経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

人間の行動とベキ分布

2012年01月16日 | 経済
 今日の経済教室では、大竹先生が行動経済学を取り上げてくれている。論文数で見られるように、注目の分野である。おそらく、今後の動きとしては、数多くの事例が整理・分類され、いくつかの基本的な概念にまとめ上げられていくだろう。

 人間にはクセがあって、多くの不合理な行動をするという認識だけでは、あまり役には立たない。具体性が強すぎ、予測には使いにくいからだ。まあ、それゆえ、行動経済額の実験をしてみることが有意義だとなるのであるが。

 本コラムでは、行動経済学で発見される様々な「不合理」さは、人生の時間が限られていて、期待値に従って行動できないためだと考えている。生存時間が有限だと、手近な利益に飛びつき、極端に損失を嫌うのは、「合理的」な行動になる。

 その利益や損失が独立の事象ではなく、利益が利益を呼び、損失が損失を呼ぶという構造にあるなら、なおさらである。経済物理学は、こうした構造に現れるベキ分布を考察することか多いが、行動経済学とは、こういう接点がある。つまり、行動経済学は新しいミクロ経済学であり、経済物理学は、それを基礎にした新しいマクロ経済学というわけだ。

 そのベキ分布の概念を使って原発事故の分析を試みたのが、今日の核心の滝さんである。正直、原発事故の確率と被害の大きさの関係がベキ分布にあるとすると、原発は、もう人間には扱えない。起こりうる最大の被害に、時間的に耐えられないからである。

 自分が生きる時代における科学や数学の水準は最高のものだと思いがちだが、時代が下れば、こんな認識もなかったのかと、後世の人達に思われることになる。フクシマの事故は、人間の限界を謙虚に受け止めることの大事さを示しているような気がしてならない。

(今日の日経)
 欧州銀、資本増強に影。物理の基本原則ほころび。官僚トップ復権半ば。エコノ・企業の在庫急増。原発に潜むブラックスワン・滝順一。太陽電池、発電量100倍。経済教室・行動経済学の役割増す・大竹文雄。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする