KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

花・花・花と雲海の白山遠征(後編)

2024年08月19日 | 四国外の山
黒ボコ岩ではしゃいだ後、いよいよ弥陀ケ原へ。スタート時点で奥様たちには『膝の状

態で途中棄権するかもしれませんが、出来たら弥陀ケ原からの御前峰は見てみたい』と

言っていたので、取りあえず第一段階クリア。














植生保護のために造られた木道が緩やかな台地の中に続いている。前回来た時も山頂から

の景色よりも、この木道の景色が記憶に残っていた。

この弥陀ケ原や御前峰周辺の地形が緩やかな部分では真夏でも雪渓残り、無雪期間が短

い為、ハイマツは育ちにくく草本植物などの雪田植物が育つそうだ。

弥陀ケ原の台地から室堂への最後の登りの五葉坂は、先ほどまでの歩きやすい木道と比

べると、岩がゴロゴロした歩きにくい登りだ。

この辺りは斜度もあるので雪が残らずハイマツ(五葉松)が育っているためその名が付

いたようだ。道の両脇にそのハイマツが迫り道幅がなく、離合するのに時間がかかる。














それでも20分ほどで五葉坂を登り切り、正面に見える室堂ビジターセンターに着いた。

時間は11時過ぎ、予想以上に時間がかかっている。計画では御前峰でお弁当を広げる予

定だったが、ビジターセンターの北側のベンチでお昼ご飯にする。











お昼ご飯の後、さっそく御前峰へとあっちゃんと私はザックを置いて登って行く。その

前に白山比咩神社の祈祷殿を参拝。参拝した後はその奥宮の横を通って御前峰へと向か

うと、ここからの道でもお花畑が広がっていた。













室堂の平坦地が終わると石畳の登坂が続いて行く。東の遠くに見える雲の上に頭を出し

た山はどこの山だろうか?

