経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・夏の停滞、出口はどちらに

2018年09月02日 | 経済(主なもの)
 今、景気は、踊り場にある。問題は、上り階段に向うのか、下り階段に通じるのかだ。停滞の一番の要因は、輸出の失速だ。他方、景気は、自律的成長が可能なところまで内圧が高まっており、輸出が崩れなければ、徐々に上向いて行くだろう。裏返せば、輸出が崩れる前に、早く上向いてもらわないと、せっかくのチャンスを逃すことになる。今は、どちらが先かの競争を、ハラハラしながら眺めているわけである。

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 7月の日銀・実質輸出は110.4と前月比+0.3にとどまり、7-9月期の輸出が前期を上回れるかは微妙な情勢だ。いつまでも続くものではないとは言え、1年半に及んだ好調の時は過ぎ、この3か月は、まったく推進力を欠いている。また、7月の鉱工業生産は、前月比-0.1と、小幅ながら3か月連続の低下となった。鉱工業生産も、昨年までの増加トレンドから、戻りの弱さを経て、停滞へと変化している。

 こうした今年から夏にかけての停滞感は、ソフトデータにも共通する。景気ウォッチャーは、季節調整値が年明けから低下局面に入っているし、12か月移動平均で見ても、春から低下傾向となった。8月分が判明した消費者態度指数も、季節調整値は春先が山であり、12か月移動平均も、この夏、とうとう低下し始めた。今年は悪天候と災害続きだが、それで理由付けをしていると、需要の趨勢的変化を見逃すことになる。

 一方、雇用については、今年に入ってから一段と強まっている。労働力調査の雇用者数には加速が見られ、これは、女性のみならず、男性にも広がっているためだ。ただし、7月は女性は伸びても、男性は横バイであった。7月の新規求人倍率には、前月の急伸の反動が出たものの、水準は十分に高い。賃金についても、毎月勤労統計には段差があって額面通りには受け取れないが、着実に伸びているようであり、家計調査の勤労者世帯の実収入も似た傾向だ。消費者物価もサービスについては、今年に入って上昇しており、景気の内圧は高まっている。

 物足りないのは消費であり、消費者態度と歩を合わせるかのように、勤労者世帯の消費性向が下がっていて、雇用や賃金の傾向が消費へと十分に結びついていない。それでも、7月の商業動態の小売業は前月比+0.1と、4-6月期水準より+0.5高く、まずまずの滑り出しだ。生鮮の値上がりでCPIの財が前月比+0.7にもなり、実質では大きく割り引かれるが、小売業の基調は悪くない。物価による攪乱があるにせよ、消費には、もうひと伸びがほしい。

(図)



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 今後については、鉱工業生産の予測指数は、資本財(除く輸送機械)が8月+13.1、9月-4.6となっており、もし、このとおりなら、7-9月期は前期比+2.5と順調に伸びることになる。機械受注も増勢を保っていることから、すんなり上り階段へ向うことを期待したい。建設財の予測指数も8月+4.3、9月-1.2であるから、こちらの下支えも見込めよう。

 人手不足が言われて久しいが、男性中年層の就業率は、リーマン前並みにはなったものの、デフレになる以前はもっと高く、今の水準は2000年頃にも及ばないことを踏まえると、まだ上がる余地が残っている。その意味で、景気は回復の途上であり、全般的に物価が上昇するようになるには、もうひと頑張りが必要と思われる。

 もはやデフレではないと、勝った気になっている向きもあるが、望みが低いのではないか。この程度の状況で、消費増税はできると慢心することこそデフレ慣れである。こんな心性が染みつき、輸出の牽引力が失われていいても不安を感じず、早々とブレーキを踏むのに平然としているから、デフレは終わらないのである。


(今日までの日経)
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