く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK>「日本軍接収図書 中国占領地で接収した図書の行方」

2012年02月27日 | BOOK

 【鞆谷純一著、大阪公立大学共同出版会(OMUP)発行】

 著者は1974年奈良県生まれ。大学の卒論テーマに「満鉄図書館」を取り上げ、卒業後は徳島県の図書館に司書として勤める傍ら日本図書館史の研究に取り組んできた。この本は2011年春の博士論文「第二次大戦中の中国における日本軍接収図書の研究」(大阪市立大学大学院創造都市研究科)を単行本化したもの。

 

     

 

 序章、第1部「各占領地の日本軍接収図書」、第2部「略奪図書の返還」、終章の構成で、丹念に一次史料に当たって史実を掘り起こしている。それによると、華北占領地で接収された図書約2万冊は東大図書館に、広東と上海租界からの接収分、約3万8000冊は文部省民族研究所経由で京大図書館に、香港での接収分の約6万5000冊は参謀本部などを通じ帝国図書館に搬入されたという。

 

 中国の各地域で接収を担当した組織なども明らかにしたうえで、接収の目的を「占領地ごとに異なっていたが、思想統制と情報収集という二つの目的があった」と結論づけている。図書の接収についてはかつて「戦禍から資料を守った」「中国文化財の保護に努力した」など正当化する言説もあったが、多くの史料調査と地道な検証の積み重ねを基に「決して資料の保全を目的としたものではない」と断じた。

 

 戦後になって帝国図書館や東大、京大両図書館から約19万冊が連合国側に返還されたが、その約7割が帝国図書館からだったという。各章の終わりに設けている「まとめ」の項が、より理解を深めるうえで大いに役立った。

コメント (1)
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