緊縮なければ、成長する。さすがに、年率4%成長に届くとは思わなかったがね。第一生命研の新家さんも指摘するように、過去1年の最終需要は、2016年7-9月期+2.9%、10-12月期+2.5%、2017年1-3月期+2.1%、この4-6月期+3.8%であるから、潜在成長率がゼロ%台と言うこと自体が現実にそぐわなくなってきた。日本経済は、2%後半の成長力を持ち、それを実証して見せた。成長力の覚醒と解放と呼ぶにふさわしいではないか。
………
一体、日本経済に何が起こったのか。昨年後半から成長戦略が機能しだしたと主張する人は皆無だろう。あれほど成長に必要と叫ばれながら、これと無関係に成長は始まった。要は、成長戦略など、どうでも良かったのである。それどころか、目玉の国家戦略特区は、経済成長より政治腐敗を実現してしまった。産業政策には癒着が付きものという、昔からありがちな成り行きである。
成長起動の主因が輸出にあることは、大方の一致するところだろう。それも、円安の価格要因ではなく、世界経済の回復の下での需要要因で得られたものだ。つまり、異次元緩和のお陰ではない。もっとも、そこまで言い切ると反発も出ようから、流れに逆らわなかった功はあったとしておこう。いずれにせよ、「輸出は為替より需要」という従来から言われてきたことを再確認しておきたい。そうでないと、「金融緩和で緊縮財政を補う」などという世迷言を口にしかねないのでね。
そして、大事なのは、輸出から所得と消費へ波及させたことである。せっかく、輸出で需要が得られても、緊縮財政で所得を吸い上げていたら、そこで終わり。輸出には波があるので、引けば景気も消えてしまう。今回は、消費増税の先送りによって、自滅することなく、消費が中心の成長へ進めた。こうした需要が耐久財や運輸などでの労働需給を引き締め、省力化などの設備投資を促してもいる。
ここで、教科書と現実の違いを肝に銘じておくべきだろう。教科書では、金利を下げ、利潤を厚くし、設備投資を促すと、成長することになっているが、実際には、成長してから、投資が出てくる。すなわち、輸出や公共事業のような追加的な需要が起点となり、所得と消費が伸び、そうした需要に促されて設備投資がなされる。これが更なる需要となり、設備投資を呼ぶ循環が生産性を高め、成長は加速していく。
………
ここで、GDP速報を眺めてみよう。追加的な需要の指標として、住宅、公共事業、輸出の半分の三つを足し合わせたものを作ると、下図のように、家計消費や設備投資とパラレルに動いていることが分かる。住宅、公共、輸出の三つは、バラバラに変動しているのに、不思議にも、一つにすると消費や投資と変動が同じになる。こうなる理由は、普通の経営者の視点に立てば、すぐに分かる。
需要を見つつ、設備投資を進捗させているのだ。常識的ではあるが、経済学の教科書とは異なり、経営者は、利益率に従うのではなく、需要リスクに強く支配されている。これを踏まえると、異次元緩和や法人減税・規制改革に効果がなく、緊縮財政で需要を抜いたりしたら、景気が低迷するのは当たり前だろう。金融緩和の効果は、円安で輸出や外国人旅客を得たり、建設投資を促したりの間接的なものに限られる。ゆえに、経路が途切れての空振りも少なくないのである。
経済のメカニズムは、追加的な需要が増すと、設備投資が増え、これらで所得も得られて、消費も伸びるシンプルなものだ。実際、消費増税に備えるとして、法人減税やら投資減税やらの成長戦略を打ったが、やはり、設備投資は失速し、直近で3需要が上向くまで停滞した。諸々の規制改革に至っては、元から成長「戦術」でしかない。日本人らしい改善運動は否定しないけれど、需要管理という「戦略」なき総動員体制は、この国の伝統芸なのかね。
細かく3需要と消費の関係を見ると、直近の10-12月、1-3月期は消費が弱い。これは一過性の物価高によるものだ。この局面で、家計調査が極端に弱かったにもかかわらず、筆者が強気を打ち出したのは、3需要を見ていたからだ。逆に、2015-16年の冬に失速を唱えたのは、3需要も弱かったためである。このように複合的に読めば、景気の局面は的確に分かる。では、先行きはどうか。住宅堅調、公共一服、輸出漸進であるので、消費も伸びると見る。
(図)
………
アベノミクスに限らず、緊縮財政・金融緩和・規制改革の組み合わせは、日本が20年やり続けてきたことである。円安で外需を得られれば、そこそこ行くが、ムリが溜まって円高へ揺り戻しては、元の木阿弥になるのを繰り返してきた。一時は上手く行くだけに、なかなか捨てられない、エリートの見果てぬ夢なのだ。それが、選挙に勝ちたい一心で、「世界経済はリーマン前に似た危機」との屁理屈で消費増税を先送りしたところ、世界経済の回復に巡り合い、一気に2%後半の成長である。緊縮財政の拘束具が外れれば、日本経済は、ここまで力を発現させるものなのか。エリートの教条の暗澹と、民主主義の皮肉を感じるよ。
(今日までの日経)
米労働市場に異変 働き盛り男性の参加率、主要国最低 薬物まん延。夏野菜、長雨で高値。企業型保育所7万人に追加。成長率、夏以降も底堅く。クレディセゾン、全従業員を正社員に。地方を潤す3つの逆転・エコノ。児童扶養手当2か月ごと。
※高坂哲郎さんの「旧日本軍の悪弊と重なるPKO情報軽視」は読ませる。文書管理の問題が叫ばれるが、意思決定の歪みが文書管理に投影されただけで、本質は別にあり、財務省や文科省の一件と同様、正当化しがたい政治判断の隠蔽が根源とはね。
