経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

低成長ほど緊縮せよという矛盾

2015年05月26日 | 経済
 月曜日経の「核心」は、平田育夫さんの「大見えを切る財政健全化」だったが、諮問会議の民間議員が歳出削減を5-6兆円で十分としているのは、将来を過大に期待しているわけではなくて、過去の期間である2014年度の国と地方の税収上ブレを勘案しているだけのことだよ。決算が済んでいないから無視するというのでは、おかしいでしょう。

 他方、より多くの削減を求める財務省の主張が、財政再建目標達成に必要な9.4兆円に対して、なぜか1.4兆円足りないのは、税収上ブレにより、2014年度の国の決算剰余金がそのくらい出ると見越しているからだろう。要するに、地方分については、国よりも決算が先だから、それは勘案しないということだ。

 そもそも、「高成長は現実的でないから、低成長を想定して、歳出削減を多くすべし」という主張には矛盾がある。財政赤字の縮小は資金を余らせることであって、低成長では余らせた資金を使う者が見当たらなくなるからだ。無理に余らせれば、経済を収縮させてしまう。国債の信用確保からしても、経済より財政が大事とはならないはずである。

 もし、低成長を前提にすると、インフレ率も低くなり、増税の余地は限られる。中長期試算では2016年度は0.3%しかなく、消費増税の影響がある2017,18年度は、追加の緊縮はとても無理だろう。するにしても、2019,20年度の2か年に限られるが、もともと1%弱しか実質成長率がないのに、これを失速させずに緊縮するのは困難を極めよう。

 低成長の中で、どうしても、財政再建をしたいのであれば、資金余剰となっている企業部門から法人増税で取り上げるか、企業から株主に行く所得を資産課税で吸い上げるしかない。現実的なのは、歳出削減よりも、余剰セクターへの増税である。もっとも、これらは、日経の望まないものではないかと思う。

 財政再建に当たっては、経済学の基本である資金過不足の観点が絶対に欠かせない。このことを、財政当局の若手エリートの中でさえ分かっていないように見受けられる者がいることには、暗澹たる思いがする。経済に合わせてしか財政再建はできず、経済とは独立に財政再建は進められないことを、肝に銘じなければならない。


(昨日の日経)
 ROE10%超3社に1社。エコノ・消える?地方の就職難。核心・大見えを切る財政健全化・平田育夫。
 ※平田さん、また敵役してしまってすまないね。

(今日の日経)
 地震保険料2~3割上げ。4月再び貿易赤字。日銀・異例の上方修正。政府月例・基調判断据え置きへ。
 ※消費動向指数が改定され、1-3月期は前期比+0.5とGDP速報に近くなったね。

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3 コメント

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Unknown (takakaho)
2015-05-26 19:01:25
おっしゃることよくわかりました。勉強させていただきありがとうございまし。
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Unknown (asd)
2015-05-26 21:58:00
「彼ら」の最近のキャンペーンは「歳出削減」ですね。彼らは定期的にキャンペーンやるので面白い(全く面白くないですが)。

> 財政当局の若手エリートの中でさえ分かっていないよう
組織の論理とか彼らなりのインセンティブとか色々想像しちゃいますけど、真実はシンプルで、要するに彼らは分かってないだけなんでしょうね。
そういうことも含め、マクロ経済を義務教育でちゃんと教え、地道に1000年かかってでも日本人の経済リテラシーを上げるしか解決策はないのではないかと思っています。
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Unknown (Unknown)
2015-05-27 23:55:50
当局が組織の論理で動く単細胞馬鹿ばかりなのであれば、国民一人一人が政策を正しく判断できるようにするしかないですね。
「消費税一気増税は間違っている」と正しく判断できる人を増やすしかない。
まぁ「財務省は無能である」とだけわかってもらってもいいんですけど。
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