経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

増税で消費は増えるかの調査

2012年06月18日 | 経済
 今日の日経は、本社モニター調査がおもしろかった。それも、1面の一番下の最後に、付け足しのように書かれてある部分がね。そこには「消費税で55%が生活切り詰め」と書かれてある。「庶民」からすれば、調べなくても分かるようなものであるが、エリートにとって、都合の悪い結果である。

 「消費税を上げれば、国民は将来に安心して消費を増やす」という説が、まことしやかに喧伝されている。筆者は、これでも経済学徒なので、価格が上昇すれば、消費は減るという価格メカニズムを信じているし、所得を削ったら、消費は減るものと思っている。こうした経済学の根幹に反する現象が起こると主張するのなら、余程、強いエビデンスを出してもらわないといけない。

 日本のエリートに蔓延するこの説の検証は、難しいことはなく、「安心して増やしますか?」というアンケート調査をすれば良いだけだ。それを日経がしてくれたというわけである。もちろん、エリートだって、調査をしたら、どんな結果が出るかは分かっている。だから、御当局は調査を「なさらない」のであり、怪しい説は徘徊を続けることになる。

 まあ、このことは、2/29に熊野英生さんのレポートを紹介しつつ書いてもいる。だいたい、いまや、「貯蓄なし世帯3割」にもなっているのに、どうやって、安心して貯蓄を取り崩すことができるのか、不思議な話である。消費増税は必要だが、こういう都合の悪い事実を見ないようにするのは、大津波の歴史研究を看過し、対策を取らずに事故を招いた原発と同じ構図ではないか。

 今回のモニター調査における、増税前の前倒し消費をしようという人が3割という数字も見過ごせない。駆け込みと反動減の落差は、景気に悪影響を与えるからだ。「反動減は一時的」と言われたところで、3か月も在庫が積みあがれば、企業は持ちこたえられなくなるし、「消費税で削られる所得減は限定的」とされても、気休めにもならない。

 特に、住宅投資への影響は大きい。金融緩和は、直接、設備投資に働くのではなく、金利低下による住宅増や、通貨安による輸出増という需要に反応して伸びるので、「落差」の大きさに加え、金融緩和の伝達経路の一つが失われることも問題なのだ。住宅投資が金利に感応的なのは、自分が住むという確実な需要が期待できるからである。加えて、住宅投資から消費への波及も非常に重要である。

 一応、1997年当時に比べれば、住宅投資の規模は縮小しているし、政策の連続で絞り切ったようなところもあるので、以前ほどの素地はないにしても、その代わり、消費税の上げ幅は1.5倍だし、1年半で更にアップして2倍にまでするのだから、どうやって、影響を防いだら良いか思案に暮れてしまう。まあ、何も心配していないエリートは能天気で居られるから、つくづく、うらやましく思う。

(今日の日経)
 企業の資金調達4割減。本社モニター・消費税で55%が生活切り詰め、前倒し消費は3人に1人。ニトリ・高めの商品も売れる。核心・原発事故が示す課題・滝順一。通貨安進むインドネシア。米住宅、値崩れ物件に買い。デフレ勝ち組の不安、増税後の変化に備え。独禁法の課徴金442億円。経済教室・誠実な市場・柳川範之。

※滝さんの言うことは良く分かるよ。日本には数字で議論できる場が必要だ。※企業は、勝ち組でさえ、消費税への対応は大変だ。※公取委は445人だから、日本で一番稼ぐ公務員かも。※今日の経済教室は秀逸だったね。ただ、昔より誠実でなくなりつつあると思う。お勧めに従うと、不利なものに行き着くとか。

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1 コメント

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Unknown (あにはからんや)
2012-08-07 17:32:50
消費税率が上がっても、商品の税込み価格はほとんど変わらない(変えられない)だろう。増税分は、価格に上乗せされるのではなく、賃下げで賄われる。税率が3%上がれば賃下げは3%では済まないことは言うまでもない。

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