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一体、日本経済に何が起こったのか。昨年後半から成長戦略が機能しだしたと主張する人は皆無だろう。あれほど成長に必要と叫ばれながら、これと無関係に成長は始まった。要は、成長戦略など、どうでも良かったのである。それどころか、目玉の国家戦略特区は、経済成長より政治腐敗を実現してしまった。産業政策には癒着が付きものという、昔からありがちな成り行きである。
成長起動の主因が輸出にあることは、大方の一致するところだろう。それも、円安の価格要因ではなく、世界経済の回復の下での需要要因で得られたものだ。つまり、異次元緩和のお陰ではない。もっとも、そこまで言い切ると反発も出ようから、流れに逆らわなかった功はあったとしておこう。いずれにせよ、「輸出は為替より需要」という従来から言われてきたことを再確認しておきたい。そうでないと、「金融緩和で緊縮財政を補う」などという世迷言を口にしかねないのでね。
そして、大事なのは、輸出から所得と消費へ波及させたことである。せっかく、輸出で需要が得られても、緊縮財政で所得を吸い上げていたら、そこで終わり。輸出には波があるので、引けば景気も消えてしまう。今回は、消費増税の先送りによって、自滅することなく、消費が中心の成長へ進めた。こうした需要が耐久財や運輸などでの労働需給を引き締め、省力化などの設備投資を促してもいる。
ここで、教科書と現実の違いを肝に銘じておくべきだろう。教科書では、金利を下げ、利潤を厚くし、設備投資を促すと、成長することになっているが、実際には、成長してから、投資が出てくる。すなわち、輸出や公共事業のような追加的な需要が起点となり、所得と消費が伸び、そうした需要に促されて設備投資がなされる。これが更なる需要となり、設備投資を呼ぶ循環が生産性を高め、成長は加速していく。
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ここで、GDP速報を眺めてみよう。追加的な需要の指標として、住宅、公共事業、輸出の半分の三つを足し合わせたものを作ると、下図のように、家計消費や設備投資とパラレルに動いていることが分かる。住宅、公共、輸出の三つは、バラバラに変動しているのに、不思議にも、一つにすると消費や投資と変動が同じになる。こうなる理由は、普通の経営者の視点に立てば、すぐに分かる。
需要を見つつ、設備投資を進捗させているのだ。常識的ではあるが、経済学の教科書とは異なり、経営者は、利益率に従うのではなく、需要リスクに強く支配されている。これを踏まえると、異次元緩和や法人減税・規制改革に効果がなく、緊縮財政で需要を抜いたりしたら、景気が低迷するのは当たり前だろう。金融緩和の効果は、円安で輸出や外国人旅客を得たり、建設投資を促したりの間接的なものに限られる。ゆえに、経路が途切れての空振りも少なくないのである。
経済のメカニズムは、追加的な需要が増すと、設備投資が増え、これらで所得も得られて、消費も伸びるシンプルなものだ。実際、消費増税に備えるとして、法人減税やら投資減税やらの成長戦略を打ったが、やはり、設備投資は失速し、直近で3需要が上向くまで停滞した。諸々の規制改革に至っては、元から成長「戦術」でしかない。日本人らしい改善運動は否定しないけれど、需要管理という「戦略」なき総動員体制は、この国の伝統芸なのかね。
細かく3需要と消費の関係を見ると、直近の10-12月、1-3月期は消費が弱い。これは一過性の物価高によるものだ。この局面で、家計調査が極端に弱かったにもかかわらず、筆者が強気を打ち出したのは、3需要を見ていたからだ。逆に、2015-16年の冬に失速を唱えたのは、3需要も弱かったためである。このように複合的に読めば、景気の局面は的確に分かる。では、先行きはどうか。住宅堅調、公共一服、輸出漸進であるので、消費も伸びると見る。
(図)
………
アベノミクスに限らず、緊縮財政・金融緩和・規制改革の組み合わせは、日本が20年やり続けてきたことである。円安で外需を得られれば、そこそこ行くが、ムリが溜まって円高へ揺り戻しては、元の木阿弥になるのを繰り返してきた。一時は上手く行くだけに、なかなか捨てられない、エリートの見果てぬ夢なのだ。それが、選挙に勝ちたい一心で、「世界経済はリーマン前に似た危機」との屁理屈で消費増税を先送りしたところ、世界経済の回復に巡り合い、一気に2%後半の成長である。緊縮財政の拘束具が外れれば、日本経済は、ここまで力を発現させるものなのか。エリートの教条の暗澹と、民主主義の皮肉を感じるよ。
(今日までの日経)
米労働市場に異変 働き盛り男性の参加率、主要国最低 薬物まん延。夏野菜、長雨で高値。企業型保育所7万人に追加。成長率、夏以降も底堅く。クレディセゾン、全従業員を正社員に。地方を潤す3つの逆転・エコノ。児童扶養手当2か月ごと。
※高坂哲郎さんの「旧日本軍の悪弊と重なるPKO情報軽視」は読ませる。文書管理の問題が叫ばれるが、意思決定の歪みが文書管理に投影されただけで、本質は別にあり、財務省や文科省の一件と同様、正当化しがたい政治判断の隠蔽が根源とはね。
輸出って好調だったっけ?
内需が好調なのは知ってたけど