日本裁判官ネットワークブログ
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 裁判員制度や被害者の刑事訴訟への参加が話題に上ることが多いのですが、実は日常刑事裁判関係の仕事をしていると、やるせない思いをするのが、常習累犯窃盗犯などに代表される再犯を犯した被疑者・被告人の処遇です。あまり光のあたらない世界なのですが、朝日新聞に、以下のような学者の研究成果が出ていました。私は、今刑事関係は令状だけですが、記事の統計をみると、さもありなんと思います。

満期釈放受刑者の4割超、「帰る場所ない」

 刑務所からの満期釈放者のうち、30年前には9%だった「帰る場所がない」人が、05年には4割を超えたことが、龍谷大学矯正・保護研究センターの浜井浩一教授の分析でわかった。厚生労働省研究班調査で25日、知的障害がある受刑者の約半数に引受人がなく、生活苦が再犯につながっていると明らかになったばかり。浜井教授は「社会に居場所がないと、刑務所に戻るために微罪を重ねる累犯につながりやすい。新たな受け皿を」と話している。


満期出所者の帰住予定地の割合
 法務省の矯正統計年報を基に集計、26日、名古屋市で開かれた日本刑法学会で発表した。

 規律違反がなく、身元引受人がいる受刑者は、刑務所長の申請により、仮釈放が認められる場合がある。仮釈放にならない満期釈放者は、出所者の約半数、年1万~1万5000人にのぼる。1975年の1万1736人について、出所前に尋ねた帰住予定地をみると、「配偶者のもと」が最多で25%、「父母」24%、「更生保護施設」18%、「きょうだい」10%の順。「雇い主」も3%おり、「その他」=なし=は9%だった。ところが、年を追うごとに、配偶者、雇い主、更生保護施設の割合が減り、「なし」が増加。05年の満期出所者1万3605人では「なし」が44%で最多に。次いで父母22%、配偶者10%、知人8%。更生保護施設は5%、雇い主は1%に満たなかった。

 背景には、社会全体の離婚率・未婚率の上昇、受刑者の高齢化があり、受け皿となるべき更生保護施設も、満員で新規受け入れを断るケースが相次いでいるという。

 5年以内に再び罪を犯して刑務所に戻ってきた率(5年再入率)をみると、00年出所者で49%。帰住地や身元引受人が決まっている「仮釈放者」では39.1%なのに対し、「満期釈放者」では61.4%と高い。中でも半身まひや認知症など、生活介護が必要な「S級」受刑者の再入までの期間は、出所後3カ月以内が29%、1年以内が61%と短い。浜井教授は、社会で自立生活が送れない人は、刑務所を出てすぐ、無銭飲食や無賃乗車などでつかまって戻ってくる傾向がある」と説明。当面の衣食住を提供し、生活保護などの福祉につなげるような仕組みや、社会的弱者を排除しないようなコミュニティーづくりが不可欠だ、としている。


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