経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

せめて名誉を与え給え

2011年05月19日 | 経済
 日本の現場は強い。それは企業や組織、そして、社会への帰属意識に基づくものだろう。もし、製造業の現場が、全面解禁による外国人労働者で占められ、規制緩和で非正規労働者ばかりであったなら、こうはいかなかったかもしれない。「自由化」しなくて良かったとは誰も言わないにせよ、否定できない側面だろう。

 災害に際しての日本人の秩序だった行動は世界の賞賛の的だが、とかく略奪や犯罪が起こりがちだからといって、外国人が人間として劣っているわけではない。宗教や民族が入り混じり、社会階層と貧富が分かれる社会では、普段から緊張関係があり、それがどうしても噴出してしまう。 

 日本人の災害時の落ち着きぶりは、江戸時代から記録があるから、その当時には均質性の高い社会が出来上がっていたのだろう。日本でも、関東大震災の際には、デマに基づく朝鮮人の虐殺事件が発生しており、日本人も異民族に対して問題を起こしたことがある。災害の際、外国人が不安を感じて帰国するのは、むしろ、そうすべきことだと言わねばならない。

 現場の強さ、災害での落ち着きは、日本人だから備わっているのではない。社会環境によるものなのだから、それを保つのに、努力は欠かせない。何も、外国人や非正規を入れるなと言うのではなく、彼らも含め、すべての従業員が帰属意識を持てるよう、経営者は意を用いなければならないということだ。それはコストではなく、保険になるのである。

 その点、一つ気がかりなのは、復興財源を捻出するために、公務員の給与を10%カットする件である。筆者は、今回の大震災のような国難では、公務員が率先して犠牲を払うべきと思っている。ただし、それは粗雑にやってはならない。犠牲を当たり前だと思っていては、帰属心を薄め、志気を落とすことになる。

 世界的に見れば、公務員がきちんとしているのは、珍しい部類に属する。米国では、公務員は無能やだらしなさの代名詞である。教員の給与が夏休みの間は支払われず、清掃員並みのサラリーと揶揄されたりするのだから、むべからざるものがある。今回の震災で自衛隊員が献身的に働くのも、日本人だからではなく、ちゃんとした制度の裏打ちがある。

 考えてみてほしい。公務員の給与は民間準拠とされ、中堅企業の正社員並みである。したがって、零細企業や非正規より待遇が恵まれているから、多少は削って構わないと見ることもできようが、普段、「世間並み」の扱いもしてないのに、いざという時に、危険や過酷を顧みずに献身せよ言っても、わだかまりが生じよう。

 公務員給与の10%カットは良い。しかし、それを財政赤字だからという理由にしてはならない。被災者救援のためという名目とし、その分を被災地の児童支援などの特定の救援費に充てる形をとるべきである。せめて名誉を与えなければ、志気を蝕むことになる。企業ならば、危機を乗り越えて、業績が回復したら報いると言えるのだが、公務員では、そうもいかぬだろう。その程度の恩情を払うことは、政治指導者の義務である。

(今日の日経)
 企業年金、新興国投資を拡大。ワタミ専用風力発電。現場力だけでは・外国人帰国。保安院分離の意向。社説・復興会議は具体策を。公務員給与・自衛隊は手当で補填。期限つき大連立・自民副総裁。企業、中国でも停電対策。マンションは超高層湾岸が激減。東証が沖縄移転検討。介護保険料は傾斜負担に。銀行・国債売買先細り。イエメン修正案で合意。住宅価格、中国3都市で下落。アルパイン4月に100%稼動。大機・悪魔の選択・逗子。経済教室・電源別コスト検証・植田和弘。三陸海岸を国立公園に。

※日本人が投資を始めるとブームは終わり。日経もようやく具体策が気になってきたか。本コラムではとっくに書いているが。自民もようやく大連立の方法が分かってきたか。本コラムではとっくに書いているが。タックスヘブンが沖縄に作れるのかね。介護保険料も定額から定率は流れかな。バブルは崩れるときはまだら、上がっているところもあると迷っていると危いよ。

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