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花ごよみ

映画、本、写真など・

ロスト・ケア  葉真中 顕

2014-04-26 | 本 な、は行(作家)


ロスト・ケア

第16回日本ミステリー文学大賞
新人賞受賞作

人の善性を信じる検事、大友。
総合介護企業の営業部長を務める佐久間は
彼とは相反する考えをもつ。

検事、介護業界、介護する家族。
複数の登場人物に
それぞれの思いを語らせます。

検事である大友の家族が含まれる、
老人格差の上部に位置する
「安全地帯」。
想像力が欠略した良識。
そこからは絶望的な現実に
陥ってしまった人々の声は聞き取れない。

介護の現実、人の尊厳とは、
安楽死、善と悪…
答えの見つからないテーマです。

究極の介護であるロストケア。
悪としか見えない行為が救い?
及び腰になって
曖昧な態度、物言いになってしまう
人間の心の中を、
明るみに出されたような
気持ちになります。

介護というテーマに、
ミステリーを絡ませています。
うまく騙されてしまいました。
また最初の部分をを読み直すはめに。

重い内容であっても
引き込まれてしまいました。
文章は読みやすかったです。




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ユニコーン―ジョルジュ・サンドの遺言  原田 マハ

2014-03-04 | 本 な、は行(作家)

ユニコーンジョルジュ・サンドの遺言 原田マハ


昨年、「貴婦人と一角獣」展に行き
実物を見ました。

中世の工芸品である
タペストリーの大きさ、
千花模様(ミルフルール) の繊細さ、
鮮やかな赤、
華麗な装飾、
長い年月を経ても、
色あせない美しさに驚きました。

ブサック城で発見された
「貴婦人と一角獣」の深い謎。

「我が唯一つの望み」という
タイトルの謎。
展覧会でその作品を見ているので
そのときの不思議な思いが,
再び湧き起こってきます。
想像力を喚起させられる作品です。

夢のように美しい「絵」
タピスリー「貴婦人と一角獣」に出会った
ジョルジュ・サンド。

タピスリーに秘められた謎、
謎の解明を望むにも、
究明されることのない不可解さ。

ジョルジュ・サンドが、
褒め称えたタペストリー。

同じく作者もタペストリーの
貴婦人の神秘的な瞳の行方に魅せられ
時空世界を超えて、
再体験をするような気持ちで
この作品を書き上げたのでしょう。

物語は静かで美しいです。
タピスリーの挿絵と文章が
巧く溶け合っていい感じです。
タピスリーに関する文章も
魅力的です。
ファンタジックな空気が流れる物語。
短時間で読み終えてしまいました。




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ぼくたちの家族  早見和真

2014-02-26 | 本 な、は行(作家)


ぼくたちの家族 (幻冬舎文庫)

タイトルにあるように家族がテーマ。

石井裕也監督、妻夫木聡主演で
映画化するということを知り
読んでみることにしました。

母が病気になったことを端緒にして
心がばらばらだった家族が
本心をはき出すようになり
強い結びつきが生じてくる。

いかにも頼りなげな父。
子供の出産が間近な長男。
お金をせびる次男。
病気になる前は散々な家族。

母親の状態悪化にともなって
借金があることが露見。

後書きの解説によれば
作者の実体験が基になっているということで
リアルです。

そのリアルさもあって、
最初はやりきれないほど重い話で
読もうかどうか迷っていましたが
読み進めていってよかったです。

いい医者に出会えてよかった。
それぞれが成長していく姿を描き
家族が家族らしくなっていきます。

どうなることやら
不安感もありましたが
最後にはポジティブで
心地よい物語になっていました。
文章は読みやすかったです。

初めのタイトルは
「砂上のファンファーレ」
『ぼくらの家族』と改められたそうです。
崩れそうな砂上であっても
家族が今だけでも
笑っていられたらいい、
ということかな。



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祈りの幕が下りる時 東野圭吾

2014-01-12 | 本 な、は行(作家)

祈りの幕が下りる時

加賀恭一郎シリーズ。
今回は、従兄弟の松宮の
登場場面が多いです。

苦しすぎた過去を葬り去り、
自分にとって一番大切なものを
守るために罪を重ねる悲劇。

犯してしまった
罪の背後に見える愛情
重くて悲しい物語でした。

加賀恭一郎の母親の悲しい人生も
絡み合わせて描かれていて
加賀の過去が
明かされていきます。

突き止められた
12の橋の謎にまつわる
切ない真実、
読んでいて辛くなりました。

それにしても我が身を守るために
まきこまれた人のことを思うと、
自分勝手な気もしますが…

「祈りの幕が下りる時」は
絶妙なタイトルだなと思いました。




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教場   長岡 弘樹

2013-12-16 | 本 な、は行(作家)

教場

警察学校が舞台の連作短編集。

警察学校の中で起きる色々な出来事。

その出来事も嫉妬、悪意、
策略などに彩られた
ブラックな内情、
屈折した人間性が描かれています。

そしてそれが実際に
あり得るように思ってしまうのです。
そのことが読んでいくに連れ
だんだん気分が重くなっていきます。

教官である風間も不気味。

警察学校というのは「篩」であって
警官としての資質に問題のある人物を
選び分ける所。

厳しいルールと
訓練を課せられた中での生活は
まるで軍隊生活の様。

ここではパワハラなんか日常茶飯事、
教場の内幕はほんとうにこんな状況に
なっているのかと思うと
陰険な内容に心が冷えると同時に
これぐらいのことに心が塞ぐようなら
警察官という職務は
務まらないのかなとも
思ってしまいます。

