【あちこちに「カラスにご注意を」の掲示】
国の名勝に指定されている日本庭園「旧大乗院庭園」(奈良市高畑町)が“カラス騒動”に見舞われている。6月9日に訪ねたところ、「大乗院庭園文化館館長」名で赤字の「注意」と題するこんな文面の掲示があちこちに。「カラスが背後から飛来接近してくることがありますのでご注意ください ※原因は現在調査中です」。日付は1週間ほど前の「6月2日」だった。中世の面影を残す数少ない名園だが、この注意書きもあって園路を巡る間、カラスの鳴き声が気になって仕方がなかった。
大乗院は1087年創建の興福寺の門跡寺院。奈良ホテルの南側、古い町並みのならまちの東縁に位置する。元々は現在の奈良県庁の場所にあったが、1180年の平重衡による南都焼き討ち後この地に移った。作庭は足利将軍家に仕えた善阿弥によって始まり、完成後は「南都随一の名園」とまでうたわれた。だが明治時代に入ると、敷地は飛鳥小学校や奈良ホテルのテニスコートなどに。庭園修復整備の事業主体となったのは公益財団法人「日本ナショナルトラスト」。1995年から奈良文化財研究所の発掘調査や江戸時代後期の「大乗院四季真景図」などをもとに復元工事が進められた。
一般公開されたのは平城遷都1300年に当たる2010年。南側にある「名勝大乗院庭園文化館」ではかつての大乗院に関する資料や復元模型を展示している。ここの入館は無料だが、庭園の見学は有料(大人200円)。早速入園料を払って時計回りに庭園を巡った。庭園の大部分を占める東大池には3つの島が浮かび、中島には反り橋が架かる。4年前に架け替えられたばかりとあって、欄干の朱色が目にも鮮やかだった。東大池の西側には複雑に入り組んだ水深の浅い西小池。発掘調査の結果、初めて詳細が判明したもので、遺構保護のため覆土し嵩上げした整備地盤面で復元する方法を採った。
例の注意書きは園内への出入り口をはじめ園路の数カ所に掲示されていた。園路すぐそばの松の枝にハシブトガラスらしい1羽が止まっていた。少しずつ距離を縮め2~3mまで近づいたが、逃げる気配はなく威嚇するように「カーカー」と鳴いていた。文化館の男性職員によると、同園では作業員が背後から襲われそうになり、隣接する奈良ホテルでは実際に清掃作業をしていた人が後ろからつつかれたとのこと。その際、箒を振り回して追い払ったが、その後カラスはその人が現れると攻撃を仕掛けようとしたという。人を襲うのはもしかしたらその近くで子育ての最中だったからでは? しかし園内の全ての木を調べても巣はどこにも見当たらなかったそうだ。
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