経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

衆目の一致するところ

2011年05月18日 | 経済
 政治の動きなんて流転が激しいから、いちいち追っても仕方ないのかも知れないが、自民党は今国会での2兆円の二次補正を要求し、政府・民主党は、足して2で割り、1兆円程度なら応じようということらしい。もし、これが実現すると、ようやく、前年度並みの歳出規模になり、緊縮財政から財政中立に至ることになる。

 何と言うか、「そこまでは許しましょう」という財政当局の意向が垣間見えるようである。こんな、ごく当たり前の経済運営にたどりつくのに、紆余曲折を経なければならない日本の政治の経済観のなさは、見ているだけで疲れてくる。まあ、政治に限らず、自分で経済観を持つ努力をしないで、財政当局が流す新聞上の情報だけで語る人が多すぎるがね。

 そんな中で、きちんとデータを見ている人は、筆者の主張に似たものになる。例えば、鈴木淑夫先生は、HPで「2.5~3.0%の成長軌道に乗るまでは増税の逆噴射は避けよ」としている。デフレや低成長でも、お構いなしに緊縮をしようとする財政当局の方が異常に思えるが、いかがだろうか。

 増税を主張する財務省出身の識者でも、中央大の森信茂樹先生は、5/16のダイヤモンドオンラインで、「財源論があまりにも早々と議論されている」とし、「増税のタイミングも、復興需要が出始めてからで遅くない」とする。 裏返せば、復興需要をあらかじめ見込んで増税をセットするなんて、危険で仕方なかろう。

 秋には復興需要で回復すると言われているが、どうなるかは分からない。鈴木先生は、海外環境に不確実性があると言っているし、第一生命経済研の熊野英生さんも、5/12にHPで、回復のトレンドは米国の回復次第とし、海外経済に不透明感が感じられるとする。しごく、まっとうな感覚ではないだろうか。筆者を含め、プロの衆目は一致しているのだ。

 思い起こせば、本コラムでは、昨年6月、W杯サッカーに引っ掛けて、回復に浮かれて景気対策を次々に切っていると、終了間際に「逆転ゴール」を決められるぞと警告していたが、案の定、秋に円高に見舞われ、補正予算の編成に追い込まれた。段階的にしておけば、慌てずに済んだのに、「得意技」のストップ&ゴーをやらかしたわけである。

 日本の経済運営は、下手を通り越して、危険なほど素人だ。素人なだけに、昨年やったばかりの失敗も繰り返してしまう。財政赤字に焦り、余裕のない経済運営をして、経済環境の変化で悲惨な目に会う。そして、いつも不運のせいにして反省しないというのが、日本の財政当局のパターンなのである。この秋に、米中で景気が減速し、輸出が停滞しないと、誰が言えよう。「想定外だった」という言い訳は、もう原発事故でたくさんである。

 緊縮や増税を、震災前水準の回復確認後に遅らせることでの「財政破綻のリスク」と、秋に復興がはかばかしくない「経済停滞のリスク」のどちらが現実的なものか、まじめに考えてみてはどうだろうか。今日もまた、狂気の混じった財政破綻論が世間を飛び交うを耳にせねばならんのかね。

(今日の日経)
 原子炉、循環注水で冷却。電力危機が生む市場、EV、直流化。節電家庭にエコポイント・KDDI。会期延長論、追加補正など検討。衆院解散で被災地の選挙延期できず。被災漁港集約で溝。新興国投信の売越額最大、景気に不透明感で。主婦年金5年分返還請求。保育40万人分1~1.5兆円を一体改革に。女王がアイルランド訪問。米住宅着工10.6%減。アパレルは脱内需。ベリー・ストロング・ゲンバ。大機・電力料金・隅田川。経済教室・天然ガス・十市勉。

※初めから、これしかできないので、工程表も変わらずか。原発がなければ、元気者の経産省が企画していたろうに。集約される側にどれだけ手当てできるかで決まる。やはり手仕舞いに入っているね。電気代は輸出企業には還付も考えないと。
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