途中で3年生くらいの男の子と、保護者らしき男性たちとすれ違う。その男の子を見る

ともう半べそをかいている。見かねたあっちゃんが声をかけてなだめるが、笑い顔には

ならず『がんばって!』と声をかけて別れる。











途中で神々の生まれる場所・天津神の住まう場所の高天ケ原の道標が立つ場所に着いた。

見上げると御前峰が目の前に近づいている。振り返ってみると室堂の東の窪地にはまだ

雪が残っていた。










室堂から40分を過ぎてやっと白山奥宮の社殿が見え始め、ひと踏ん張りで大きな石垣

に囲まれた奥宮に着いた。










その奥宮と御前峰は目と鼻の先。山頂碑で写真を撮る。北側正面には大汝峰とその右手

には剣ケ峰が見える。前回はこの山頂から下ってお池巡りをした。火山湖の点在する火

口は、山頂までの風景とは一変して火山らしい、白っぽい火山灰や青灰色の巨石の中の

道が続いている。今日は時間的に余裕ないのでこのまま折り返して下山していく。

奥宮の社殿が雲に浮かんでいる。そして360度雲の海が広がっている。














時間は予定を1時間ほど過ぎていた。南を見るとどんどんガスが流れ登ってきている。

ここまでで景色を存分に楽しめたから、下りは別段ガスがかかっても返って涼しくてい

いかもしれない。














ビジターセンターまで降りて食堂で一休み。喉を潤し一息つくがまだこれから1000m

以上は下って行かなければならない。今のところまだ膝は大丈夫だったが、腰掛けて靴ひ

もを直そうと屈むと足が攣りそうになった。

歩きづらい五葉坂を下り弥陀ケ原へ差し掛かるまでの間、登りでも一緒になった若いカッ

プルと話をしながら歩いて行く。











途中でエコーラインから下って行くというカップルと分かれ弥陀ケ原へ。今日は行動時

間が長い分歩くペースが似通っている人達とは、途中で抜いたり抜かれたりして度々顔

を合わせるので、その都度挨拶をして話をする。

弥陀ケ原の端部になる黒ボコ岩に近づくにつれ、次第にガスが濃くなってきた。










黒ボコ岩から観光新道へと入ると最初は緩やかな稜線の下のトラバース道。その山肌に

はイブキトラノオがゆらゆらと風に揺れている。薄紫のタカネマツムシソウとハクサン

シャジンが目立ち始める。









タカネマツムシソウ


ハクサンシャジン




石鎚山系でも見ることのできるタカネマツムシソウだけれど、これだけ群生している山

は四国にはないと思う。










下って行くにつれてガスが益々濃くなっていく。前を歩く奥様たちの姿が直ぐに見えな

くなる。この辺りが『馬のたてがみ』と呼ばれる場所で東から南にかけて広がる雄大な

景色を見ながら歩けるはずだが、今日は残念ながらガスのお陰で何にも見えない。











黒ボコ岩から50分ほどで殿ケ池避難小屋が見えた。小屋の横のベンチで小休止。ガス

のお陰で気温はそれほど高くは感じなかったが、念のため経口補水のゼリーを口に入れる。



クガイソウ



殿ケ池避難小屋から道は少しづつ険しくなってくる。七つ坂辺りの尾根筋も乾いた土と

石が足を滑らせる。







正面のゴツゴツした岩が餓鬼ヶ咽(ガキガノド)。これも約10万年前の白山火山の噴出

物のようだ。奇妙な形はその噴火の際やその後の浸食によって造り出されたと云われて

いる。














そんな大岩の足元にはシラタマノキやハクサンシャジンの白花など、砂防新道とはまた

違った花が咲いている。晴れていればもっと遠くまで見えただろうが、ここまでも砂防

新道以上のお花畑が広がっていた。

ハクサンシャジンの白花


シラタマノキ






岩が重なりその下を通り抜け出来る仙人窟(センニンイワヤ)を通る。この仙人窟の南

側は、昭和9年7月の大雨で甚大な被害を及ぼした大規模な崩壊の『別当大崩れ』があ

った場所だ。400mmを超す豪雨と,それによって残雪から溶けだした水によって,推定

1億立米に達する崩壊土砂が流れ出し,土石流となって下流に押し寄せ、市ノ瀬地区では

12mもの河床に土砂が堆積したと云う。この土石流による被害は死者・行方不明者112名

、流出家屋172戸、流失などの家屋437戸,埋没耕地2113町歩など,石川県史上最大規模

の災害だったそうだが、ここもガスで周りがほとんど見えない。










仙人窟を過ぎると道はどんどん険しくなってくる。場所によっては濡れて一段一段の段

差があって、とにかく転倒しないように注意深く降りていく。ただその段差が膝に堪え

てじわじわと痛み始めた。







別当坂分岐からも荒れているうえに急坂は続き油断ができない。朝スタートしてからす

でに11時間を経過しようとしている。ここ最近としては最長時間となる。健康時でも

疲れが出ているのに、ましてや膝にはかなりの負担になっている。この後炎症を起こし

て水がたまらないか心配になってくる。

後ろからこのコースで初めて男性二人が追い越していく。『こんにちは!』の挨拶の後、

お互いに『キツイですね』と声をかける。








別当坂分岐から1時間以上歩いてやっと別当登山センターに降り立った。くたくたにな

りながら登山センターのベンチに腰掛けると、目の前に御前峰の下ですれ違った小学生

が座っていた。さっそくあっちゃんが『よくがんばったね!』と声をかけると、下山し

てほっとしているのか少し笑顔になった。











センターのトイレの中にある更衣室で窮屈な着圧タイツを脱いで、駐車場まで戻る。

スタート時点でほぼ満車状態だった駐車場も車は疎らで、この時間にまだ停まってい

る車の人は恐らく室堂で泊まりの人たちだろう。

ガスのせいもあって薄暗くなった駐車場で着替えを済ませて、今日の宿へと車を走ら

せる。

YAMAPとカシミールでは若干データーが違っていて、カシミールでは沿面距離が

15.4km。累積標高差が1,670mとなっていた。行動時間は12時間20分。欠けた半

月板を抱えて自分でもよく歩けたと。

ホテルに着き近くの居酒屋での乾杯の生ビールがこの夏一番美味しくいただけたのは

言うまでもない!



