経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

成長こそ最大の国益

2012年05月16日 | 経済
 日本のように、国債のほとんど全部が国内で消化されている場合、財政赤字の問題は、国債を持たない人に課税して、国債を持っている人に返すという、再分配の問題になる。つまり、財政赤字を減らしたところで、国全体でみれば、豊かになるわけでも、貧乏になるわけでもない。

 他方、財政再建をやって、経済に需要ショックを与え、成長率を落としてしまうと、国全体が貧しくなるわけだから、すべての人にとって不幸なことになる。もっとも、国債を高値(低利)で保ち、確実に償還してもらうなら、国がどうなろうと関係ないという立場の人もいないわけではないが。

 言わずもがなのことだが、財政は、経済のサブシステムにしか過ぎないのだから、今日の大機小機のミストさんのように、「財政再建こそ最大の国益」というのは、明らかに誤りで、最大の国益は、「成長」でなければならない。いかに、財務官僚のお役目が財政再建であるとしても、国全体としての利益が頭にないのだとしたら、権力は与えられるべきではないだろう。

 戦前、軍部が「国防は我らの役目」とばかりに、権力を振るった結果がどうなったか、語るまでもあるまい。公式的な成長率の見通しが2%を割るというのに、成長のすべてを召し上げるほどの一気の消費増税をやって、経済が無事で済むと思っているのかね。インタゲで増税無用も極論なら、一気の増税に加え、「身を切る」改革と社会保険給付の削減までするというのも極論でしかない。

 最近、「財政当局に権力があるなら、こんなに財政赤字にならない」という説も流されているが、1997年のハシモトデフレで、大規模な緊縮財政の権力を振るい、日本をデフレ経済に叩き込んだために、財政赤字が深刻化したことを忘れてはならない。この反省から、財政を経済全体に位置づけるべく作られた経済財政諮問会議が、単なる「構造改革」の道具になり果てたのは誠に残念なことだった。

 結局、現実的な成長率を設定し、どの程度の緊縮なら適当かという、平凡な経済運営が論争の空白地帯になっているのである。世の中、極論と極論が対立して、ちょうど良いところに収まるとは、なかなかならないものだ。日本において良識の場を作るには、一体、どうしたら良いものだろうか。

(今日の日経)
 東電権益を官民で肩代わり。マネー変調、現金志向に。大手銀36%増益。三菱UFJは上場企業で最高益。ユーロ圏ゼロ成長、独の復調が下支え。大機小機・財政再建こそ最大の国益・ミスト。経済教室・高齢者雇用・八代尚宏。

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財政負担の世代間先送り論 (KitaAlps)
2012-05-16 09:40:07
野口悠紀雄氏も、同氏著の『消費増税では財政再建できない』2012で、

「国債が負担を将来に転嫁するという誤解・・・国債が内国債である限り、負担を直接に将来に移すことはできない・・復興財源をめぐる議論で、経済学者の中にもナイーブな誤りにとらわわれている人が多いことがわかって私はショックを受けた」

と、自国通貨による国債発行に関して「国債発行=財政負担の世代間先送りだ」論という経済学的に明らかな誤りを犯す有力経済学者が少なくないことにショックを受けたことを書いていますね。
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