経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・1-3月期はマイナス成長の恐れ

2019年03月03日 | 経済(主なもの)
 先月のコラムで、景気後退期にある可能性を指摘したが、事態は悪化の様相を見せており、1-3月期はマイナス成長もあり得る形勢となってきた。むろん、そうなれば、アベノミクスのイザナミ景気超えは、幻だったことになる。もはや、去年の実質賃金のプラマイの議論に熱中している場合ではない。不況下で消費増税をする愚行から、いかに緊急脱出を図るのか、真剣に考えるべきときに至った。

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 2/28公表の1月の鉱工業指数、住宅着工、商業動態のどれもがネガティブ・サプライズで、心配していたことが現実となった。鉱工業生産は、前月比-3.9と大きく下がり、3か月連続の低下である。2,3月の予測指数を基に計算した1-3月期の前期比は-1.5に落ちてしまう。この水準は、災害のために大きく低下した7-9月期とほとんど変わらない。しかも、予測指数の実現率の低さを踏まえれば、更に下ブレする可能性が強い。

 設備投資の動向を示す資本財生産(除く輸送機械)は、増加傾向が影を潜め、同様に計算した1-3月期は前期比-6.4にもなっており。景気をリードする設備投資が失速する恐れが出てきた。加えて、企業の不動産投資に係る建設業活動指数が、9月から12月までの4か月連続で低下していることも気になるところてある。3/1の法人企業統計において、設備投資の動機となる売上と収益に低下が見られるだけに、警戒を怠れない。

 また、住宅投資を占う1月の着工件数は、年換算値の前月比が-8.9万戸の低下となった。秋以来の貸家の不調が止まらないところへ、分譲住宅の剥落があったためだ。増税前の駆け込みが始まっておかしくない頃合いなのに、低調である。他方、公共事業については、12月までの建設業活動指数で見る限り、1年半に渡って低落傾向が続いている。水準が下がり過ぎて、これから補正予算の執行が始まっても下支えにとどまろう。

(図)


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 投資の需要項目が厳しい状況の中、消費はどうか。商業動態の小売業は、1月の前月比が-2.4と大きく下落した。これは名目値なので、財の物価指数の上昇を踏まえれば、実質での落ち幅はもっと大きい。今後、公表される1月の消費指数は、商業動態ほどの激しい変動はないと考えられるが、高めだった10-12月期の水準を超えるのは難しく、2,3月で挽回するのも、なかなか苦しい展開になるだろう。

 消費の背景となる雇用を見ると、1月の労働力調査の雇用者数は、前月比が2か月連続の減少となった。「質はともかく、量は増やした」と主張するアベノミクスだが、夏以降、伸びが衰え、とうとう低下するに至った。特に男性は昨年4月の水準まで一気に逆戻りである。これでは、2月の消費者態度指数が5か月連続の減となり、今年に入ってからの落ち幅の大きさから、基調判断が「衰えている」に下方修正されたのもうなずける。

 投資に加え、消費についても、前期比での減少が危惧されるなら、1-3月期GDPはマイナス成長になると思わざるを得まい。第一生命研の新家さんのレポート(3/1)によれば、1月の内閣府・景気動向指数は、CIの一致指数の大幅低下が必至で、 基調判断は「下方への局面変化」に修正される可能性が大とする。もはや、景気動向への懸念は、筆者だけのものではなく、客観的に裏付けられようとしている。

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 2019年度予算案が衆議院を通過して、成立は時間の問題となった。成立後の補正の議論について、政治的フリーハンドを得たことになる。財政当局は、「消費増税には経済対策があるから、景気に影響しない」と理屈を並べるだろうが、「景気後退局面で、増税のリスクを犯すなんてバカげてる」という常識論には勝てまい。政権が増税への拘りを長引かせれば、評判は下がり続けることになる。2018年度税収の上ブレが現時点で9000億円ほど見込まれる中、何をやめて、何を残すのか、早く考えるべきである。


(今日までの日経)
 米成長率、10~12月 2.6%に減速 消費堅調も住宅投資減。輸出低迷、生産に波及 鉱工業生産1月3.7%低下 中国減速色濃く 1~3月も減産予測。中国で採用、3割が抑制。韓国出生率 初の「1」割れ 世界最低水準 若者の経済不安背景。

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