経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・2023年の経済政策の課題とは

2023年01月08日 | 経済(主なもの)
 明けて今年は、黒田日銀総裁の交代が確実視されていて、金融政策の最大の課題は、リフレの後始末ということになろうか。円安が進んだときにやっておけば良かったものを、機を逃してしまったので、苦労するような気がする。そして、財政の最大の課題は、大幅に増えている税収によるデフレ圧力をいかにかわすかという贅沢な悩みになる。課題も悩みも見えてない人が多いだろうが、それがリフレの失敗の原因でもある。

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 経済政策に限らず、失敗に学ぶのは大切だ。リフレをやってみて、どれほど大規模に金融緩和をして、投資促進の成長戦略と組合せても、需要管理が疎かでは、経済を満足に成長させられないことは、良く分かったと思う。それが分かっただけでも、大きな成果である。もっとも、経験に学ぶという愚者の成果すら得ていない人も結構いるようなのが、やや残念ではある。

 他方、需要管理の使い方は、なかなか難しいというのも大事な教訓だ。米国は、リーマンショック後の病み上がりに、緊縮をして長期停滞を招いた失敗に学び、コロナ後は、積極財政に出たが、折悪しくウクライナ戦争と遭遇し、インフレに悩むことになって、金融政策で急ブレーキを踏むはめとなった。そして、最後は、一過性のインフレだったのに、過剰反応してしまったというオチだろう。

 日本でも、細かいことをいうと、コロナ禍で10万円をバラ撒いたら、家電に需要が集中してしまったとか、コロナ後の旅行支援では、人手不足が起こっているとか、再分配も、ただやれば良いというものでもない。低所得層に分配し、消費全般が拡大して、それに応じて、設備投資が増えるという理想的な形になるように、場当たり的でないやり方を工夫しなければならない。

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 国の税収は、2020年度決算で60.8兆円だったものが、いつも控えめな2023年度予算ですら69.4兆円に上っており、最大74.8兆円までブレる可能性もある。この間の社会保障費の伸びは1.2兆円に過ぎないから、7.4~12.8兆円もの緊縮になる。これを埋めていたのが、2021年度36.0兆円、2022年度31.6兆円の補正予算である。つまり、2023年度も大規模な補正予算を打たないと、強いデフレ圧力になるということである。

 しかも、この間の緊縮は、地方財政で4.0兆円、年金で1.6兆円が見込まれるため、恒常化していた補正予算額の3兆円と合わせ、16.0~21.4兆円も補正予算を組まないと、財政中立にならない。コロナ禍も、ガソリンや電気代の補填も一服したら、一体、何に使うのかという悩ましい問題が生じる。社会保険料の還元や少子化対策など、まともなものを設計していかないと、身にならないバラ撒きに消えてしまうだろう。

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 その少子化対策は、「異次元」の挑戦としたのは良いが、児童手当で都知事に先を越され、元党幹部の「消費増税で」という発言で水を差された。3月までにたたき台が出されるようだが、総花的で負担増とセットというのでは、盛り下がってしまい、せっかくの挑戦も、支持率は上がらないだろう。焦点となる施策を補正予算で先行的に実施し、財源は時間をかけて議論する方法で臨むべきである。

 少子化対策の焦点は、ミッシングリンクである乳幼児期の支援である。なにしろ、3歳以上は全員が無償で教育が受けられるのに、0~2歳では、育児休業給付も保育も半数しか受けていない。これを、全員がいずれかを受けられるようにして、「乳幼児支援の倍増計画」とでも銘打ち、看板施策としてアピールすれば良い。財源は、初年度は0歳児分だけの0.7兆円で済むから、補正予算で税収の上ブレなどを使って先行実施できる規模である。

 そして、最終的な財源は、出生率が向上すると、年金などで財源を節約できるので、そこから回すことにする。政治的には、「乳幼児支援を倍増するので、ぜひ、子供を持ってください、そうしたら、負担増にはならないので」というメッセージでもってリードするわけである。出生率が向上しなければ、年金が下がるリスクはあるが、適用拡大などの別途の方法で対応することができる。

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(図)


 さて、11月の鉱工業生産は、前月比-0.1の小幅マイナスながら3か月連続の低下となった。これで10,11月平均は前期比-3.3であり、生産予測は、12月+2.8、1月-0.6ながら、前期比マイナスは避けられそうにない。生産を牽引していたのは、資本財(除く輸送機械)だったが、陰りが見られる。米国、欧州、中国ともに景気に不調が見られるので、仕方のないところで、外需に頼らない成長が望まれるところだ。

 とはいえ、国内の消費も、11月の商業動態・小売業は、名目なのに前月比-1.2だった。また、消費を支える雇用については、11月の労働力調査の就業者数は、前月比-25万人と伸びが止まっている。11月の新規求人は、前月比+0.09とは言え、4か月ぶりの更新だった。11月の毎日勤労統計は、常用雇用の前月比が横ばい、現金給与総額が前月比-1.0となり、まったく振るわない。

 12月については、消費者態度が前月比+1.7と4か月ぶりにプラスとなったものの、それまでの物価高の影響による低下が大きく、10-12月期は前期比が-1.6という状況で、基調判断も「弱まっている」に据え置かれた。内需をテコ入れしたいところだが、2022年度補正は、規模が大きい割に、値上がり幅を縮めるだけだったり、基金が多かったりと、あまり効きそうにない中身なのが残念である。


(今日までの日経)
 少子化対策拡充、3月末にたたき台。


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