【ソチ五輪・決戦の日2月11日までちょうど1カ月】
12月上旬からヨーロッパを転戦してきたノルディックスキーのジャンプ女子ワールドカップ(W杯)は舞台を日本に移し、11~12日に札幌・宮の森で第6~7戦、18~19日に山形・蔵王で第8~9戦を行う。日本のエース高梨沙羅(17歳)はこれまで5戦4勝で2位以下を大きく引き離しており、女子ジャンプが初めて正式種目となるソチ冬季五輪(2月7日開幕)に向けて高梨のさらなる飛躍が期待される。
高梨は2012~13年シーズンに16戦中8戦で1位となり、初代女王のサラ・ヘンドリクソン(米国、19歳)に続いてスキー史上最年少でW杯2代目チャンピオンに輝いた。その勢いは今季に入っても続き、12月7日のリレハンメル(ノルウェー)の開幕戦=写真=から、同21~22日のヒンターツァルテン(ドイツ)、さらに1月3日のチャイコフスキー(ロシア)での第4戦まで4連勝を飾った。4日同地で行われた第5戦は3位となったが、これまでの獲得ポイント(1位100点、2位80点、3位60点……の合計)は以下のように他を圧倒している。
第5戦までの上位の順位(カッコ内は獲得ポイント)
①高梨沙羅(460点)②イリーナ・アバクモワ(ロシア、315点)③カリーナ・フォークト(ドイツ、306点)④ダニエル・イラシュコ(オーストリア、277点)⑤エマ・クリネク(スロベニア、175点)⑥コリーヌ・マッテル(フランス、155点)⑦ヘレナ・スメビー(ノルウェー、145点)⑧ジャニナ・エルンスト(ドイツ、137点)
昨季までの高梨は大ジャンプによる飛距離でポイントを稼ぐ半面、着地にテレマークが入らないなど飛型に課題を残していた。だが、今季は特訓の成果が出ており、第4戦では飛距離で2選手を下回りながらテレマークをしっかり入れて飛型点で上回った。ただ気がかりなのはここに来て踏み切りにやや迷いが見られること。もともと助走で体が前に突っ込む癖があったが、第5戦ではその癖が出てタイミングが合わず距離が伸びなかった。
高梨のW杯通算優勝回数は現在サラ・ヘンドリクソンと並ぶ13回。日本での大会は女子単独最多となる14勝目がかかる。昨季の日本大会は8戦4勝で迎えたが、宮の森は12位、5位と振るわなかった。ただ蔵王は唯1人HS(ヒルサイズ)の100mを超える大ジャンプを見せるなど好調で2連勝した。蔵王では2年前にW杯初勝利も挙げており、高梨にとっては験がいい。日本大会が始まる11日はソチ五輪で女子ジャンプ競技が行われる2月11日のちょうど1カ月前に当たる。高梨が高い修正能力で早く本来のジャンプの勘を取り戻してくれることを期待したい。
日本での4戦の後はソチ五輪までの間に、今月25~26日リュブノ(スロベニア)で第10~11戦、2月1~2日にヒンツェンバッハ(オーストリア)で第12~13戦が行われる。その間の注目点は高梨の最大のライバルと目されていたサラ・ヘンドリクソンの動静。サラは昨年8月、練習中の転倒で右膝を負傷し手術した。その時点で1月中旬までには万全の状態に戻したいとしていたが、ソチ五輪に間に合うのだろうか。
サラ以外には現在2位につけているロシアのアバクモワ(22歳)がここに来て高梨のライバルとして急浮上してきた。初戦は16位と出遅れたが、その後3位、2位、3位と3回連続で表彰台。そして第5戦では2本とも飛距離で高梨を上回って、ついにW杯初優勝を果たした。昨季のW杯総合6位のドイツのカリーナ・フォークト(21歳)もこの3戦3位、2位、2位と地力を発揮している。まだ15歳という若さのスロベニアのエマ・クリネクも侮れない。初戦から7位、8位、12位、5位、6位とまだ表彰台に上がっていないものの、成長著しく総合順位では現在5位につけている。