暗い雲がどんより
立ちこめたような空気の中で
強い精神力を保ち得るものだけが
警察官として生きていけるのかな。





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ジヴェルニーの食卓 原田マハ

2013-10-02 | 本 な、は行(作家)


ジヴェルニーの食卓

うつくしい墓
色彩の魔術師といわれ
冬の日だまりのようなマティスと
夏の真昼のようなピカソの関係。

エトワール―
瞬間を描くことに力を費やしたドガ
『14歳の小さな踊り子』に関する
ある事情。

タンギー爺さん
セザンヌとセザンヌを支援した
『タンギー爺さん』という画商。

ジヴェルニーの食卓
睡蓮の絵に
秘められたモネと彼の家族愛。

…といった風に
マティス・ドガ・セザンヌ・モネ、
印象派の巨匠達を描いた
4つの短編。

画家のごく近くにいた人たちにより語られる
画家と画家の生活に関わるエピソード。

本の中に出てくる作品を
ネットで検索しながら読みました。

絵に込められた
画家の気持ちが
身近に感じられます。

作品が持つ素晴らしさ、魅力を
この本の作者が
紹介してくれているようでした。

画家達が生きた時代を
時空を超え
追体験した気分になります。

描写の美しさ、
温かい雰囲気…
優しい光に包まれたような
物語でした。



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模倣の殺意 中町信

2013-09-28 | 本 な、は行(作家)

模倣の殺意 (創元推理文庫)

「これはすごい!」、
「騙されずに見破れますか?」と帯に。

40年前に書かれた作品で
再評価され、
今また売れ出したという、
話題の作品。

第4部 真相で
「あなたは、このあと待ち受ける
意外な結末の予想がつきますか。
ここで、一度、本を閉じて、
結末を予想してください。」
という挑戦の言葉。

シンプル感はあるものの
小説に出てくる登場人物にも
魅力を感じることなく、
動機も弱くて…

作家は叙述トリックを駆使し
読者を騙しているのに
あまりその実感がなく、
なんとなく不自然さが残りました。

よく似たトリックも、
最近見たドラマにもあったし
真相を知って驚くと言うより、
なんだそういうことかといった感じ。

なんかもやもや感のある作品。
衝撃を期待した分、
気抜けした思いです。

でもやっぱりこのトリックは
予想出来なかったです。

最後まで分からなかったということは
やっぱり騙されたのかな。





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悲鳴伝  西尾維新

2013-09-17 | 本 な、は行(作家)


悲鳴伝 (講談社ノベルス)

人類滅亡を計る地球。
それと戦うように課せられた
十三歳の少年が主人公、
名前は空々空(そらからくう)。

主人公である空々空以外の、
登場人物の名前も面白く、
そしてそれぞれの個性も奇抜。

地球と戦うため
ヒーローとして選ばれた空々空は、
何にも感動しない、
動じないクールな少年、
でも自分自身を冷静な目で、
客観的に眺めていて、
そのことを恥じている。

行動には一貫性があって、
こだわりもなく
騒がしい周りの人たちとの
際だつ相違。

残虐さも多分にあって、
この作品は軽くはない。

罪悪感をもち、
ストレスを抱え
空々とは対照的で、
真っ当な感性をもった、
剣藤との恋物語としても一面もあって、
重々しくもない。

とにかく空々空周囲の人間の、
致死率が高すぎ!!
なんだかやりきれなさ、
虚しさが残る物語でした。



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夢幻花  東野圭吾

2013-09-04 | 本 な、は行(作家)

夢幻花(むげんばな)

蒼太、蒼太の家族、梨乃…
登場人物、それぞれが、
お互いに繋がりを見せながら、
ストーリーの方向性、
広がり方に無理がなく、
物語は進行していきます。

張り巡らされた伏線は、
チェーンの絡みを解くように
色々な謎が解明されていき、
一つの接点が見つかります。

最後は納得のいく収まり方でした。

ラストが気になり一気に読みました。

「黄色いアサガオだけは
追いかけるな」のメッセージ。

江戸時代には存在し
いまは存在しないはずの、
黄色のアサガオ。

黄色いアサガオの秘密、
というテーマも
興味を惹かれます。

突然変異して、
とてもアサガオとは思えない、
変化アサガオというのがあることを
調べて知りました。

江戸時代に変化アサガオ栽培の
ブームがあったそうです。

この物語の性質上
あまり内容を書くことはできないですが
とにかく先を読みたくなる本でした。

表紙のアサガオの絵がいい感じです。






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いちばん長い夜に 乃南 アサ

2013-08-17 | 本 な、は行(作家)


いちばん長い夜に

「いつか陽のあたる場所」
「すれ違う背中を」と続く
シリーズの第三作目。
この本はシリーズの完結編。

「いつか陽のあたる場所」を読み
次にTVドラマを見て、
この本に至ります。

作者自身、取材中に、
震災に出会い
その実体験に基づいての描写ということで
驚きました。

ドラマは見ていましたが
ドラマの結末とは違い
今回は意外な展開になっていました。

芭子や綾香の生き方にも
大きな影響を残した震災。
このストーリーの展開もまたいいです。

いくら後悔しても、
もう取り返しのつかないことを
してしまった綾香。

この本の中で綾香の心の内も
かいま見ることができ、
読み終えてからも、
印象に残る小説でした。

この先、多くの困難が、
二人に押し寄せてくることが想像できても、
罪の深さに違いがあっても、
それでもそれぞれが、
前進していくという方向性は、
前作とは変わっていなかったです。

二人が離れていても、
心は寄り添っていることが
分かりほっとしました。

やりきれなさや切なさからは
逃れることができなくても、
これからの二人の行く先に
明るい灯がともっていることを
望みたいです。



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