他に見かけた花たち
































花・花・花と雲海の白山遠征(前編)

2024年08月19日 | 四国外の山
5年前ネットで見た八方池から見る白馬三山の写真に目が釘付けになった。そこからず

っと一度は登ってみたいと思って夏が来るたびに遠征を計画をしていたが、直前にイン

フルエンザにかかったり、台風が接近したりと毎年計画倒れになっていた。

今年もお盆過ぎてうまくいけば八方池と唐松岳の日帰り登山をと考えたが、台風6号が

通り過ぎた後にすぐに台風7号が発生した。その日からは天気予報と睨めっこ。だが直

前まで降水確率は下がらず、仕方がないのでまだ少しは予報がマシな白山に予定を5日

前に変更した。

計画では15日の日が変わる前に家を出て朝に別当出合に着きそのまま登山開始して

御前峰に登頂後下山して、福井市内に移動して宿泊するというプラン。

18年前に山の会で出かけたときは日帰り登山ではなく室堂で1泊して、日の出を見て

御前峰とお鉢回りをして下山という余裕のある計画だった。

その時はバスでの移動だったがやはり車中ではほとんど眠れなかった。それでもその日

は室堂での宿泊だったので今回の計画よりは楽だった。今回はコースタイムでは8~9

時間となっているが、なんせ累積標高差が1500m以上になっているのが一番気にな

った。果たして今の膝の状態で往復できるだろうか?途中で傷み始めたらどうしょうか

と、色々考えたが、取り合えずは出かけてみることにして、奥様たちに計画を伝えた。

天気予報の降水確率は40%で普段でも出かけるかどうか判断に悩む予報だが、とにか

く白山は『日本百名山』で『花の山百名山』。曇り空でも花を楽しめたらいいかな?、

くらいの気持ちで奥様たちには『雨具の準備はしっかりと』とだけ伝えておいた。

11時に自宅をスタート、ナビの案内に従って高速道路を走る。名神高速道路までは夜

中でも意外と交通量が多く、スピードをだすトラックに神経を使い、米原JCTからの北

陸自動車道では逆に走っている車がほとんどなく、しかも運転するのは初めての道。外

灯もない暗い高速道路の運転はけっこう緊張した。




途中で少しフロントガラスを雨が濡らしたが、別当出合に着く頃に明らみかけた空は曇

り空になっていた。駐車場に着く手前では路肩に何台も車が停まっていて、『駐車場は満

車かな?』と焦ったが、駐車場の中まで入ると余裕で駐車することができた。

それでも着替えをしてスタートするころには次々と車がやってきた。







駐車場から登山の拠点となる別当出合登山センターまでは石段を登って行く。センター

ではまだ6時前だというのに結構な人で賑わっていた。トイレを済ませ装備を確認して

先ずは砂防新道へと向かう。











ここからは砂防新道と観光新道のコースに分かれるが、今日は登りは砂防新道、下りに観

光新道を下る予定だ。すぐに以前に登った時の記憶に残るつり橋を渡る。あっちゃんに『

酔わないようにね』と言うと『私車と違ってこういうのは平気なの』と言いながら、前を

歩くルリちゃんを怖がらそうと、わざと飛び跳ねて揺らしながら歩いて行く。













登り始めはエンジンがかかるまで体が重い、ましてや昨日の5時過ぎに起きてすでに2

4時間が経過して寝ていないので、なんだか頭がクラクラする。さらにはここのところ

スタートしてしばらくは膝が慣れるまで痛みを感じるので調子は良くなかった。







それでも奥様たちに遅れをとるまいと頑張って登って行く。樹林帯の中の石段や石畳の

道は雨が降った後なのか少し濡れていて、足を滑らせないように気を使いながら歩いて

行く。この間、環境省の道標が要所要所に立てられている。









イブキトラノオ




駐車場をスタートして約1時間、トイレのある中飯場に着いた。ここまでで室堂まで

の1/4、まだまだ先は長い。











中飯場で水分補給をした後、階段状になった大きな石を登って行く。この辺りから道の

脇に咲く花々が目に付くようになってくる。



ソバナ


キツリフネ




途中で右手に不動の滝が見えた。その滝の横にはまだ新しく砂防ダムを造っているの

