く~にゃん雑記帳

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<平城宮跡資料館> 「地下の正倉院展 木簡を科学する」

2014年10月30日 | 考古・歴史

【木簡の樹種①位ヒノキ②位スギ、極めて少ない広葉樹】

 奈良国立博物館で秋の風物詩「正倉院展」が開かれる中、奈良文化財研究所の平城宮跡資料館でも〝もうひとつの正倉院展〟が開かれている。今年で8回目となる「地下の正倉院展」(11月30日まで)。今回は「木簡を科学する」をテーマに、平城宮・平城京跡から大量に出土した木簡を科学的な視点から取り上げている。木簡にはどんな樹種が使われ、どんな木取りがされ、どんな方法で保存されているか――。

 

 展示中の木簡は保存に万全を期すため、会期を3期に分け2週間ごとに展示替えする。木簡に使われている樹種で最も多いのは材質が緻密できめ細かいヒノキ、次いでスギ。ヒノキ科のヒノキとサワラは肉眼での識別が難しいが、生物顕微鏡による分析でこれまでヒノキ材とみられていた木簡の中にサワラ材が一部含まれていることが分かった。スギ材は日本海側からの荷札の木簡に多い。

  

(写真㊧広葉樹の木簡=部分=筑後国から送られてきたアユ加工品の荷札、写真㊨水溶液の中で保管されている木簡=部分=東方官衙大土坑から出土)

 一方、広葉樹の木簡は極めて少ない。ただ、大宰府が管轄していた西海道(さいかいどう=九州)地域からの荷札には広葉樹が多くみられる。なぜ広葉樹が選ばれたかははっきりしない。広葉樹の木簡は珍しいため、現在展示中の「肥前国から納められた真綿の荷札」は重要文化財に指定されている。第3期に展示予定の筑前国からの真綿の荷札も重要文化財。広葉樹は本来木質が堅いが、土中では脆くなりやすいため、保存処理の際には注意を要するという。

 出土直後の木簡は細胞内に水分をたっぷり含む。その状態を保つため調査・研究前の木簡はホウ酸とホウ砂を溶かした水溶液に漬けた状態で保管する。展示物の中にも水漬け状態の木簡があった。保存処理は大別して、水を別の物質に置き換え木の強化を図る工程と乾燥工程から成る。奈文研では強化剤としてポリエチレングリコールや高級アルコールを使う。

 

(写真㊧高級アルコール含浸法と真空凍結乾燥法の併用で保存処理された木簡=部分=長屋王家木簡、写真㊨柾目材の木簡=部分=上部にひげを生やした人物の顔が描かれている)

 乾燥には特殊方法として真空凍結乾燥法(FD)がある。カップ麺などを製造する際に採用されている方法と同じ。この乾燥法を施すと木肌が白みがかる。一方、高級アルコール含浸法で保存処理されたものは木本来の色味に近い風合いに仕上がるが、木質が硬くなる傾向がある。この2つの方法を併用すると変形のリスクが低くなる。このため、変形しやすい柾目材の木簡や傷みが激しい木簡に採用されることが多い。

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