く~にゃん雑記帳

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<服部植物研究所> 世界的コケ博士が故郷の宮崎・飫肥に設立して70周年

2016年08月04日 | メモ

【ナンジャモンジャゴケ研究の第一人者、内外の標本約47万点を所蔵】

 「ナンジャモンジャ」と呼ばれる樹木がある。純白の花が雪のように樹冠を覆うヒトツバタゴ(モクセイ科)。その別称として使われることが多いが、このナンジャモンジャが正真正銘の和名になっている植物がある。「ナンジャモンジャゴケ」。このコケの研究で世界的に名を馳せたコケ博士、服部新佐(1915~92)が故郷、宮崎県日南市飫肥(おび)に創設した公益財団法人「服部植物研究所」が今年設立70周年を迎えた。飫肥の城下町散策を機に、無料公開中の同研究所を訪ねた。

 

 ナンジャモンジャゴケは20世紀コケ学界の最大の発見ともいわれる。その標本が最初に服部博士の元に持ち込まれたのは研究所設立(1946年)から5年余り経った1951年のこと。当時名古屋大学教授だった高木典雄博士が北アルプスの五竜岳(長野県)で採集した。服部博士の専門は蘚苔(コケ)植物だが、既存のコケ類と全く異なる形態だったため判断がつきかね、藻類や菌類、シダ類などの専門家にも問い合わせた。それでも分からなかったため、服部博士は「ナンジャモンジャゴケ」という仮称を付けて標本庫にしまった。その後、同研究所研究員などの調査や研究でようやく1科1属1種の新種と判明、58年に発表に至った。 

 ナンジャモンジャゴケは高さが1cm程度で、造卵器が保護器官で守られていないなど原始的な特徴を持つ。冷涼な地域に生息し、日本や台湾、ヒマラヤなど北半球の高地に隔離分布しているのが特徴という。雄株は未発見だが、恐らく既に絶滅してしまったと考えられているそうだ。世界共通のナンジャモンジャゴケの学名は「Takakia lepidozioides」。第一発見者の高木博士の名前に因むものだが、服部博士は生前、学名も「Nanjyamonjya takakii」にしてもらいたかったと繰り返し残念がっていたという。当時の東京大学の研究者らに「神聖な学名にそんなふざけた名前をつけるのはけしからん」と反対されたそうだ。

 

  同研究所は国内外の標本約47万点を所蔵し、コケ類関係の蔵書も3万点近くに及ぶ。研究員は専任・兼任合わせて10人余。年末年始やお盆などの休館日を除いて一般公開しており、顕微鏡でナンジャモンジャゴケをはじめ様々なコケ類を観察できるほか、DVD映像『世界的なコケ博士服部新佐』の放映、コケ類や地衣類に関する書籍・資料の展示なども行っている。30倍の顕微鏡を覗いていると、乾燥し仮死状態で横たわっていたスナゴケが、霧吹きをシュッと吹きかけるやいなや、一斉に立ち上がって美しい緑色に。コケの生命力の神秘を実感する瞬間だった。

 「飫肥には世界的なコケの研究所がある」。服部植物研究所に立ち寄ったのは案内者のこの一言に、かねてコケに関心があるという同行者が「ぜひ連れていって」と答えたことから。研究所は飫肥のメーンストリートに面した2階建てのモダンな洋風建築だった。突然の訪問にもかかわらず、女性職員が丁寧に分かりやすく説明してくれた。「奈良から」と言うと、その女性も実家が奈良県とのこと。しかも偶然にも最寄りの駅まで同じだった。不思議な縁を感じる、忘れがたい訪問となった。

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