か、工事用の大きな施設が見える。目線を南に移すと稜線の上は青空が広がってきて

いた。ただ稜線の奥に隠れて別山はまだ見えない。












キオン




中飯場から40分ほど登っただろうか。左手に眺望が広がり『別当覗』と書かれた案内板

が立っていた。目の前の稜線は観光新道の稜線の先の1666mの標高点から、天井壁に

向かって切れ落ちている稜線だろうか?そして眼下は別当谷になるが、木々が隠して覗く

ことはできない。次第に頭上も青空が広がり始めた。










別当覗辺りからは道の勾配も比較的緩やかになってくる。前を歩くショーツ姿の男性は

横浜から来て下のキャンプ場で前泊しての登山だそうだ。今朝着いてすぐに登って往復

する予定だと話をすると驚いていた。標高も随分上がってきたのだろう、視線を遮って

いた稜線の奥に別山が見え始めている。











樹林帯を抜けると周りの植生も変わってきた。そして周りの景色も高山の雰囲気がして

きた。雲の上を抜けた山頂は間違いなく青空だ!













スタート時点で奥様たちには『往復に時間がかかるので、花の前であまり長い時間立ち

止まらないように!』と話をしたが、とにかく次から次と色々な花が咲いているので、

その度写真を撮るので予想以上に時間がかかる。



ハクサンボウフウ


ハクサントリカブト



甚之助小屋には3時間近くかかって着いた。小屋の前のベンチでは大勢の人が休んでい

た。その中で目に付いたのがお母さんと男の子二人におじいちゃん。男の子の弟の方は

年長さんだという。里帰りをして山好きのおじいちゃんに連れられてきているそうだ。

この時点で標高は2000m弱。ここから上は四国の山にはない高さになる。『行ける所

まで行きます』と明るく話をする家族が微笑ましい。









フジアザミ






雲が流れて山頂が隠れそうな別山から視線を移すと雲海が広がっていた。






ヤマハハコ




暫くは石段が続いて行く。しかしよくこんな高い場所で石段を造ったなと思う。それは

登山の為なのかはたまた霊場参拝の為の石段なのか?

スタートから3時間30分で南竜山荘への分岐に着いた。すると年配の男女の3人組が

降りて来て、ザックを下ろして一息入れ始めた。入れ違うようにして登り始めようと歩

き始めると、その人たちが『ここからがキツイからね!』と教えてくれた。『がんばり

ます』と自身を励ますように声を出すと、『頑張ってね!』と応援してくれた。








分岐から少し登ると弥陀ケ原へと続く道が見える。






シモツケソウ




ここから弥陀ケ原直下の十二曲がりまではお花畑が続いて行く。先ほど休憩した甚之助

避難小屋の赤い屋根がはるか下に見える。






ハクサンフウロ





カライトソウ





道の両脇の斜面は赤・白・黄色の花・花・花で埋め尽くされている。











周りの景色は申し分なく、奥様たちからも『ほんと来て良かった』と喜びの声。『ハイ、

私のお陰です』と鼻を膨らませて自慢げな私。






シナノオトギリ









ここから十二曲がりに差し掛かる。黒ボコ岩までの最後の登り。南竜山荘の分岐で『こ

こからがキツイわよ』と教えてくれたが、これだけのお花畑の中の道。その厳しさは全

く感じることなく楽しく歩いて行ける。




















一口飲むと3年長生きするという『延命水』。冷たい水に手をかざし少しだけ口に含む。













前を歩く奥様たちの頭上に黒ボコ岩が見えた。振り返ると十二曲がりの九十九折れの下に

雲海が広がっている。まさに雲上のお花畑に続く道!














弥陀ケ原の先端部にある黒ボコ岩は、火砕流によって山頂から運ばれてきた火山弾。まわ

りにも同じくらいの大きさの岩がゴロゴロしている。これだけの大きさの岩塊が飛んで落

ちてくるなんて、火山の噴火の凄まじさを物語っている。そのボコ岩に登ってはしゃいで

いる奥様たち。










それでも物足りなかったのか、さらにはその横の岩塊の上でポーズをとるあっちゃん。









🔳🔳🔳 後編に続く 🔳🔳🔳