経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・コロナ後の回復から停滞へ

2023年11月05日 | 経済(主なもの)
 岸田政権の支持率が下がっているようだけど、コロナの5類移行後の回復が終わり、物価高が沁みてきているのかもしれない。9月の経済指標がオープンになり、7-9月期の状況が見えてきたが、実質では、若干のマイナス成長といったところだ。名目では、2%程度のまずますの成長であるので、表面上の景気は良いし、物価高もピークは越している。それでも、どうも生活が苦しいというのが国民の実感だろう。

………
 9月の商業動態・小売業は、前月比-0.1と8月に続き横ばいだった。収まりつつあるとはいえ、CPIの財が+0.2なので、実質だと-0.3に下がる。ただし、7月に+2.4だったため、7-9月期の前期比は+2.5となる。この感じだと、7-9月期の消費は、実質で前期比-0.1、名目で+0.4くらいだろう。7月に一気に伸び、その後は停滞という状況である。消費者態度指数も同様の動きであり、ちなみに10月は+0.5と底入れしている。

 9月の鉱工業生産は、前月比+0.2だったが、7-9月期は7,8月の低下が響いて、前期比-1.4となった。4-6月期が+1.4だったので、まさに一進一退だ。心配なのは、トレンドが下を向いていることであり、10,11月の予測でようやく底入れする形になっている。消費財、特に非耐久は低調で、底入れも見えない。国内の回復の停滞とともに、輸出も伸び悩んでおり、生産には陰りがうかがえる。

 雇用については、9月の労働力調査は、男性が前月比+16万人で上向くも、女性が+3万人と頭打ちだった。7-9月期の伸びは、勢いのあった4-6月期からは減速した。また、9月の新規求人倍率は、2.22倍と前月比-0.11にとどまり、5月をピークに、むしろ、弱まっているようにも見える。産業別では、製造業、建設業において、悪化はしていないものの、前年同月が下回る傾向のままである。

 9月の住宅着工は、前月比-1.5%のマイナスで、7-9月期は、4-6月期ほど酷くはないが、2期連続の低下となった。資材高とローン高だから、当然の動きではあるが、7,9月の建設総合統計を見ると、住宅、公共、企業と揃って低下しており、政策次第の公共や、企業の建設投資まで下がっているのは気になる。GDPの設備投資は、鉱工業の資本財も低調で、意外と大きく下がるおそれがある。

(図)


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 こうした景気の状況では、経済対策も必要であり、前年比で大きく剥落させるわけにはいかないが、「減税」には別のやりようがあったと思う。焦眉の急は、若年層への手当てだ。その必要性については、ニッセイ研の坂田紘野さんが『少子化問題に影を落とす若年層の経済状況』(11/2)で的確な分析をしている。社会を良くするという理念がなければ、経済対策で支持を集めることはむずかしい。


(今日までの日経)
 米経済 迫る転機 倒産倍増、コロナ並み水準 住宅、38年ぶり買いにくさ 長期金利上昇は一服。米雇用、10月15万人増に鈍化 円上昇、一時149円台。


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