9月になると、最初の大型納税月である7月の結果が判明し、証券各社の企業業績見通しも出るので、当年度の税収予想が立てられるようになる。マクロ管理の基本は、税収の把握からであり、こうした地味な作業なしに、反緊縮もない。今回の結果は、見た目は平凡でも、実質は景気の悪化の影響が色濃くなっている。成長が止まれば、税収は伸びず、財政再建は遠のくが、「増税すればできるんだ」とばかり、遮二無二突進することになる。
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税収予想の方法には様々あるが、本コラムでは、単純明快を第一として、前年度決算額をベースに、所得税には名目GDPの伸び率を、法人税には企業業績見通しの経常利益増加率を、消費税には名目GDPの消費の伸び率を、その他の税には消費者物価上昇率を、それぞれ割り当てて合算する方法を採っている。その結果は、61.1兆円であり、国の2019年度の一般会計予算額から消費増税分1.5兆円を差し引いた61.0兆円とほぼ同じである。
普通なら、予算と変わらなければ問題なしで済ますところだが、日本では、予算の税収額を過少に見積り、緊縮の実態を分からなくすることが常々なされており、予算とほぼ同じということは、景気の悪化に伴って、かなり税収が停滞することを意味する。カギになるのは法人税であり、経常利益の見通しは、野村と日興の平均が2.2%増と、6月時点の6.8%から大きく低下し1/3になってしまっている。
経常利益の低下の理由は、言うまでもなく、輸出の減退によって、製造業の経常利益がマイナスへ転落するとの予想になっているからである。ここへ消費増税が来る。非製造業は、未だ堅調であるものの、外需が危い中で、内需を圧殺するという経済運営は、非常にリスクが高く、今、やらなくてもと思えてしまう。
ちなみに、2020年度には、経常利益の見通しは、5.2%増へと回復することになっている。これらを基にして、2020年度の税収予想を立てると、+1.2兆円の自然増収となる。このくらいの伸びが普通であり、消費増税の1%分程度は、年々の自然増収で得られる。焦って増税で上乗せする必要性は乏しい。
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当年度の税収予想については、先の方法に加え、7月までの納税実績を組み込むこともできる。7月までの累計額の前年度比は、所得税で-3500億円、法人税で-900億円、消費税で-2200億円となっており、所得税には前年度の特殊要因の反動が含まれるにせよ、全体として停滞感は拭えない。これに移動平均を用いて計算すると、消費増税分を抜いた2019年度の税収予想は60.3兆円と、2018年度の決算額とほぼ同じになる。
つまり、2019年度は、景気の悪化でまったく税収が伸びないのに、消費増税で強引に増収を図ろうとする構図になる。財政によるビルトインスタビライザーをあえて無効化するような経済運営であり、この国は、本当に緊縮が大好きだ。野村は、企業業績について、予想の下方修正が相次いでいて、8年ぶりの経常減益になることも否定できないとする。今年度の税収が消費増税分より増えなかったという結果にならないことを祈りたい。
(図)
(今日までの日経)
水没する世界の金利 欧米で「日本化」懸念。「待機児童」無償化が影 2年連続減少も増加の恐れ。物価、増税後も低空飛行 民間予測平均1%届かず。
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税収予想の方法には様々あるが、本コラムでは、単純明快を第一として、前年度決算額をベースに、所得税には名目GDPの伸び率を、法人税には企業業績見通しの経常利益増加率を、消費税には名目GDPの消費の伸び率を、その他の税には消費者物価上昇率を、それぞれ割り当てて合算する方法を採っている。その結果は、61.1兆円であり、国の2019年度の一般会計予算額から消費増税分1.5兆円を差し引いた61.0兆円とほぼ同じである。
普通なら、予算と変わらなければ問題なしで済ますところだが、日本では、予算の税収額を過少に見積り、緊縮の実態を分からなくすることが常々なされており、予算とほぼ同じということは、景気の悪化に伴って、かなり税収が停滞することを意味する。カギになるのは法人税であり、経常利益の見通しは、野村と日興の平均が2.2%増と、6月時点の6.8%から大きく低下し1/3になってしまっている。
経常利益の低下の理由は、言うまでもなく、輸出の減退によって、製造業の経常利益がマイナスへ転落するとの予想になっているからである。ここへ消費増税が来る。非製造業は、未だ堅調であるものの、外需が危い中で、内需を圧殺するという経済運営は、非常にリスクが高く、今、やらなくてもと思えてしまう。
ちなみに、2020年度には、経常利益の見通しは、5.2%増へと回復することになっている。これらを基にして、2020年度の税収予想を立てると、+1.2兆円の自然増収となる。このくらいの伸びが普通であり、消費増税の1%分程度は、年々の自然増収で得られる。焦って増税で上乗せする必要性は乏しい。
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当年度の税収予想については、先の方法に加え、7月までの納税実績を組み込むこともできる。7月までの累計額の前年度比は、所得税で-3500億円、法人税で-900億円、消費税で-2200億円となっており、所得税には前年度の特殊要因の反動が含まれるにせよ、全体として停滞感は拭えない。これに移動平均を用いて計算すると、消費増税分を抜いた2019年度の税収予想は60.3兆円と、2018年度の決算額とほぼ同じになる。
つまり、2019年度は、景気の悪化でまったく税収が伸びないのに、消費増税で強引に増収を図ろうとする構図になる。財政によるビルトインスタビライザーをあえて無効化するような経済運営であり、この国は、本当に緊縮が大好きだ。野村は、企業業績について、予想の下方修正が相次いでいて、8年ぶりの経常減益になることも否定できないとする。今年度の税収が消費増税分より増えなかったという結果にならないことを祈りたい。
(図)
(今日までの日経)
水没する世界の金利 欧米で「日本化」懸念。「待機児童」無償化が影 2年連続減少も増加の恐れ。物価、増税後も低空飛行 民間予測平均1%届かず。
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