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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・次に待つのは年金の緊縮

2021年08月08日 | 経済(主なもの)
 日銀の金融緩和は、デフレ脱却には失敗したが、金融資産を膨張させることには成功した。その恩恵は、厚生年金にも及んでいる。2020年度の厚生年金の決算では、積立金の時価は、34.8兆円もの増となった。日銀を味方にして資産運用ができたら、最強だよ。政府は、コロナ対策ために、国債を追加し、支出を46兆円伸ばし、借金を多くした一方、資産も大幅に増やしていたのだから、財政破綻の片鱗さえ見られないのも当然かもしれない。

……… 
 2020年度の厚生年金の決算から、フローの動きを見ると、保険料収入等が42.6兆円と前年度比-0.51兆円となった。被保険者数は微増、平均報酬月額は横バイであることから、コロナにより延納を認めたためと考えられる。他方、保険給付費等は42.9兆円と+0.14兆円の増にとどまり、+0.2%増の年金額改定と大差ないものだった。この結果、収支は、10年ぶりの拡張財政となり、-0.34兆円の赤字であった。

 ただし、積立金を運用するGPIFからの納付金が1.4兆円と前年度比+0.94兆円の増だったため、これらを加えると+0.5兆円の黒字になる。当然、その分、簿価ベースの積立金も増えて113.4兆円となり、アベノミクス前の2012年度から8年間では8.4兆円の増となった。時価では、株高などによって、前年度比+34.8兆円の184.2兆円となり、同じく8年間で66.3兆円の拡大となっている。

 問題は、足下の2021年度である。毎月勤労統計の常用雇用や給与総額の動きからすると、保険料収入等は、前々年度と比較して+1%程が見込め、保険給付費等は前年度比-0.1%減の改定幅並みとすると、収支は+0.6兆円の黒字まで回復し、1兆円近い緊縮財政になってしまう。会計的には、延納分の0.5兆円も加わり、その幅はもっと大きくなる。コロナ禍の疲弊の中で、次に待つのは、年金の緊縮なのである。

(図)


………
 厚生年金は、アベノミクスの下の緊縮によって、財政再建に成功し、黒字を記録するまでになった。加えて、異次元の金融緩和を背景に、積極的な積立金運用が多大な利益をもたらした。その反面、重い保険料は、多くの非正規を生む一因となり、少子化をもたらした。マクロでは、いかにカネを溜め込んでも、使おうとするときに、少子化で供給力が細っていると、得られるものが割に合わなくなる。

 コロナ禍で出生数がダメージを受けた今、年金を少子化に充てるべきではないか。少子化の緩和は、直接、年金財政を改善することにもなる。将来の年金を乳幼児育成期に前倒しで受給できるようにし、非正規、せめて母子家庭だけでも保険料を軽減して、厚生年金への加入を可能にしたら良い。それこそが活きたカネの使い方になる。カネは貯めるより、活かす方が難しいのである。


(今日までの日経)
 企業業績、回復一段と 今期35%増益。 米就業者94万人増 7月。年金積立金、過去最大に 昨年度194兆円。IT・部品、進む中国依存。トヨタ米販売、初の首位。


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