華館(奈良市学園南)で「朝鮮美術の精華―絵画と工芸」展が開かれている。「朝鮮半島の絵画と工芸」「朝鮮王朝の美術と東アジア」の2部構成で、仏画や山水画、花鳥画、民画、陶磁器などの朝鮮美術・工芸品に、関連する中国や日本の作品も加え50点(いずれも同館蔵)を展示している。庭園の「文華苑」では今ちょうどササユリが開花中。この淡いピンク色の清楚な花を一目見ようと訪れる人も多いようだ。会期は6月26日まで。

 陳列品のうち朝鮮王朝時代(1392~1910)前期の「漁村夕照・平沙落雁図」の2幅は15世紀の宮廷画家・安堅筆と伝わる水墨淡彩。細緻な筆遣いで夕暮れなどの景観が詩情豊かに描かれている。2年がかりの修復後、今回が初公開。同中期の文人画家李継祜筆「葡萄図」は躍動的な筆致で樹幹をS字型に描いたダイナミックな構図(写真は部分)。多くの実を付けるブドウは子孫繁栄のシンボルとして水墨画のテーマとしてよく取り上げられた。陶磁器では高麗時代(918~1392)盛んに制作された青磁に代わって、朝鮮王朝時代には白磁が多く焼かれた。展示中の白磁「鉄砂青花葡萄文大壷」もブドウが水墨画調に描かれている。

 江戸時代に朝鮮王朝から日本に派遣された朝鮮通信使に随行した画員(画家)の作品も並ぶ。その役割は目にした日本の景観を絵や図として記録すること、それに揮毫などを通じて文化交流することだった。画員の中でとりわけ人気を集めたのが金明国。1636年と43年の2回来日しており、展示作「寿老図」は来日2回目のとき宴席で即興的に描いたという。寿老は七福神の一人。韓時覚の「布袋図」も1655年に随行画員として来日した際に描いた作品。朝鮮通信使は1607~1811年に計12回来日している。

 中国作品では伝毛益筆の「蜀葵遊猫図」「萱草遊狗図」(いずれも重要文化財)などを展示中。毛益は南宋時代の宮廷画家として12世紀に活躍した。日本関係では室町時代の画僧祥啓筆「墨梅図」や雪村周継の六曲一双「花鳥図屏風」(重要文化財)をはじめ、狩野探幽筆「古画縮図(人物)」、池大雅の「七老戯楽図」、伊藤若冲の「釣瓶に鶏図」など。狩野派は朝鮮通信使とのつながりも深く、狩野探幽は来日した人物の肖像画を描き、狩野常信は朝鮮国王への贈答用として屏風を制作している。池大雅も随行した画員たちと交流を深めた。伊藤若冲は中国の古画のほか朝鮮絵画からも多くを学んで影響を受けた一人といわれている。

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