経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・最終回

2020年09月06日 | 経済(主なもの)
 2014年の消費増税以来、月次指標が出るごとにお送りしてきた「アベノミクス・シリーズ」も、今日で、いよいよ最終回になる。こんなに安倍政権が長くなり、シリーズが続くとは思わなかったな。本当は、日本が先進諸国並みの成長率に加速し、「経済を良くするって、どうすれば」自体が最終回を迎えることを願ってきたのだがね。正直、そんな日本の姿を生きているうちに拝めるかどうか、怪しくなってきたよ。

………
 7月の鉱工業生産は、前月比+6.4と大きく回復した。8,9月の予測も+4.0,+1.9と着々と改善していく見通しである。それでも、水準は92.5にとどまり、コロナ禍前の2月より-7.0も低い。いわば、V字型ではなく、レ字型の回復になっている。こうした中、消費財は、高めの回復が見込まれており、9月には、2月と遜色ない程の水準になる見通しだ。モノの消費は、コロナ禍でも支障は少ないので、順当である。

 他方、絶不調なのは、資本財(除く輸送機械)である。回復どころか、7月前月比-0.5、8,9月の予測が-4.3,-1.2と、マイナス続きである。これは、輸出が、日銀指数で7月に92.2と2月より-16.0も低いことの反映であろう。とは言え、中国や米国の生産活動は戻りつつあるので、遅れての回復が望めるところだ。在庫の水準は積み上がっていないため、回復が始まれば、動きは早いと見ている。

 雇用については、輸出の戻りの鈍さを反映して、製造業での求人数の悪化幅は大きいが、全体の雇用者数を労働力調査で見ると、7月はプラスに転じ、底入れが見られる。内訳は、男性が前月比+22万人、女性が-7万人だった。男性は、落ち込みから半戻しまで来たものの、女性の停滞が続く。コロナ禍によって、女性の多いサービス業が打撃を受けていることを踏まえればやむを得ないところだ。

 7月の商業動態は、小売業が前月比-3.4の98.8となった。前月、いったんはコロナ禍前の1,2月に近い水準まで回復したが、後退である。10万円給付金で盛んだった家電を含む「機械・器具」が急伸後の急落となり、「衣服等」の反動減も大きかった。自動車は、徐々に戻し、まだ回復の余地がある。10万円給付金による消費の偏りと一過性は、記憶にとどめておきたいところだ。

(図)


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 さて、アベノミクスの総括については、三井住友DSアセットマネジメントの山崎慧さんがnotoに的確かつ簡潔にまとめておられるので、それを参照していただければ良いと思う。問題は、なぜ、消費が増えなかったかである。それが「スガノミクス」なり、「エダノミクス」なりの課題になるわけだ。もっとも、消費ゼロ成長を、どうして、問題として認識できないのかの方が真の問題かもしれない。

 消費増税をしたり、社会保険料を引き上げたりすれば、消費が減るのは、当たり前である。そして、消費を増やさずに、成長させようとするのは、無理な話だ。なぜなら、それは、投資ばかりが肥大し、外需頼みで増やせたとしても、いずれは崩れることを意味するからだ。結局、消費を抑圧する政策は、成長を拒否する政策と同じなのである。こうした矛盾する政策を懸命に追い求めてきたのが、アベノミクスの実像だ。

 アベノミクスでは、消費を増やそうと、春闘に介入して、政治力で賃金を引き上げようと試みた。しかし、企業にしてみれば、緊縮で国内消費が抑制され、売上が増えないのでは、賃金を上げるに上げられない。引き合いが強く、付加価値を高く売れる状況でないと、雇用の量は増やせても、高賃金では報いられないのである。賃金と消費もまた表裏の関係にあり、消費を抑制しておいて、賃金を上げようというのも、詮無いことでしかない。

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 スガノミクスは、従来路線に目玉の産業政策を付け加えるようなものになりそうだ。エダノミクスは、消費減税、所得減税、困窮支援のようで、低所得層への再分配には関心が薄いようである。成長するとは、消費を伸ばすことであり、低所得層の負担に焦点を絞って軽くすることが消費を増やすには最も効果的である。社会的公平の問題ではなく、成長戦略の要として位置づけられるかがアベノミクスを正すカギとなる。


(今日までの日経)
 女性雇用 コロナの逆風 7カ月で87万人減、職種転換へ支援急務。待機児童ゼロ 3年連続減も1.2万人。自動車素材の国際価格、軒並み高 アジア、生産台数回復。


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